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シンデレラ戦記  作者: 佐倉 杏
第3章 魔女の住処
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エピローグ

 ラトアからさらに西に、いつでも真っ白い霧のかかった島がある。その島には、魔女とその孫が住んでいた。

 エラは今日もマザーとともに、薬草の扱い方を学んでいる。






 太陽と競い合うかのような早い時刻に、エラは目を覚ました。

 もうすっかり春めいたこの季節、早朝とはいえだいぶ暖かい。ベットの上で小さく伸びをして、エラはゆっくりと起き上がった。

 エラが起き上がると、たくさんのねずみや小鳥たちが、エラの周りにわらわらと集まってくる。


「エラ、おはよう」

「今日も朝寝坊だね」

「今日はクロウが郵便物を持って来る日だよ」


 エラは手早く身支度を終えると、家の外に出た。きょろきょろと辺りを見回して、王都の方へと目を向けると、霧のキャンバスに黒い染みのようなものが近づいてきた。

 それはどんどん近づいてきて、ようやくエラの視力でそれがカラスだと認識できるようになった。


 クロウは足にたくさんの手紙をくくりつけて、エラの前で羽ばたいた。エラが手早くそれを取り外す。


「おはよう。エラ、リオル。

 別にまだ寝ててもいいのに。手紙は枕元に置いておくからさ」

「それじゃあクロウの顔が見れないじゃないの。長旅ご苦労様」

「ああ、エラはなんていい子なんだ!」


 クロウが大げさに翼を動かすと、黒い羽がそこらじゅうに舞った。それが鼻にかかったのか、エラの頭の上に乗っていたリオルが一つくしゃみをした。


「おいっ! 落ち着けよハゲカラス。エラの綺麗な髪に黒い羽がつくだろ!」

「ハゲてねえよ!」

「その油断が命取りなんだよ! 十年後も同じ台詞がはけるといいね」


 いつものように仲良く喧嘩するふたりをみて、エラの頰が緩む。それからクロウからもらった手紙の束を見て、エラの笑顔に花が咲いた。


「あれから二年も経つのに、皆こうして毎月手紙をくれるんだもの。嬉しいわ」


 一枚ずつ手紙を広げ、エラはその場で読み始めた。


「まあ! アルベルタ姉様がご結婚されるのですって! お相手は貴族の方だわ。結婚式の招待状もついてる。絶対行かなきゃね。

 カミラのお菓子屋さんも、とうとう開店が近いわね。そうだわ、アルベルタ姉様にお祝いの品として何か注文しましょう」


 エラは楽しそうに一通ずつ手紙を読み進める。しかし止めどなく動いていた手が、一瞬止まった。


 その手紙は、王子からのものだった。

 かさりと音を立てて手紙を開けた。王子からも毎月、手紙が届く。業務の愚痴や、父王の健康のこと、王城の美しい庭のこと。いつもたくさんのことが書いてある。でも今日の手紙は、いつもよりもかなり短かった。


 読み進めるエラの目が驚きに丸くなった。さっと頰に朱が差す。ふたりの使い魔がエラの頭の上から手紙を覗き込んで一緒に見ている。

 手紙を読み終え、何度も読み返す。それを丁寧にたたむと、エラは一目散に家の中へと戻っていく。


「おばあちゃん! 聞いて、お話があるの!」


 幸せそうなエラを見て、リオルとクロウは顔を見合わせて笑った。







『エラへ


 久しぶり、元気にしてる?

 直接会ったのは、三ヶ月くらい前になるかな。ユヴィナ港のお祭りに行ったときだよね。あれは楽しかった。


 さて、今日はね、エラに報告があるんだ。

 実は半年後、ロロワ帝国へ行くことになった。

 これまでロロワ帝国とは国交こそあったけれど、王族間での対話などは一度もなかった。ただの商売相手としての関係だったんだ。理由は簡単。航海が危険すぎて、王族がそれを行おうとは思わなかったからだ。


 けれどこれからもずっと、そのままではいけない。王族同士の対話は、その危険を冒す価値があると僕は思っている。今回の対話ではね、正式に講和条約を結ぼうと思っているんだ。今はその根回しの真っ最中でね。本当に、忙しくてかなわないよ。


 大使として王子である僕が向かうことになったから、それ相応に使節団も大きくなった。ダグラスとロビンももちろん行くよ。

 ところがね、一つだけ席が足りていないんだよ。


 長旅に病はつきものだ。だから当然、使節団の中には医者や薬剤師が必要なんだ。特に今僕は、優秀な薬剤師を探している。


 ……ここまで言えば、わかるよね?


 エラ、是非とも一緒にロロワ帝国に来てくれないか。王国使節団の薬剤師として。

 あれから二年経った。そろそろエラも薬剤師として、実績を積んでも良い頃だろう? 返信用の封筒も、一応入れておく。


 色良い返事を期待しているよ』


こんにちは、佐倉です。


シンデレラ戦記はこれで完結になります。

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。

楽しんでいただけたでしょうか。

エラたちの生き様が皆様の心の隅に、ちょこっとでも居場所を得ることができたのなら、私は嬉しいです。

作者の私が言うのもどうかと思いますが、エラはずいぶんな茨の道を選んでしまいました。素直にお嫁さんになれば楽な人生なのに。きっとこれからもたくさん苦労するんでしょうね。笑 


何度もお願いして申し訳ないのですが、感想、意見等お待ちしております。書いてくれたら喜びます。とっても喜びます。飛び跳ねます。


また皆様にお会いする日を、心から楽しみにしております。

いつ掲載できるかは未定ですが、次回作もぜひよろしくお願い致します!

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