55.エピローグ
見捨てられた街とも呼ばれる、ここは城塞都市。
そのほんの一角。
小さな薬店を営む元セイレーンの薬師と、相変わらず色々不明な部分が多いウイの一族の男が暮らす場所。
薬師は男と出会う前と変わらずに、この街でひっそりと慎ましやかな暮らしを望んでいたのだけれど――男の方は本人の意思に関係なく問題を引き起こす名人だった。
最近になってそのことにようやく気づいた薬師は、たとえ愛する男だろうとも我慢の限界というものがあると悟る。そして――。
「厄介事は外で処理してこい。それまで帰ってくるな!」
薬師は男を己の領域から蹴り出し、
「ちょッ、桂。この扱いは酷くないか。桂ぁ~」
閉め出された男が扉の前でしばし項垂れた後、とぼとぼと路上を歩き出す姿が度々見られるようになった。律儀に、彼女の言葉を守るために……。
所詮、最初に惚れた弱みだ。力では勝っていようと、男は薬師に勝てない。
これは、ある薬師と奇妙な男の、出会いから始まり続いていく物語である。
これにて「陸に上がったセイレーン」は一旦、完結にします。
ここまでお読みになられた方々、お気に入り登録してくれた方々、評価してくれた方々。お付き合い頂き、ありがとうございました。
一旦と付く理由は、この話ができた切っ掛けとなる場面がまだまだ先の話だからです。
そこにたどり着くまでの話もいつか書きたいな、という希望を込めて。けれど、まだ書けそうにないから、一旦、完結です(苦笑)




