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葬鐘の国で、わたしは死神に拾われた  作者: わがままな饅頭


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17/21

第17話 村への帰還

 証拠を届けてから三週間後、わたしたちはもう一度、あの村に戻った。


 最後にやり残したことがあったからだ。


 村の広場に、人が集まっていた。聖庁の調査委員会から派遣された役人が、長老ガレオンを取り囲んでいる。村人たちが、その周囲に立って、それを見ていた。


 長老は、年老いたように見えた。三週間前に隙間から見た、あの几帳面な顔が、今は乾いてしぼんでいる。


「ガレオン。あなたに、言いたいことがあります」


 わたしが声をかけると、広場がしんと静まり返った。役人たちが振り返る。村人たちが、ざわめく。


「ミラ……ノクスの、娘?」


「はい。三週間前に死んで、戻ってきました」


 長老は、わたしの瞳を見て、驚いたように一歩退いた。境界人の目は、生者のものとは少し違う。


「あなたが、わたしの名前を選定リストに書いた。そのことは、今更責めません。あなたも、カインに脅されていたのは知っています。でも、一つだけ言わせてください」


「……何だ」


「エルのことを、覚えていますか。三年前に死んだ、十三歳の子のことを」


 長老の顔が、かすかに歪んだ。


「あの子は、あなたたちの選定で死んだ。わたしも、同じように死にました。でも、わたしには戻ってくる手段があった。エルには、なかった。その差を、覚えておいてください。エルは今も、この村の墓地にいます。名前は、エルです。覚えてください」


 広場は、静寂に包まれていた。


「これから先、この村がどうなるかは、あなたたちが決めることです。でも、もう二度と、誰かの命を取引に使わないでほしいと、それだけ言いたかった」


 わたしはそう言って、広場を後にした。


 ロウが、隣を歩きながら言った。


「よく言えたな」


「怒鳴るかと思ってたんですけど、なんか違いました。責めるより、伝える方が、自分には合っていた気がして」


「そうだな」


「ロウは、わたしが怒鳴ると思ってましたか」


「五分五分だった」


「正直だ」


 村はずれで、思いがけない人物が待っていた。父だった。


「……ミラ」


「お父さん」


「広場の、お前の話を……遠くから、聞いていた」


 父の顔は、三週間前より少しだけましになっていた。まだ目は落ちくぼんでいるが、立っている。


「エルの名前、覚えていますか」


「……覚えている」


「ありがとうございます」


 それだけ言って、わたしは歩き出した。振り返らなかった。振り返れなかったのではなく、振り返る必要がもうないと思えたから。

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