10-1 決戦に向けて
どうも、Make Only Innocent Fantasyの三条海斗です。
「僕と魔剣と」も残すところのこり2章(これを含めると3章)です。残り12話とかいいながら12話じゃ終わりそうにないです……。
でも、最後までおつきあいお願いします!
それでは、どうぞ!!
「まさか、ここにまた来るとはね」
「王都がやつの管理下ならば、王都に最も近い町はここになる」
「だけどなァ……」
目の前にそびえたつ、大きな屋敷。
僕とセレナが、レオンと戦った場所だ。
「この屋敷は王国の管理下にあるからな、好きに使ってもいい」
「ディゴール、本当に一文無しなんだ」
金の亡者の末路がこれだと、盛者必衰の理を感じてしまう。
「明日の夜までに奴を倒さないと、一斉に攻撃が始まってしまう。今日が最後の夜だ」
「しかし、 魔物を一斉に操るなんて、本当にそんなことが可能なのかァ?」
「『魔物は魔力の塊だ。魔法で魔物を操ることはできる』……だって」
「私も不可能ではないと思いますぅ。実際、アストラルさんに憑依できているわけですし……」
「魔物も操ることもできる……か」
アリシアは黙ってうなずく。
「細かい話は中でしよう。さすがに、立ち話で終わるようなものでもないからな」
セレナのその提案に僕らは頷いた。
屋敷の中には、やっぱりあの無表情な家政婦がいた。
「お久しぶりです」
無表情で、頭を下げる家政婦。
喜んでいるのか、喜んでいないのかわからない……。
「では、こちらへ」
前と同じように屋敷を案内される。
屋敷は、豪華絢爛とはいかなくても、それなりに装飾はあった。
「こちらの部屋をお使いください」
案内されたのは、本当に前と同じ部屋だった。
(これも何かの縁……かな)
ドアを開けて中に入る。
部屋は前と全く変わってなくて、それがうれしかった。
「荷物を置いたら、二回の書斎に来てくれ」
セレナはそう言い残すと、アリシアを連れて別の部屋へと向かった。
「荷物って言ったってなァ」
ほとんど荷物を持っていないレオンは、もうすでに準備が終わっている。
そういう僕も、置く荷物は少ない。
「まっ、先に行って待ってようか」
「そうだなァ」
二人で階段を上がっていく。
この先の廊下で、僕らとレオンは戦った。
「懐かしいな」
「あァ」
「あの時、僕は君を捕まえに来た。君はディゴールを殺しに。目的なんて全然違ったのに」
「まァ、そういうこともあんだろうよ」
「そうだね」
扉を開けて中に入る。
やはり、セレナたちはまだ来ていないようだった。
適当な場所にあった椅子に座り、彼女たちを待つ。
それほど時間はかからないだろう。
「なァ、王宮内に敵がいる可能性はあんのかァ?」
「『魔物が潜んでいる可能性はあるだろう。だが、人がいる可能性はないはずだ』だって」
「魔物かァ、まだ魔物だったらいいがァ……」
レオンが言っているのは、ヴィオレで戦った魔獣のことだろう。
たしかに、あの魔物がたくさんいたら、ダーインスレイブの元へたどり着く前にかなり消耗してしまう。
「すまない、遅れたな」
「全然」
セレナが僕の前に座り、その横にアリシアが座る。
レオンは窓際にもたれかかるようにして立っていた。
「それで、明日のことなんだが……」
セレナは緊張した面持ちで話し始める。
その顔を見て、僕らは無意識に緊張していた。
「明朝……夜明け前に王宮に攻めようと思っている」
「夜明け前だって?」
「ああ。その方が、王都の住民に私たちの姿を見せることもなく、それによって防御を固められることもないだろう」
「奇襲……っていうことかァ」
「そんなに大層なものではないが、ダーインスレイブの元へとたどり着く可能性は上がるだろう。次に、これを見てくれ」
取り出されたのは一枚の地図だった。
「これは……王宮?」
「そうだ。王宮内の地図だ。正門がここだ」
「私たちが通った門ですぅ」
「この門は王宮内でもっとも強固な門だ。私たちだけで破壊することは難しい。そこでこの東門を使う、ここは物資運搬用の門だ。そのため、東門は門としては脆い。ここを狙う」
「だけど、門は門でしょ? そんなに簡単に壊れるかなぁ」
「壊す必要はない。この門を内側から開ければよい」
「でも……」
「大丈夫だ。レオンの身体能力を使えば、城壁は越えられる。正門と違って、この門は一人の力で開けることができるようになっているから、そんなに苦労はしないだろう」
「まっ、妥当な判断だなァ」
「そして、王宮内を通ってダーインスレイブの元へと向かう。映像から察するに、奴は謁見の間の奥……戴冠の祭壇にいるだろう」
「ほぼ王宮内を通ることになりますね……」
「だが、真正面から攻めるよりは消耗が少ないだろう」
「ん? ……『それならば、奴は俺が近づいた時点で察知できるだろう。東門を超えたら、時間も気を付けなければならないな』だって」
「どのみち奇襲には迅速さが求められる。今更、それは変わらない」
「まァ、攻めるっていうのはそういうことだからなァ」
「足手まといにならないように、頑張りますぅ!」
「僕らがダーインスレイブの元へとたどり着かなきゃいけないんだよね。……やるしかない」
「異論はないな。今夜出発する。休む時間は少しくらいあるだろう」
「了解」
「あァ」
「はいですぅ!」
みんな、各々返事をする。
こういう時、セレナはすごい。
さすが、本職の騎士だなぁとも思う。
それぞれ書斎を後にする。
こういう時くらい、それぞれが好きなことをしていてもいいだろう。
みんなの背を見送りながら、そう思った。




