権力闘争
村の長の通達は商人以外の住民に伝えられた。一日で焼ける分を大きく越えてやりきった。ある者は焼きたてのおいしさに目を開け、毎日ありつけるパンに感謝すらしていた。
当然のことながら目論みが外れたあの店には以前より客足は遠のいている。あの噂然り。パンの入庫然り。
当初の予定を日割りで悪化していく事態に頭を抱えていたが、村の住民は愚かな者と静観していた。
「ミレファン殿。ここはひとつ協業といたしませんか?」
今まで一度しか顔を出さなかったあの店の主が店に入るなりそこそこ大きな声で言い出す。
「お引き取りを願います。それとも、腕ずくでっておっしゃりますかね?」
「なんと血の気の多い店主か!こんな乱暴者と手を組む我々は慈悲のある存在だと思わんかね。」
店へパンをと粉を持ってきた者たちが注視しつつ笑いをこらえている。愉しみの少ない村でこんなにも野次馬が出来る機会が出来るなんて。
「よし。今なら月に焼けるパンの1.1倍の金を払う。だから儂の為に焼け。」
「お断りします。」
「2倍だそう!」
「変わりません。お断りです。」
「ええぃ、5倍だ、文句も無かろう。」
「本当によろしいんですか?」
「かまわん!儂が店主じゃ!」
「では今までの5倍で手を打ちましょう。今すぐ契約書を。」
顔を真っ赤にしたあの店の主は血印を押すと双方が持っていることを確認し帰途についた。
「ミレファンよぉ、うちらはどうすんだ?」
「今まで通り粉を持ってきて下さい。粉まで5倍にする馬鹿じゃ無いでしょう。」
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「何故売れん!ほぼ元の値段で売っているにもかかわらずだぞ!」
毎日のように大量に焼かれたパンは二つの山を作っていた。
「ご、5倍の値段が毎日山のように・・・これが毎日・・・・」
中継する商人も、かつてより減り。パンを求める者もいるのだが、売っても赤字、売らなければもっと赤字となった時限のある商品に、遠く離れた本家から見切られたその商家は、だれも気がつかないうちに夜逃げした事が朝になってわかった。
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商家が無くなり、行商人を呼ぶ為に村の長は遠く旅することが多かった。
少しずつ戻り出す中継地としての価値。空き家となった商店跡はなんと冒険者ギルドの出張所として活用されることが決まった。その展開の早さは舌を巻くほどだった。
出張所の所長は見知った男だった。




