急襲
「もう!酷いですよ生徒会長!」
「蛇苺でいいよ」
鞄を取りに教室へと戻る最中。抗議の声を上げるとなぜか一緒についてきた蛇苺さまはアハハと腹を抱えて笑った。
「意義なしって言ったのは結合ちゃんだよ~」
「う…そっそれはそうですけど…」
議題は5月の運動会設営に移っていたそうで。私は何故か生徒会メンバーと一緒に仕事を割り振られていた。
「しかしなんで睦子さまは私まで」
「睦子は立ってる者なら親でも使うからねぇ。なあなあでやってたらそのうち結合ちゃんも生徒会にされちゃうぞ」
「ぐぬぬ…」
元々、面と向かって「嫌だ」と言えないのが私である。あの真面目な睦子さまにそんな事言えるわけがない。これも全部、私を巻き込んだ蛇苺さまが悪い。
「睦子さまに言ってくださいよ。『結合に仕事振るのは違うんじゃないか』って」
「え~やだよ。結合ちゃん居た方が面白いし」
なんだなんだこの人は。
「巻き込まれたこっちの身にもなってくださいよ。蛇苺さまは面白いかどうかで物事を決めてるんですか?」
蛇苺さまはにっこりと微笑みながら「うん」と返してきた。もう何も言えないよ。
教室へ戻る頃には空も薄暗くなり始めていた。
流石に誰も居ないだろうと思ったが生徒が一人だけ。
「おっかえりー」
「はあ、どうも…」
誰だっけ。着崩した制服と金髪に黒塗りの派手なギャルメイク。流石にクラスメイトにこんなの混じってたら覚えてるはずなんだけど記憶にない。まあとにかくパリピには関わらないに限る。ノリが合わない。
「あー、ツレが居んのね」
謎の生徒は一緒についてきた蛇苺さまを一瞥する。
「せっかくあの邪魔なマシンノイドが居ない時を狙ってきたのに、計画が台無しだよ」
「マシン…何?」
「まあいっかー。一人くらいなら」
「君は誰だい?ウチの生徒じゃないよね」
全校生徒を記憶する蛇苺さまでも知らないらしい。
「うるさい、お前から死ね」
謎の生徒は天井際まで飛び上がると、蛇苺さま目掛けて急降下する。突き出した手刀にはピンクにデコった長い爪が輝いていた。
危ない────
私は声を発する間もなく二人の間に飛び出していた。
ずぷっと。
刃物のようなネイルが制服ごと私の心臓を貫く。
「あらら」
謎の生徒が私からネイルを乱暴に引き抜くと傷口から鮮血が噴き出した。体から力が抜け、よろめく。近くにあった机にしがみつこうとしたが、それすらできずに机ごと床に倒れこんだ。急激に意識が遠のく。切り裂かれた心臓の痛みよりも、
「ゆっ、結合ちゃん!?」
蛇苺さまの悲痛な叫びが身に染みた。
▲謎の生徒




