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「それでねーハル様ってツンデレでかわいくってさ~」
「なぁ、お前なんでここにいるの?」
使用人専用食堂でお昼ご飯を食べてると一緒に食べてたトーマスが口を開いた。
「お前、番様に付いてるなら上役の食堂があるだろ?」
今日の日替わりランチはチキン南蛮だ。鶏肉に甘酸っぱいタレが絡んでて、その上にはゆで卵たっぷりのタルタルソースが乗っててご飯が進む。
お盆の上の味噌汁を持ち上げて汁を啜る。
異世界なのに普通に味噌汁があるのが不思議だ。過去の異世界人にきっと博識な人がいたんだろうなぁ…と思っている。ハル様の国の英雄さんかもしれないな。
流石公爵様の屋敷なだけあって、使用人のご飯も豪華だ。しかもこのご飯、福利厚生の一部なのでお金がかかりません。最高な職場すぎん???
私は食堂のタダ飯に思いを馳せながら、トーマスの言葉に思考を巡らす。
一緒に下働きをしてたトーマスには私の気持ちが絶対わかると思う。
「だって…、上級使用人の方々って貴族じゃん…私みたいな下々の人間が一緒にご飯とか絶対気まずいじゃん…いや、そりゃね?私の推しである執事さんが何食べてるのかな?とか気になるけどさ…推しはあくまで遠くから眺めてるからいいんであって、」
私が推しについて語ろうとするとトーマスは即座に止めた。
「いや、エレナの趣味とかどうでもいいから」
ビシッと箸をこちらへ向ける。
「冷たい…!」
私が顔を覆ってヒドイ…!と嘆いてるとため息をつかれた。
「エレナって結構可愛い顔してんのに中身残念だよなぁ」
「え!?かわいい!?もっと言って…!」
「そーゆーとこ」
だいぶ年下の、もしかしたら息子くらいの年齢の子に容姿を褒められて調子に乗ってたらバッサリ切られた。
これこれ。こーゆーノリが好きなのよね~。
「まぁ、でもそうだよな。貴族だもんなぁ…」
「そうなんだよ、貴族様なんだよねぇ…」
私達とは住む世界が違うと思ってる。
食べるものも大きなお皿の上にちょっとしかおかずが乗ってなかったりして、それが次々と運ばれてくるんだよ。
確かに美味しいんだけど、落ち着かなくて仕方ない。
そんな話をトーマスとしながら私達はランチを終えた。
「そーいや、花紡ぎの祭がそろそろだよな」
「あー、もうそんな時期か…」
花紡ぎの祭とは春にある土の女神様への感謝を捧げる祭だ。街は花で彩られ、屋台が列び、夜には花火も上がる。そして人々は花のモチーフを身に付けて参加する。家族や恋人等、身近な人へ日頃の感謝を込めてプレゼントすることもあるそうだ。
「屋台楽しみだなぁ~」
私が屋台飯何食べようか考えてるとトーマスが残念なものを見る目で私を見た。
「エレナって食べることしか考えてないよな…」
「そんなことはありませんよ?」
食べることしか考えてなかったとしてもとりあえず否定しておいた。推しのことだって考えてるし。
「今年もみんなで行く感じ?」
「そうだな。ありがたいことに祭の日は休日貰えるしな」
公爵家の福利厚生はほんとしっかりしてて、祭の日は有給休暇なのだ。
私達は一緒に働く仲間達と一緒に街へ出掛ける。
仕事の愚痴を言ったり家族の話をしたり、他愛のない話で盛り上がりながら来年こそは恋人と一緒に行くぞー!!!て慰めあう。
「楽しみだなぁ、花紡ぎ」
そういえば、ハル様は花紡ぎはどうするのだろうか?




