9-1 名もなき兵士の記憶
どうもMake Only Innocent Fantasyの三条海斗です。
クライマックスまでのこり三章!
最後までおつきあいお願いします!
それでは、どうぞ!!
「今こそ立ち上がれ! 我が国のために!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
建物が震えるのではないかと思うほどの雄たけび。
その中に、僕もいた。
前進に鎧を纏い、国のために戦うことに志願した。
この国は今、隣国からの侵攻の恐怖にさらされている。
これ以上、僕らの故郷を荒らさせるわけにはいかない。
そう思った僕は、志願兵の出兵のためにお城に来ていた。
「出陣せよ! 防衛線を突破されれば、国が戦火にまみれるぞ!!」
その言葉は、誰の胸にも重くのしかかったのだろう。
顔つきが一変した。
「総員、出撃!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
門が開かれ、僕らは一斉に走り出す。
僕の担当は最前線、国の境目であるカエルレウス川だ。
――― ―――
「今回の作戦を説明する。まずは部隊を本隊と別働隊に分ける。本隊はウィクトル公国軍との戦闘。その隙に、別働隊は堤防の破壊へと迎え。決壊した堤防から流れ出る水で、奴らを一掃する! 各員、配置に着け!」
「了解!」
既に別働隊は、出撃している。
彼らが堤防を壊すまでに、この場を守り切らないと……!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
(来たっ!)
ウィクトル公国軍の部隊が、攻撃を仕掛けてきた。
僕らは川を挟んだこの河原にいなければならない。
「かかれ!!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
僕らも負けじと反撃をする。
辺りは激しい攻防が繰り広げられていた。
「う、うわっ!」
金属音が耳元で響く。
ぎりぎり持っていた剣で防ぐことができたが、このままだとやられる!
「う、うおおおおお!!」
全力で相手の剣を押し返す。
なんとか、つばぜり合いの形に持ち込めた。
「ぐぅ……!」
力は相手の方が強いか……!
じりじりと再び押し返されていく。
「ぐっ!」
腹部に衝撃。
蹴られたのだと、すぐに分かった。
しりもちをついてしまい、相手に一瞬無防備な格好を見せる。
しまった、そう思った時だった。
「ぁ……!」
ごろりと落ちる生首。
何が起きたのかわからなかった。
「大丈夫か?」
手を差し出す、黒衣の男。
それは、先ほどまで演説していた男性だった。
「あ、ありがとうございます!」
「次は助けられんぞ」
「が、頑張ります!」
「よい気合だ。その調子で頼むぞ」
右手に剣を持ちながら、彼は敵へと駆けていく。
その強さはまさに無双。
一人で何人もの敵を倒していく。
その姿に、公国軍の兵士はどんどん押されていった。
「すごい……!」
その場にいた何人もの兵士が、その姿を見ていることしかできなかった。
近づけば邪魔になる。
近づけばやられる。
しばらく、彼の戦場には誰も近づけなかった。
しかし、それを破ったのは鐘の音だった。
「この音は……!」
「時間か!」
彼はすぐにこちらへと戻ってくる。
それを見た僕らも、ゆっくりと後退していく。
敵兵はじりじりと、攻めるべきか退くべきか迷っているようだった。
しかし、その迷いが自分自身を破滅させる。
激しい音が右方から聞こえる。
それは、とても早い心臓の鼓動のようだった。
「さ、さがれ~~~~!!」
一人がそう叫ぶが、もう遅い。
目の前で、ウィクトル公国軍が水流に飲まれていった。
「うおおおおお!!」
辺りを震わせる歓声。
しばらくは、カエルレウス川を渡ることはできないだろう。
僕らも、公国軍も。
「皇帝陛下万歳! 万歳!!」
響き渡る雄たけびは、また戦争が終わったわけではないのに、どこか自信に満ち溢れていた。
この国が、戦争に勝つ。
始めは負けると思われていた戦争も、皇帝陛下が即位してから優勢になっている。
確かに、このままいけば戦争には勝てるかもしれない。
再び皇帝陛下を見てみると、さきほどまで自らが使っていた剣を天へと掲げていた。
人を斬った剣だというのに、それはあまりにも綺麗で、白く輝いていた。
――― ―――
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
門が開くなり、僕らは国民の歓声に包まれた。
確かに、目のまえで勝利を挙げたんだもんな。
見てる人もいたはずだ。
皇帝陛下は、国民に手を振る。
先ほどの戦闘からは、想像できないほどの穏やかさだ。
一歩ずつ、僕らは城へと歩いていく。
その道は、この国の未来がどこまでも続いているかのようにも思えた。
だけど、それは間違いだった。
世界は戦争終結へと動き出した。
だけど、それは一つの始まりを意味していた。
その時の僕は、そんなこともわからず、ただ皇帝陛下に従っていた。
――― ―――
「戻ったぞ」
「お待ちしていました」
皇帝陛下の側近である獣人が、頭を下げる。
誇り高い獣人が、人間に頭を下げている姿なんて、めったに見られないだろう。
「ウィクトル公国の様子はどうだ?」
「依然、戦闘態勢を解いてはいませんね。カエルレウス川の彼岸でこちらをにらんでいます」
「攻勢に出るべきか……」
先ほどまで使っていた剣を、壁にかけると王座へと座る。
謁見の間とは思えないほど、この部屋は殺風景だった。
王座の後ろの壁に、二振りの剣があるだけだ。
「公国の本拠地は、ここから離れています。今攻撃を仕掛けても、すぐさま補充がかかるでしょう」
「ふん、無駄に国土が広いだけはあるな」
「敵の注意をそらしてはどうでしょう?」
「敵の注意をそらす?」
その言葉に、皇帝陛下は何やら考え込む。
「カエルレウス川の混乱が収まっていない今だ。すぐに出撃するぞ」
「どこへ?」
「アクィルスだ」
そういうと、皇帝陛下は先ほどまで使っていたものとは違う、もう一振りの剣を手にした。




