第39話:雪山奇襲作戦
【第3奇襲部隊隊長 インダ視点】
第一奇襲部隊による攻撃成功の連絡は、伝令を通じて直ちに俺たちのもとへ届いた。 百名足らずの部隊で、六百もの敵を葬ったという。その報せに、冷え切っていた部下たちの顔に微かな希望の光が差した。だが、まだ油断はできない。
敵軍がこの地点に到達するまで、まだ半日はある。今頃、さらに下方で第二部隊の攻撃が始まっているはずだ。 夜の帳が下り始めた頃、遠くから第二部隊の爆発音が聞こえてきた。始まった。 雪が降りしきり、風も強さを増している。分厚い防寒着を着込んでいても、芯から冷えるような寒さだ。兵士たちは、寒さだけでなく、見えない敵の大軍が迫り来るという精神的なプレッシャーと重圧に耐えていた。
その時だった。 「……第二部隊、奇襲失敗……! 退避中とのこと!」
伝令の悲痛な叫びに、部隊内に動揺が広がった。
理由はまだ伝達されていない。なぜ失敗した? 罠が不発だったのか? それとも、敵が予想外の動きを見せたのか?
「おい、どうすんだよ……!」 「俺たちもやられるんじゃ……」
兵士たちの間に不安の声が漏れる。
「静かにしろ!!」
俺は鋭く一喝した。
「どうしようもない! 私たちは、与えられた任務を全うするだけだ!」
おそらく、第一部隊の奇襲を受けて、敵も何らかの対策を打ったのだろう。重装歩兵を盾に前進したか、あるいは魔術師を展開させたか。
「隊長、だったら俺たちも……!」
「いや、ここは想定外だろう」
俺は首を横に振った。
「ここまで高度を上げれば、雪と寒さはさらに厳しくなる。防寒装備を持たないあちらは、一刻も早くこの山を下りることに専念するはずだ。警戒は先頭に集中する。……私たちは先頭を行かせて、中間の部隊を攻撃しよう」
「はい! 中間の部隊はまだ奇襲を直接受けておらず、警戒も薄いはずです!」
そして、ついに彼らがやってきた。 先頭集団は、爆発や銃撃でボロボロの者もいたが、それでも巨大な軍の形を保っていた。だが、確実に人数が削れているのは事実だ。
雪に覆われた斜面で息を殺し、じっとやり過ごす。 三十分くらいだろうか。しかし、極度の緊張状態の中では、何時間も待たされているような気分だった。
やがて、敵の中間部隊が俺たちの眼下を通過し始めた。
時が来た。
ピィィィッ! 俺は指笛を吹き鳴らし、攻撃の合図を出した。
「放てぇぇっ!!」
高い崖の上から、俺たち魔術師部隊が規定の場所へと一斉に『ファイヤーボム(上級)』を落としていく。 蛇のように長く伸びた敵軍の列に沿うように、次々と火球が着弾し、雪を溶かして激しい爆発を引き起こす。
敵軍は魔術攻撃でするべき魔術障壁の形成や盾の使用をせず、散らばろうとし出す。そのまま、ファイヤーボムやその他の無数の魔術攻撃で一掃された。圧倒的な戦いだ。もちろんこの後にも軍は続くが、すでに100名ほどを一度に葬った。
順調だ、順調すぎるくらいだ。
俺たちの第三部隊は、魔術師の割合が多い。つまり、範囲攻撃には長けているが、敵の防御魔法で防がれやすいという弱点があった。 ……そう思っていた。
だが、彼らは防御魔法をほとんど発動していない。それどころか、あれほど立派な盾すら構えようとしていないのだ。
(これは……どういうことだ?)
前の奇襲で、重装歩兵の鎧や盾がマスケット銃に通用しないと悟り、動きを変えたのか? 爆発から逃れるためか、彼らは一気に蜘蛛の子を散らすように分散し始めた。
(なるほど……彼らもただのアホではない、ということか。逆にそれを想定して裏手に取ったのか、この作戦。すごいな、サラ殿は)
銃撃の的になることを避けるため、密集陣形を解いたのだ。 だが、それも想定内だ。
「起爆しろ!!」
俺は声を張り上げた。 眼下は深い谷になっている。そこへ、あらかじめ仕掛けておいた新型爆薬を点火させる。
ズゴォォォォンッ!!
谷底で凄まじい爆発が起こり、その衝撃で巨大な岩石と大量の雪が崩落した。人為的に引き起こされた雪崩が、分散した敵兵たちを容赦なく飲み込んでいく。
だが、敵も黙ってやられているわけではなかった。
生き残った魔術師たちが、崖の上の俺たちに向けて反撃の魔術を放ってくる。空中で炎と氷が交錯し、激しい魔術の撃ち合いとなった。
さらに、山肌を駆け上がってきた敵の剣士たちが、俺たちの陣地へと肉薄してくる。 接近戦に持ち込まれれば、魔術師中心の俺たちは圧倒的に不利だ。
「まずい、退避だ! 総員、後退しろ!」
俺が叫んだその時。
ドドォォォンッ!! 横合いから、強烈な土魔法の壁が隆起し、迫り来る敵兵を弾き飛ばした。
「遅れてすまない! 第五奇襲部隊だ、ここは引き受ける! 早く行け!」
一斉に土魔法の攻撃と銃撃音が響く。目の前まで来ていた兵士が次々と倒れていく。敵兵はそれを見て、混乱に陥る。
「今だ!第三部隊!撤退だ!作戦成功だ!」
駆けつけた第五部隊の援護を受け、俺たちは間一髪でその場から退避することに成功したのだった。
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次はついに正面衝突になります!期待大の2章フィナーレです!




