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「本日からハル様の付き人になりました。改めてよろしくお願いいたします」


私が頭を下げてお辞儀すると(つがい)様はこくりと頷いた。


「よろしくね、エリナ」


凛とした涼やかな声が耳に届く。

この声をエドワード様は聞けずにいるんだなぁ…。


朝食後のお茶を飲みながら番様の一日について聞いてみる。


「ハル様はいつも何をして過ごされてるんですか?」


私の質問に真顔で番様は口を開く。


「何もしないわ」


「何も…?」


私は布団でゴロゴロしながら小説を読む休日を思い浮かべた。


「食事をして壁を見つめるだけで一日が終わるわ」


「ウソでしょう!!!??」


余りにも衝撃の事実過ぎる。

公爵家の竜族の番で好きなだけ自由に過ごせるはずの方がマジもんの引きこもりだった件。

いや、というか引きこもり所の問題ではない。

確かに何も興味を示さないとは聞いていたが、時間を潰すために本くらいは読んだりしてるのかと思ってた。


「大きな声を出さないで」


「す、すみません…」


私の驚きの声を咎められてしまった。

うん、私が悪い。


「えーと、本とか…読んだりしないんですか?あと、庭へ散策とか…」


「私、この国の文字読めないもの。それにこの部屋から出たらアイツの顔を見てしまうかもしれないでしょう?」


番様のいた国とこの国の文字って違うんだ。

会話が通じてるから同じだと思ってた。

というか、番様の口から出た言葉に思わず反応してしまった。


「アイツって…」


「私をこの屋敷に連れてきたヤツよ。会いたくないわ。」


とても嫌そうに顔をしかめる番様にこれはドン底まで嫌われてるんだなぁ、と思った。

運命の番であるはずのエドワード様と番様が仲良くなる方法って存在するんだろうか?


「ハル様、それならとりあえず文字の勉強しませんか?私も異世界から来たのでまだ難しい字とかわからないんですよね…。一緒に勉強しましょうよ」


12歳ならまだ学校に通っててもおかしくない年齢だ。若いから勉強したらしただけ知識が身につくと思う。知識が多いに越したことはないんだし。

私の言葉に少し考えて


「エリナがしたいなら良いわよ」


とツンデレ気味の番様は肯定の言葉を口にした。



特にすることもなく、二人でソファーに座って隣の番様を見る。

やっぱり完璧美少女だなぁ…


「ハル様のいた国では本は読まなかったんですか?」


私は職務を全うすべく、会話の糸口を紡いだ。


「読んでいたわよ。…恋愛小説が好きだったわ」


ボソリと付け足された言葉に年相応の可愛さが現れている。


「いいですね!私も好きですよ。元いた世界では漫画ってのがあって、絵で物語を紡ぐんですよ」


この世界にはない漫画が恋しくて、思わず口を滑らした。

元の世界では仕事に手一杯で余裕がなく、いつの間にか読むのを止めてしまっていた。

でもこの世界に来て、心に余裕が出来るととても懐かしく感じる。

私ってそういえば二次元が好きなヲタクだったなぁ…。


「絵本とは違うのかしら?」


首を傾げて番様は口元に手を当てた。

絵本はこの世界にもある、子供がよく読むものだ。


「うーん、ちょっと違いますね…。うん、描いた方が早いか。ちょっとメイドさんに紙とペン借りてきますね」


私は持ってるスキルを思い出してメイドさんに紙とペンを借りた。

白い紙に線を引く。

枠線を引いたらフキダシを書き、横に番様の似顔絵を描いた。

1コマ目は「ハル、と呼んでいいわ」というセリフでツンとした番様。

2コマ目は私の顔でキョトンとさせた。

3コマ目は「はい!」と満面の笑顔の私だ。

4コマ目には私と番様が横顔で笑いあってる。


「できた。こんな感じで、登場人物に話させるんです」


数年ぶりに絵を描いたので下手になってるなぁ…と思いながら番様を見るとキラキラした瞳と目が合った。


「…っ!すごいわ!エリナ!貴女こんなことも出来たのね!」


私の手を握って至近距離で興奮気味に話す番様を見てびっくりした。

そんな反応を示されるとは思わなかった。

そしてこの状況をエドワード様に見られたら首を切られるのでは…?とちょっと怖くなった。

慌てて少し腰を浮かして距離を取り、番さまに言い聞かせる。


「ハル様、こちらの漫画は素人が描いたとても拙いものです。そこまで褒められるものではございません」


私の言葉を番様はすぐに否定した。


「そんなことないわ。だって、これ私とエリナでしょう?すぐにわかったもの。貴女とても絵の才能あるわよ」


私の絵はプロの絵とは雲泥の差だ。それでもハッキリと言葉で褒められると嬉しいものだ。


「…恐縮です」


しげしげと一枚の紙を見つめる番様は感心した様子だ。


「それにしても、すごいわね…漫画。これ日本の文字でしょう?私でも読めるものがあって嬉しいわ」


「ハル様、日本語読めるんですか?」


(あずま)の貴族階級では必須よ」


驚きの事実だ。

日本人の英雄がいたという東国では日本語は広く普及されていたらしい。


その日は一日、好きな作品や漫画について語りあった。





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