episode14
「いーなぁ、いーなぁ!美幸の手作りお弁当!」
「社長、5人が引き気味になってますよ...。」
「...社長ってクールビューティのイメージが強かったのに...。」
「だって...、美幸のご飯なんて食べられる機会なかなか無かったんだもの。」
「アレ?でも実家で一緒に暮らしてたんでしょー?」
「実家だと主に母さんが作ってたから...。いつの間に花嫁修業してたのかしら...。」
喜子の"花嫁修業"発言に喜子以外のメンツは思わず飲んでいた水を吹き出した。
「ちょっとー。事務所を水浸しにしないでよぉ?」
「...それなら変な事を言うのはよせ。」
「そーだそーだ!」
「何よ。貴方達、美幸の事ちょっと良いなぁー、なんて思ってるんじゃない?貴方達になら...悔しいけど、あの子の事任せられる...くっ...」
喜子の発言にメンバーは「オレ達全員男ですケド?!」と思ってしまった。あえて口に出さないのは、口にしたら絶対、「ウチの弟のどこが気に入らない訳?!」と食ってかかってくるに決まってるからである。
「社長。酔っ払いみたいな事言ってないで、そろそろ"ドームツアー"について話しませんと。」
白田がそう言うと、5人は"ピリッ"と緊張感に包まれた。初のドームツアーだ。緊張しない訳がない。喜子は気を取り戻すと、"ゴホン"と咳払いをし、話し始めた。
「今回は、札幌・福岡・東京・名古屋・大阪、全15公演を予定しています。ライブハウスみたいな"箱"では経験出来ない事だから皆、しっかりね!ダンスレッスンもボイトレも今まで以上にスパルタで行くからそのつもりで!」
「75万人行けば御の字ね。」と具体的な数字を示した喜子に5人は「自分達にそんな人数を集客する事が出来るのか...」と急に不安に襲われた。そんな空気を悟った喜子は「大丈夫!」と力強く肯定した。
「貴方達には熱烈なファンがたくさんいるわ。それこそ、今身近に1人いるじゃない。」
「「!」」
そうだ。自分達には美幸のような熱烈なファンがいてくれる。美幸は"小箱"の頃から自分達を見続け、応援し続けてくれている。彼は自分達にとって特別な存在だ。それに気が付いたメンバー達は自分達の中に芽生えた"何か"に疑問を持った。"この気持ちは一体、何なのだろうか?"そうモヤッとした初めての気持ちに5人はいたたまれなくなった。
「?皆どうしちゃったんですかね?」
「さぁ?今になって自分の気持ちに気が付いたけど、どうしたらいいか分からないって感じかしらね?」
「それはどういう...?」
「ま、大丈夫でしょう!さ、お仕事お仕事♪」
喜子はそう言うと5人を白田に任せ社長業に手を付け始めた。そして、
「さて、あの子を射止めるのは一体誰になるのかしらね?」
そう呟くと「ふふっ」と笑みを零した。




