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「花紡ぎ?」
ハル様に聞いてみたところ、そもそもお祭りのことを知らなかったようだ。
今日はハル様と中庭で散策だ。
中庭には色とりどりの花が咲いていた。春に相応しい爽やかな風が花壇の花を揺らす。元々簡単な花しか名前を知らない私だが、この世界の花は元の世界と似た形の物もあれば全く見たこともない形の物もある。
見たこともない花の中には宙に浮く花もあり、薄水色の花びらがガラスのようで綺麗だなと思った。
そんな幻想的で公爵家らしく広々とした中庭は部屋に引きこもっているハル様の運動を促すにはうってつけだ。
まだ成長期だし、いっぱいご飯を食べて運動をして健康的に育って欲しいと私は思っている。
日傘を差すメイドさんと私とハナ様と、ハル様を護衛する騎士の方々と結構な大所帯だけれど私は気にせずハル様とお祭りについて話す。
ハル様と話すのは立派なお仕事なのでね。
まぁ、こんな美少女と会話が出来るなら逆にお金を払うべきなのかもしれないけれど。
「祭り、私も行きたいわ…エリナ達と一緒に」
ハル様は花紡ぎの祭りに興味を持たれたようだ。
でも、一緒にかぁ…みんな、貴族様対応出来るかなぁ…?
「私達とですか?私、下働きの子達と行くからハル様気まずいかもです。というか、許可下りますかねぇ…」
エドワード様の番様であるハル様は当たり前だけれど大事に大事に囲われている。人が大勢集まる祭りで何かがあったらとても大変なことになる。
竜族であるエドワード様が暴走でもしたら、もしかしたら街が潰れるかもしれない。いや、そうなったら公爵様や王族が出てくるのか?どちらにしても大変だ。
「何よ。あの男が言ったのよ。なんでも言うこと聞くって。これくらいの願いも叶えられない甲斐性なしなら、ほんとクズね」
ジト…と上目遣いで私を睨みつけて不満を口にするハル様に私は同意をすることが出来なかった。
「うわっはー、えーとそれは…業務上何も言えません…上司なので」
そう、上司の不満をこんな観衆の目で言えるわけがない。というかそもそも不満なんてない。給料いいし、福利厚生は素晴らしいし。強いて言えばハル様との仲を取り持つという任務は私には無理ですというところか。
「つまらないわね。でもエリナのそういうとこは割りと好きよ。…私だって、人の悪口を言いたいわけではないのよ」
「ハル様…」
ため息をつきながら俯いた横顔が寂しそうに見えた。
春の風がハル様の髪を揺らす。
風に吹かれた先を見上げて目を細める。
彼女は、好きな人を殺された女の子なのだ。
そして殺した相手に囲われている。
囚われの身となったハル様が相手への不満を溢すのは当然の権利だと思う。
その好きな人というのがどんなに最低な男だろうと。
そんな彼女の望みが叶えられないなんて、そんな悲しいことがあっていいのだろうか?
それに、きっとエドワード様もハル様が喜ぶことならなんだってしたいはずだ。
グッと握りしめた拳を空に突き上げて私は宣言した。
「ハル様!私、絶対に執事さんから許可もぎ取ってきますね!そして、お祭りではっちゃけましょう!!!」
にっと口角を上げた私を見て、ハル様は満足げに呟いた。
「楽しみにしてるわ」




