第2話 「何か変」
目が覚めた。
その視線の先には、夕暮れの太陽に染められたオレンジ色の雲と、その景色をフレームの様に囲む木々が見えた。
それはまだ、幼かった少年時代に神社で遊んでいた頃、門限の6時頃に何処からともなく聞こえてくる帰宅を促すアナウンスと、何処か暖かさと寂しさを感じさせるチャイムを聞いたあの頃の僕は、まるでそれの真偽を確かめる様に夕空を見上げる。
それは、幼かった僕にとって何がどうと云う事はないのだが、ほんの少しの寂しさと、楽しい1日が終わってしまうと云う物足りなさを感じさせる、ありふれた日常だった頃に見た景色と似ていた気がする。
「う~ん痛てててて」
上半身を起こす、、、背中が痛い、なんで地面で寝てたんだ?え?、、、って裸じゃん!?全裸じゃん!?、、、なんで!?
おもわずバッ!っと中腰の状態のまま立ち上がり、思わず誰かに見られては不味いと思い、周りを見回したのだが、そこから見える異常は、自分が全裸である事でさえも忘れてしまう程の、衝撃的な光景が僕の前に広がっていた。
、、、、全裸、全裸、全裸である。
「、、、なんだよこれ、、、、。」
そこには男女隔たり無く、延べ300人ぐらいの人間が余す所無く全裸で横たわっていた。
「、、、なんだよこれ」そう口にしたのは2度目だが、そうとしか言いようが無かった。
意味が解らない、何で?何があったらこうなるの?アレ?ちょっと待て、僕達って確か、、、、飛行機が墜落してたよな?助かった?助けられた?飛行機は?此処は?森の中?、、、、何で裸?
パニックった。
森の開けた場所で夕暮れの中、300人の全裸の男女が横たわる中で挙動不審の全裸の男が、狼狽していた。
◆◆◆◆
、、、どうしよう?誰か助けてくれた人が近くに居るのかな?居るなら呼びたいんだけど、裸だし、、、それにしても助けてくれたのに何で放置されてるんだろ?
、、、イヤ、待てよ?助かった?助けてくれたのなら、普通病院だよな?飛行機が落ちたんだし、大事になってる筈だよな?っていうか無傷なんだけど、、、、皆も、全員無事っぽい、皆全裸だけど、、、、。
うわっ!中山さんの裸思いっきり見ちゃったよ、ヤベ~、、、イヤイヤイヤそんな場合じゃ無いって!
、、、、、、チラッ♡、、、、ってチラッ♡じゃねぇよ!だからそんなことしてる場合じゃ無いんだって!
、、、、まぁ、結構良い体してたけど、、、そうじゃない、何かオカシイ、飛行機が落ちて尚且つ全員無傷で、その僕達を発見してくれて救助してくれた人達が一枚ずつ丁寧に全員を裸にして放置?どう考えったって変だよね?何なんだこれ?何が起こってるんだ?もしかして死んだ?天国?そっちの方がしっくり、、、、しないけど、、、、イヤっそれは無いわ~、、、でもなぁ~、う~ん、、、、、、ん?、、、前田?、、、、。
僕のすぐ横で横たわっている男の名は前田慎吾、飛行機が落ちる直前、音楽を聴きながら寝ていた僕を起こしていた男で、この友人は小学校が同じで家も近かい、まあ所謂、幼馴染というやつだ。
性格は単純な性格で素直で面倒見が良く、それでいて気も利く良い奴だ。
親の影響もあってサッカーが大好きで、部活でのポジションはボランチでレギュラーなのだが、本人曰く「サッカーの花形はFWだろ!」と言ってFWを希望して入部したのだが、175cmと体格も中学生にしてはまあまあ大きく、パスセンスと豊富な運動量を認められ、尚且つ前線でのDF能力を買われて今のポジションに落ち着いた。
家族は親が母が一人の母子家庭で、兄弟は前田を含めた3人兄弟、長兄に前田、一コ下に妹と弟の双子が居るのだが、家族全員が同じ顔(笑)で仲の良い家族だ。
前田の恋愛事情と言えばよくは分からない、不細工と言う訳でも無いのだが、浮いた話を聞かないし、僕と居る時はどちらかと言えばゲームや漫画の話ばかりで、女性の話で盛り上がると言えばアイドルの話ぐらいだ。
もしかすれば、好きな女子が居るのかもしれないのだが、中学生特有の恋愛に対する恥ずかしさが有り、お互いに憚られるものがあってか、異性の裸とかにも興味が有り、エロ本やエロサイトの話等はしても、恋愛話は暗黙の了解の内にお互い話しない様になっている。
そして、そんな腐れ縁の友人の前田は、、、。
「ニャムニャムニャム」
、、、、、何かイラっとするなぁ。
「ん~ニャムニャム、、、、って痛え!!」
ごめん、なんか寝顔がムカついたから代わりに僕たちが死んだかどうか頬っぺた抓って確かめてみたの。
「なにするんだよ!、、、、って何でお前全裸なの?(笑)」
「、、、、、お前もな!」
えっ?と言って思わず股間を見て自分も全裸だという事に気付く前田はうおっ!とか言いつつ股間を隠し、えっ?えっ?何で?と言いながら周りを見て絶句する、、、、気付くの遅いなコイツ。
「えぇ~何これ~?」
まぁそりゃドン引きするわ。
「、、、、、。」
おいっ!仰向けになってる中山さんをガン見すんな!気持ちは解るけど、そして中腰になるな!、こんな状況で大物だなコイツ。
「おいっ!!」とツッコミつつ、パチィンと良い音を響かせて中腰態勢の前田の尻を蹴ったのだが、「お"う!」と言いながらそのままゆっくりと前のめりで倒れた前田、、、、ん?どうした?
、、、、どうやら当たり所が悪く、キャン玉の裏側にも当たったらしく、ピクピクしながら痙攣しているゴメンサイ前田君。
「ゴメンゴメン、イヤ、そんな場合じゃないでしょ!?何か変じゃない?この状況。」
悶絶する前川に声を掛けたのだが、余程当たり所が悪かったのか暫く会話出来そうに無い、、、、なんか本当にゴメン前田、一応言っとくけどキャン玉の事は事故だよ?
「う~」と言いつつ涙目になりながら立ち上がる前田は腰をトントンと叩きつつ、恨めしい顔つきで僕の疑問の問いかけに応じる。
「聞かれなくても確実に変だろ?何が言いたいの?どういう意味?」
「イヤ、だからさ、僕達の乗ってきた飛行機、墜落したよね?」と答えると前田は思い出したようだ。
「そうだよっ!思いっきり落ちたよな?、、、あれ?無傷?、、、奇跡?」
「それもだし、此処どこ?って感じじゃない?飛行機は助けてくれた人が居たとして、墜落現場から移送されて来たんだとしてもさ、何で裸?助けてくれた人も僕達を放置して何処に行ったの?」
前田に聞いても分からないだろうけど、感じた疑問をぶつけてみた。
「俺に言われても分かんねぇ、けどさ、多分死んだって訳じゃ無いでしょ?」
「うん、僕もそう思うんだけどさ、意味が分からなさ過ぎてどうすれば良いのか良く分かんなくて、、、。」
「とりま、先生起こしてみる?」
「あ~そうだね、僕達でグダグダ言ってても、、、、、」そうやって前田と二人で話合い、この修学旅行の引率で在り、保護者で在り、責任者の一人でも在る担任の五十嵐先生を起こそうと結論付けるその瞬間、気を失っていた女生徒の一人が金切声を上げる。
「キャー!!!」
その様子を見て僕は思わず「ハァ~」っと顔に手を当て天を仰ぎながら深い溜息を吐いた。




