episode15
黒川を連れ、軽トラに乗り桃瀬宅へと向かう。...こんなにも軽トラが似合わない人間がいるであろうか。
「そう言えば、美幸君、昔、高校生くらいの時にLUMINOUSのライブに来たりしてませんでしたか?」
「え?あ、はい。一度だけ...。」
「やっぱり!印象が変わり過ぎて、先程は初対面のような態度をとってしまいましたが、今さっき思い出したんですよ。私もあのライブが初仕事でワタワタしていて挨拶出来なかったなんです。すみませんでした。...それにしても別人のように垢抜けましたね。」
「あ、ありがとうございます...。」
そうこうしている間に2人を乗せた軽トラは桃瀬宅へとたどり着いた。実家に帰る事は事前に伝えていなかったので、チャイムを鳴らした。するとインターフォンから母の声が聞こえてきた。
「はい。あら?美幸?」
「うん。ただいま。ちょっと引っ越しの作業しに来た。」
「あらあら。そうだったのね。上がってちょうだい。」
美幸は黒川を伴い家へと上がる。すると母がエプロンで手を拭きながらやって来た。
「おかえりなさい、美幸。この間は突然の事でお見送りらしいお見送り出来なかったから、少し心配してたのよ?あら?そちらの方は?」
「初めまして。喜子社長の部下で黒川と申します。本日は社長からの命で美幸さんの引っ越し作業の手伝いに来ました。」
「まぁ、喜子の。いつもお世話になっております。」
「いえいえ!お世話になっているのは私の方です!」
「母さん。そろそろ...。」
「あら、ごめんなさい。手を煩わせてしまったわね。」
「それじゃあ、オレ達は引っ越し作業に入るから。」
「はいはい。」
「黒川さん、オレの部屋2階です。」
そう言うと美幸は黒川を自室へと案内した。そして美幸の部屋に入った黒川は絶句した。壁から天井まで、LUMINOUSのポスターやタペストリー。棚やデスクの上にはCDやDVD、アクスタが。
「こ、これは凄いですね...。まさかここまでのファンだったとは...。」
「オレ、一度ハマると沼っちゃって、収集癖が加速しちゃうんです。」
「なる程...。」
「シェアハウスには服とかPCだけ持っていこうと思います。」
「...グッズは良いんですか?」
「生身が身近にいるので、過剰摂取になってしまいます。」
美幸は"キリッ"とした顔を黒川に向けた。
「でもCDくらいは持って行ってもいいんじゃないですか?」
「...凄い悩んだんですよ!」
「でも服とPCだけだと流石に荷物が少なすぎますって。」
「それに歌声は聞けないでしょう?」そう言われると美幸はCDを棚からガサッと取り出しカバンへとしまった。
「これくらいの量なら軽トラじゃなくてもら良かったですね。」
「デスクや棚、ベッドにクローゼットは部屋に備え付けられてますからね。」
似合わないものを乗る必要は無かったか...。と美幸は少し黒川に申し訳がなく思った。




