第3話 「混乱と静寂そして混乱へ」
その叫び声を聞いた瞬間、僕は直感した。
収拾の着かない大パニックになる、、、、そう確信した。
そしてその直感が確信に至るには余りにも容易だった。
それは僕でなくても誰もが容易に予知出来ただろう、それは年齢如何に問わず、その光景を見た者は確信できるだろう、そして決して外れる事の無い予知は間を置く事無く実現され、大パニックに陥った。
阿鼻叫喚、、、ふと頭によぎったのはそんな言葉だった。
ちらりと横の友人である前田を見る。
「、、、、うわぁ~」
、、、、うん、そうだねドン引きだね、ドン引きだよね?ミートゥーですよ前田さん。
暫く前田と二人で、阿鼻叫喚の地獄絵図を成す術も無く、見ているだけしか出来なかった。
体育座りになり赤面している者、そのラッキースケベに鼻を伸ばしこれ幸いと見惚けてしまう者、その視線に耐えられず思わず泣いてしまう者、その羞恥の余り偶然見てしまった罪無き者にビンタをしてしまう者 、ビンタされてしまう者、そしてその混乱を治めようと必死に声を上げ落ち着かせようとする者、混乱の極致だった。
混乱を治めようと必死に声を上げる者、それはこの明梟中学校教諭の一人であり今回の修学旅行引率者の一人でもある五十嵐佳代子先生(27)の姿がそこには在った。
五十嵐佳代子 ー 所謂、熱血教師、、、、、では無い先生ではあったが、生徒には人気と信頼があった。
その生徒からの人気を得る理由の一つは一言で言えば"美貌"である。
背中まで伸ばした漆黒の髪は、所謂烏の濡れ羽色であり、張本人である五十嵐先生も自慢のチャームポイントの一つとして気に入っている。
目は大きく二重で、"黒真珠"そう言って良い程の惹きつけられる瞳は、多感な時期である中学生にはとても目を合わせれそうに無いぐらいの力強さと色気をその瞳には多分に含まれている。
小顔で鼻筋もスッと通っていて小さく、鼻の穴ほじった事有ります?といった感じだ。
唇は怪しく妖艶でいて、ひとたび微笑んだならば、思わずゴクリと唾を飲んでしまう。
体型はスレンダーで、それでいて胸は小さくも無くかと言って大きすぎる事も無い、Bカップ~Ⅽカップの間と言ったサイズだと思う。
腰からお尻、そして足までの流麗なラインは、芸術と言っても過言では無く、その中心にそびえるお尻は小ブリでありながらも"美尻"でマニアにはたまらない一品であろう(笑)
正に美人と云うより麗人と言った方がしっくりくる。
性格は非常にサッパリとした性格で、後悔や苦悩とは無縁のタイプなのだが、かと言って冷淡なイメージは無く、大人の余裕を持って接してくれる優しい性格はその美貌も相まって、男子・女子に関わらず本人にとっては特に意識して行動している訳では無いのだろうが、信頼と人気を持つ先生であった。
要約すると、"麗人でいて男前"、評するならそんなところだろう。
そんな生徒達の人気者である五十嵐先生は困り果てていた。
それは当然の事で、五十嵐先生も一糸纏わぬ生まれたままの体、全裸であった。
そんな状態である五十嵐先生は体を隠す様に腕で胸を隠しながらしゃがみ込み、顔を赤くしながらなんとかしてこの混乱を治めようと声を上げるのだが、如何に生徒達の人気と信頼を得ててもこのパニックは治まらない、それどころか、その美貌が災いして、男子生徒や教師達の格好の好奇の視線の的となっていた、、、イヤ混乱治めろよオッサン共!
そんな中、一人の教師が事態を収拾すべく立ち上がった。
その男の名は、加納欽一先生(通称、納欽 ➡ 脳筋先生)であった。
加納欽一(38歳)は所謂、マッチョです 、、、、もう説明は十分ですよね?なんとなくキャラ分かったでしょ?
そして加納欽一先生もとい、脳筋先生は混乱を治めるべく。その鍛え上げられた強靭な肉体から発する大声で生徒達を一喝する。
『コラァ!!貴様等落ち着かんかぁ!!』
圧倒的な存在感と大声で一瞬にして場を治め、今までの混乱が生む喧噪を一瞬のうちにして静寂の場へと変える。
場の混乱が治まったのを確認した脳筋先生は続ける。
『お前達の混乱も良く理解出来る!、、、だがしかし!混乱は更なる混乱を招くだけだ!その混乱で怪我をしたらどうする!?お前達には私達が付いている!何があってもお前達だけは守る!だからとにかく落ち着け!!』
脳筋先生は叫んだ。
それはまるで懇願する様に、生徒の安全を守る為に命を賭ける事も厭わない!!そんな教師の鑑、イヤ人間の鑑と言っても過言では無い熱き漢の魂は、混乱の極致であった生徒達の心を熱く掴まなかった。
何故なら、脳筋先生はチ〇コの部分を近くの茂みに有った大き目の葉っぱで隠しただけ(先っちょは若干見えてる)の状態であり、熱き想いを叫ぶ男の姿は単なる頭のオカシイ変態にしか見えなかった。
『きゃぁぁぁぁ!!!』『こっちこないで!!!』『もうイヤァ!!!』
更なる混乱が巻き起こった。
「な!?何故!?]
何故!?じゃねぇよ!混乱の場に変態が舞い降りただけじゃねえかよ!?大変な変態が先っちょチラチラさせてるだけじゃねえかよ!気になって全然何言ってるか頭に入んなかったわ!
◆◆◆◆
変態マッチョが舞い降りるという混乱の極致から30分は経った頃だろうか?自然と付かず離れずの距離で男性陣と女性陣に分かれ、現状を確認するべく、生徒達を待機させ、それぞれの大人達が同性同士で話し合っていた。
「これはどういった事態ですかな?機長!」
引率の一人である学校では数学を担当する清水先生(48)は機長に詰め寄る。
「イヤ、私共としましても何が何やらサッパリで、、、目が覚めた時には、皆様方のご承知の有様でして、、、、。」
「 ご承知の有様じゃないでしょう?どう責任を取られるつもりなのですかな?」
「申し訳御座いません、今回の責任に就きましては全力で誠心誠意を持って対応させて頂ます。」
「謝罪で済む場合じゃ無いんですよ!この場をどう収拾するのですか?ハッキリ言わせてもらえば安全・無事に我々を含む全員を帰す事が出来るのかどうか?それを聞いているのです!、、、謝罪等当たり前の話でしょう?」
「それに就きましては、飛行機から発せられる最後の救難信号を頼りに自衛隊が救出に向かって来ている筈です。」
「その肝心の飛行機は何処に有るんですか!?ええ!?そしてそれは何時頃に来て、それまでの間の食事や衣類、避難場所はどうされるのですか?教えて頂きたい!」
そのやり取りに立ち会って見ていた脳筋先生が助け舟を出す。
「清水先生、落ち着いてください。確かにその事も大事ですが、どう考えてもパイロットの方達に今すぐどうこう出来る問題でも無いでしょう?まずは冷静にすべき事を、、、まずは完全に夜が更ける前に非難する場所を見つけておいた方が良いでしょう。」
渋々だが清水先生もその提案に乗るしかなかった。
周りはまだ薄暗いと云う程度で完全に陽が落ちた訳ではないが、森の中は徐々に肌寒くなる程度に陽が当たらず、またその肌寒さは、暗に時間が無い事を否応が無く痛感させられる。
夜間に救出が来る事は当然考え難く、一夜を過ごす為には安全に過ごせる場所と暖を取る必要があるのだが、約300人の人間をそれも男女別々で過ごせる場所を見つけなくてはならない、だがこの場に居る誰もが既に気付いているのだが安全な場所は到底見つけられないだろう、分かってはいるのだが徒に時間を過ごす訳にはいかないので最悪の場合を考え、脳筋先生が機長と清水先生に提案する。
「此処はまず、安全な場所の確保と暖と明かりの為の薪拾いと二手に分かれるべきでしょう、私達は生徒の安全を守る義務が有りますので、パイロットのお二人方には安全な場所を見つけてきて頂きたいのですがどうでしょうか?勿論2重遭難にならない様な範囲でお願いしたいのですが、、、。」
「当然の事です。寧ろご協力感謝いたします。」
機長はそう言って深く頭を下げ感謝の意を示した。
「じゃあ私達は薪を集めましょう、生徒達にも協力させて出来るだけ火を絶やさないだけの薪を集めて、暗くなる前に火を熾しましょう、なに昔はボーイスカウトに所属していましたから火を熾すのは大丈夫ですよお手の物です。」
そう言って胸をドンッと叩いて誇らしげに語る脳筋先生。
「では五十嵐先生達にもその旨を伝えてきます。」そう言って振り返り声を上げようとした瞬間、絶叫が木霊する。
「っぎゃああああああっ!!!」
その叫びは、今までの混乱が児戯に等しいと言っても過言では無い、想像すらしていなかった未だ嘗てない地獄の旅の始まりの合図であった。




