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新説幻想世界物語  作者: Unknown
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第4話 「邂逅」

薄暗い森の中、絶叫が木霊した。


僕達は当初の混乱が治まった後、男女別々で離れ、男子は男子、女子は女子でクラス毎にまとまり、朝礼等で並ぶ順番に、体育座りで先生やパイロット達を含む大人達の会議の沙汰を待って居た。


そして生徒達が整列している複数の内の一つの列、その後方から誰かが絶叫した。


誰もが叫び声の発信源に反応したのだが、その光景に全員が凍りつく、否、理解が追い付かなかった。


列の最後尾の男子生徒は最早叫び声にもならない声を上げのたうち回っており、その周りのクラスメイトや隣の列の生徒達が、半放射線状にその苦しむ生徒から離れ、その生徒の左腕を驚愕の表情で見ていた。



まず間近に居た生徒達が驚き叫ぶ



「うわあっ!!」 「おいっ!木下ぁ!!」 「ぅうう、腕、腕があぁあぁあぁあ」



「お、おいっ、ぁ、あ、あれ腕溶けてないか?」


僕の隣のクラスの列の生徒が指を差した直後、顔が傍から見てもすぐ気付く程青ざめ、余りのグロテスクな光景にゲロを吐く。



何だ!?どうした?何だよ?左腕?え?骨?、、、、溶け、、て、、いるのか?



一瞬、遅く気付いた瞬間、僕も吐いてしまった。


苦しみのたうち回るその生徒の左腕が肩の付け根あたりから肉がただれ骨が見えてしまっていたのだ。



「~ウッ!!オエ!ッエ~!ハア、ハア、ゲホッ!ゲホゲホ!オエッエ!ハア、ハア、ハア」


胃酸がこみ上げてきて喉を焼く 、その刺激に咳き込み、その一連の行為のせいなのか眩暈がする。


何なんだよ?何してんだよアイツ? 、、、、なんだ?、、、あれは、、、ゼリー?


気持ち悪くなって吐き気と眩暈がする中でも、余りのその異常な光景から目が離せなかった僕は、男子生徒の肉がただれ、骨が見えたその腕を覆うゼリー状の物体に気付いたのと同時に教師陣の誰かが叫ぶ。



「木下ぁっ!!!、、、、、っ!、、、、、き、木から今すぐ離れろおっ!!!」



木下と呼ばれた生徒の頭上から次々と垂れ落ちてくるゼリー状の物体に教師が気付き叫ぶのだが、その叫びの直後、別の最後方の列からも絶叫が木霊する。



「ぃぎあ˝ぁあああああ˝っビャッヴムブヴヴンン˝オ˝ア˝ァ˝!!!」



そこには更なる凄惨な光景があった。


頭から背中に掛けてゼリー状の物体が覆い、頭部右側から溶け出し、頭蓋骨が露出して右目や鼻・唇がまるで腐って放置された肉の様に溶けて変色していた。


顔だった部分は、映画に出てくる様な地獄の亡者やゾンビの様なチャチな作り物とはかけ離れた筆舌のしがたい強烈な生々しさは最早、元の姿がどんな顔をしてたのかさえ分からない程の変貌を遂げ、やがて力尽きそして倒れた。


そして、教師の声も空しく、反応が遅れた生徒達に次々とゼリー状の物体は頭上から落ちてくる。


また一人、また一人と、ゼリー状の物体餌食になる。



その光景にその場に居た生徒全てが、時が止まったかの様に戦慄した。


時間にして一瞬、実際はもっと短かっただろうと思う、逃げると云う選択肢が自身が行動を起こすよりも後に頭に浮かび、選択した時には既に、凄惨な現場から2mは背を向けて離れていた。


イ、イヤダ!もう、こんな場所に居たくない!死んでしまう!


混乱、恐怖、支離滅裂、無秩序、阿鼻叫喚、混沌、恐慌、狂気、絶望、焦燥、あらゆる感情や行動が全てそこに詰まっておりそれは爆発した。


教師の声は届かず、目の前を走り抜ける一人の生徒の腕を掴み、静止させようとするも恐怖と混乱のせいか通常では考えられない力で手を払われ静止に失敗する。


ただ、教師達は狼狽するか、唖然とするしかなかった。


生徒の身の安全を守るどころか既に何人も死傷者が出ており、その原因が正体不明のゼリー状の物体、それはまるで意思を持った強酸そのもので、有り得ない現象が次々と生徒達を襲い、一瞬にして皮膚や肉を溶かすその様は、既に教師達の常識のキャパシティーを軽く凌駕していた。


辛うじて原因であろうゼリー状の物体に気付き、生徒に注意を促すが時既に遅しとばかりに被害が拡大し、更に教師達にも動揺と混乱が走る。


そして生徒達はと言えば、 或る者はその場で気を失い、或る者は他者を蹴落とし、或る者は怨嗟の叫びを上げ、また或る者は腰を抜かし、狂気を含んだ笑い声を上げる。


最早、収拾出来る・出来ないの事態では無くなっていた。


半ば暴徒と化した男子生徒は道無き道、つまり森の中や、少し離れた女子生徒達が待機している場所等、お構い無しに走り抜けて行く。


一方の女性陣は、男子生徒達と離れた場所で待機していた事も有り、叫び声が聞こえては居たのだが事態の解明が出来ず、困惑と狼狽していた。


女子生徒達の前を走り抜ける男子生徒達をただ怯え、見上げながら自身の裸体を隠す事だけしか出来なかったのだが、やがて複数の女子生徒の何人かが、男子生徒で在ったと思わしき凄惨な状態の遺体に気付き。悲鳴を上げる。


更なる増大した混乱が、場を制した瞬間だった。


最早、周りの大人達の静止は耳に入る筈も無く、我先にとひたすらと森の中を走る。


だが混乱は更なる混乱を呼び、事態は悪化の一途を辿る。


それは、冷静になれば分かる事であった。


木下を始めとした男子生徒達を襲うゼリー状の物体は、全て木の上から落ちて来ている事を。


木々から離れ、広場の真ん中に居れば少なくとも更なる被害を防げていたのだ。


ただ、冷静になれば分かる事、、、、それは口にすれば簡単な事だが、果たして実際の現場に居れば冷静に入れたのだろうか?


先に結論として述べるなら、否であると答える他無い。


明梟中学校の修学旅行は、高校入試の時期を控える3年生時は避け、中学2年生時に行う行事である。


それはつまり、13歳~14歳の肉体的にも精神的にも未完成で繊細な時期でもある。


修学旅行の道中、飛行機墜落に遭い、気付けば見知らぬ土地の森の中、水や食料も無く、安全な場所も増してや衣類さえも無いのだ。


ただでさえ極限のパニック状態の中、何とか落ち着きを取り戻し、事態を収拾すべく動き出そうとしたところ、謎の物体に因る友人達の凄絶な死亡の様相を見て、心を冷静に保てる中学2年生が果たして存在するだろうか?



平常心を失い、森の中を走っていく生徒達は、頭上から落ちてくるゼリー状の物体に捕まり、また一人、また一人と命を散らしていった。






◆◆◆◆



どれくらい走っただろうか?脇目も振らず、ただひたすらに走り続けていた僕は、いつしか小さな川に出ていた。


精神の疲労も相まって小川の前で膝を着いた僕は、喉の渇きを癒す為、目の前を流れる川の水を両手で掬い、満たされるまで何度も何度も掬っては飲んだ。


やがて喉の渇きを満たした僕は、涙と鼻水でグチャグチャになった顔を更にグチャグチャにさせ泣き出していた。


何故、自分はこんな目に遭わなければいけないのか?何故、誰も助けに来ないのか?何故、こんな場所で泣いているのか?悔しくて辛くてどうしようも無く、泣く事しか出来なかった。


、、、、もうやめてくれよ、誰か助けてよ、死にたくないよ、休ませてくれよ、、、、。




暫くの間泣いていた僕は、次第に心に落ち着きを取り戻していた。



そういえば僕は、どこまで走ったんだろうか?形振り構わず無我夢中で走ってきたけど、皆は?前田は?無事なのか?


そう考えると次第に不安が過り、先程感じたのとは別種の恐怖と焦燥が身を包む。


え?まさか、、、僕一人?逸れた?誰か居ないのか?顔は見てなかったけど、何人かは僕の近くを走ってた筈だぞ?誰か居ないのか?


、、、、川沿いに歩けば誰か一人ぐらい居る筈、、、ハッキリとは見てないけど同じ方向を走ってたのは確かだ。


そう考えながら10分位下流に向かって歩いただろうか、更に段々と不安になってきた、、、。


不味い、どうしよう、でも戻りたくない、、、それにちゃんと戻れる自身も無い、マジでヤバい。


段々と焦燥が強くなっていく中、対岸側の森から複数の明かりが見える。


おお!救助が来た?やった!助かる!家に帰れる!


そう思い、対岸に居るであろう人間に気付いてもらう為大声を上げる。



「お~い!!助けてください!誰かー!お~い!」



こちらの呼びかけに気付いてくれたのか、少しずつではあるが複数の光が近づいてきてる、やった!やった!


思わず小川を飛び越え(とは言っても小川は幅1メートルも無く、深さも踝が隠れる程度の深さだ)明かりが灯る対岸の森に近付きいよいよ明かりの主の一人と対面した。



「ありがとうございます。助かりま、、、、し、、た。」



この時僕は、思わず戸惑った。


何故なら目の前の明かりを持った人間の正体は犬耳と尻尾が生えた人間、つまり"獣人"が現れたからだ。

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