episode13
「まぁ、貴方達もあまり浮かれ過ぎずに、気を引き締めた行動をとるように!ツアー前にケガだの、スキャンダルだのと問題を起こさないようにね!」
喜子はそう言うと、「さ、これから事務所に行って細かなスケジュールを確認してもらうわよ。」とメンバー達と白田を連れてシェアハウスを後にしようとした。その前に「あ。」と声を漏らすと、「美幸にはまた別途連絡するから、今日は引っ越し済ませちゃいなさい。」と言って皆でシェアハウスを出て行った。
「朝からビックニュースだったなぁ...。でも皆の夢のドームツアー...。楽しみだなぁ。」
美幸は食べ終わった食器を流しへ持っていくと、洗い物を始め、それが終わると掃除機に風呂、トイレ掃除、洗濯と一通りの家事を済ませ、部屋着から私服へと着替えた。そして、「荷造りしに実家に行くか。」と家を出ようとした時、"ピンポーン"とチャイムが鳴った。誰だ?と思いつつインターフォンを確認すると初めて見る顔が立っていた。
「ど、どちら様ですか...?」
「初めまして。桃瀬社長から頼まれて引っ越しの手伝いに来ました"黒川"と申します。」
「い、今開けますね!」
美幸は急いで玄関ドアを開けると、黒川と名乗った男が「こんにちは」と笑顔を向けてきた。
「急に知らない顔が来てビックリしてしまったでしょう。軽トラで来たので、荷物一気に運べますよ。」
「それは助かります!...でもお忙しいんじゃないですか?来年の夏からLUMINOUSのドームツアーが始まるって聞きましたけど...。」
「あぁ。そう言えば美幸さんもスタッフとして同行して下さるはずと社長が言ってましたね。大丈夫ですよ。まだそんなに切羽詰まった状況ではないので。」
黒川はそう言うと、「準備が出来ているなら、これから美幸さんの実家に行きましょう。」と促してきた。美幸は戸締りを確認すると、「それじゃあ、お願いします。」とシェアハウスを後にした。実家への道すがら、黒川からは喜子の敏腕ぶりやLUMINOUSの仕事について、聞いても良い範囲で色々と話しを聞いた。黒川から聞く芸能界の話しはとても華やかで縁遠い世界だなと思った。
「しかし...、社長に弟さんがいるのは聞いていましたが、こんなに美人な方だったとは。スタイルも良いし、どうです?ウチでモデルでもしてみませんか?」
「も、モデル?!ですか?!」
「えぇ。社長も前々から言っていたんですよ。"弟がモデルをやってくれればウチの事務所は更に大きくなるのに!"と。」
喜子がまさかそんな事を思っていたとは...。美幸が黙り込んで考えていると、黒川は話しを続けた。
「まずはアルバイトからとかどうです?雑誌にちょっと載るくらいの物ですが。」
「い、いやでも、オレなんかがモデルなんて...。」
そう言うと、黒川は「フム。」と少し考え込んだ。そして次の瞬間、"ハッ"とすると、とんでもない事を言い出した。
「今度、翔汰にモデルの仕事が入っているのですが、相手役が決まっていなくて...それのモデルをやっては頂けませんか?」




