4
お日柄の良い午後の時間、私は番様のお話相手になった。
いわゆるお茶会というやつだ。
普段の汚れてもいい仕事着ではなく、黄色い花柄のワンピースを着せられている。
顔もうっすらと化粧を施し、髪もまとめられた。
久々に女子力の高い武装をした気がする。
番様のお部屋は12歳の女の子に相応しい、とても可愛いファンシーなお部屋だった。
ピンク系統でまとめられてて、逆にちょっと落ち着かない気もする。
アンティーク調の白い棚にはぬいぐるみが心狭しと並んでいる。
机の上には、紅茶とそれに合うお菓子や軽食が置いてあった。
そんな部屋で一緒に過ごす番様は、黒髪黒目の超絶美少女だ。
サラサラな髪は腰まであり、何故か着物姿だった。
え、この世界…着物あるの???
不思議に思いながら、机を挟んだ向かい側にいる番様に声をかけた。
「初めまして、番様。本日ご一緒させて頂くエレナと申します。拙いとは思いますが私のいた国についてお話をさせて頂きます。よろしくお願いいたします」
頭を下げてにこりと微笑んだ。
しかし、番様は微動だにしない。
うーん、これは雲行きが怪しいぞ…。
「番様のお洋服、この国に来て初めて見ましたけど、私のいた国でも似たようなものがありました。着物って言うんですけど、番様の国では何て呼ばれてるのでしょうか?とてもお似合いですね」
着物、という単語に番様はピクリと反応してこちらを見た。
「…着物よ」
じっと真っ直ぐにこちらを見てぽつりと呟いた。
番様が喋った!!!!!!
「あなた、日本の方?」
私がジーンと感動してると、番様の方から喋りかけて下さった。
「はい!日本人です。番様は日本のことをご存知なんですか?」
「知ってるわ。私の国には昔、日本人の英雄がいたの。東では日本の文化も多く根付いているわ」
なんと、この異世界で活躍した日本人がいたらしい。すごい、俺ツエエ、チートな人が本当にいたんだ…。私とは大違いだ。
「そうなんですね!母国の方が活躍してたなんてとても誇らしいです」
「ねぇ、あなた。本当は違う名前があるのではなくて?」
番様は首を少し傾げて、私がこの世界に来てずっと言えないでいたことを口にした。
「えーと、…えりなです。石川えりな。はは、なんか何回言っても発音が伝わらないみたいで、どーしても「エレナ」になっちゃうんですよね」
この国の平民には名字がない。
苦笑いで理由を口にしつつ、貴族しか使えない名字を足してフルネームを伝えた。
この名字を次に繋げることはないんだろうな、というほんの少しの諦めを乗せて。
「えりな。…いい名前ね。私は山城ハルよ」
「番様も素敵なお名前ですね。」
「ハル。…そう呼んでいいわ」
横を向いてそう告げた番様に私はとびっきりの笑顔で番様の名前を呼んだ。
「ハル様!」
ほんの少し口元が綻んだ気がする番様と私はその日、日本の話をした。




