走馬灯?
こたつ。煎餅。小さい白衣の女。───いつもの夢。
「あー。こうなっちゃったか」
「こうなっちゃったかじゃないですよ」
走馬灯ならもっとましな夢が良かったなあ。
「まさかこんな強硬手段に出るとはね。機関も一枚岩じゃないってとこか」
うんうんと勝手に一人納得する部屋の主。
「あのう、つかぬ事を伺いますが命を二つ持ってたりしません?」
「残念ながら。そんなものあったら便利なんだけどねぇ。というかゆりっぺ、君まだ死んでないから」
「えっ、そうなんですか!?」
確か謎の女子生徒に心臓貫かれた筈では。
「あー、死なない死なない。君があのくらいで死ぬわけないでしょ。まあ、マズい状況ではあるけど」
「どうしろってんです」
「がんばれ」
何をどう頑張ればいいのかが知りたいのだが。
「なぁに、救援を送ってるから最悪何とかなるよ。まぁ君の場合四の五の言っても始まらんようだから。なるようになれ、だ」
主は煎餅を手に取ると、食べるでもなく手の中で弄んだ。
「しかしゆりっぺ。彼女は身を挺して守るような人間だったのかな?」
「彼女…というと蛇苺さまですか。いや守るとかそういうんじゃなくて咄嗟に体が動いたというか」
「そこに愛はあるかい?」
愛。前にもそんな事言ってたな。蛇苺さまの事は嫌いではないが出会ったばかりで好きも嫌いも無い。天才だけど子供っぽくて、ちょっと意地悪で蕎麦が好き。それ以外の感想は無いかもしれない。
「惜しいね、せめて彼女に愛があればすぐにでも何とかなったんだが」
愛…愛ねぇ。
私は炬燵に入ったまま背を倒した。ばふん、とこたつの敷布団が鳴る。天井から古風な電球傘が釣り下がっている。中に入っているのは今では珍しいリング型の蛍光灯だ。
何だか眠くなってきた。夢の中で眠るとはこれいかに。
本当に生きてるのかな、私。




