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第8話 初めての空間魔術と律儀な盗賊、いや教団


「今にも怪物が出てきそうな雰囲気だ」


 僕は階段を一歩一歩降りていた。後ろを振り返っても、もう入り口は見えない。見えるのは蝋燭に照らされ薄暗く終わりが見えないほど長く続く階段だけ。


「どこまで続くんだろ」


 もうすでに30分は経っただろう。距離としたら6キロくらいは歩いただろうか。


 ただまだ終わりが見えない。いい加減つまらなくなってきた。と、少しがっかりしていると僕に気づきがあった。


 ――空間が歪んでいる。


 距離というものが曲げられているのだろう。これだけ進んでも全然終わりが見えないわけだ。


 空間を操るのはそうとうなレベルの高い魔術。何十人もの上級魔術師が一日かけてやるレベルと聞いたことがある。


 本当に魔術は面白い。空間まで操れるとは本当に神様見たいな力だ。


 空間を操れれば、瞬間移動や別空間作ったりもできるだろうし、風属性魔術で浮いてるのをもっと簡単に飛べるだろう。


 やっぱ空間魔術試すしかないよな。この機会に空間魔術を攻略するため、階段に施された空間魔術を観察し参考した。このままじゃ何日経っても終わりに辿り着かないからね。大体の理屈はわかった。ほぼ直感に近いけどまぁわかったんだから大して変わらない。


「空間圧縮魔術」


 手をかざす。魔力により現実編集が行われた。


 すると空間が捩れ音が消える。距離という感覚が崩れ方向感覚すら失う。


 歪みが落ち着くと目の前には扉があった。振り返ると入り口がある。


「初めて空間に干渉する魔術使ったけど成功だ。――だが頭が痛い」


 流石に空間に干渉する魔術となると負荷が大きすぎる。子供の体ではこれほどの魔術は今日で後一回できるかどうかだ。


「だけどこれで進める。待っていろよ」


 扉を開けた。――そこは何かの研究室だった。机の上にはたくさんの書類と、何かの装置。


 書類には、因子がどうので魔力になんたらで魂がなんとか。ちょっと何書いてあるかわからない。それにほとんどが知らない文字で書かれている。


「特に何もなさそうだし、先進むか」


 なんか難しいことがいっぱい書いてあっただけで面白くなかったから先に進むことにした。


 長い廊下に出た。牢獄が何個もあり死体が大量に放置されている。


 放置された死体からは鼻を刺すきつい臭いが漂っていた。でもまだあの異質な魔力はまだ先。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 私は、なんのために。なぜ今何もできない。私は――。


「誰か……」


 そんな願い叶わない。わかってる。けど希望を持たずにはいられない。


 どうすればいい。どうすればこの状況を覆せる。


 ……不可能か。所詮私はただの少女。希望を持ったところでだ。


「……絶対に許さない」


 憎かった。許せない。絶対に許さない。私に強く醜い憎悪が生まれていた。


「その覚悟受け取ったぞ」


 突如として何処からか声が聞こえる。


「誰ッ!」


 私はあたりを見渡すが誰もいない。なんだったのだろう。


 ――実験室。


 男は資料と睨めっこをし深く考え込んでいた。


「……やはり。試す必要がある」


 その瞬間。ドアが勢いよくノックされ、部下が駆け寄ってくる。


「マリック様、侵入者です!」


 それはこの施設に侵入した不届きものがいるという報告だった。


「なに?この地下に入るのは色々な手順を踏まないと入れないはずだ。相当な手練れというわけか」


「いかがしますか」


「私が行く」


 男は報告を受け、足早に歩き出す。


「この俺は騎士として隊長まで上り詰めた実力者だ。せいぜい怯えて待ってろよ侵入者」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「開けたところに出たな」


 僕はしばらく探索してると、筒状の広い場所に出た。


「闘技場のような見た目してるけど、こんな地下の監禁場みたいな施設に闘技場?でもいいねここ」


 ここなら充分に戦える、けれど今のところまだ死体しか見ていない。敵はどこだ、戦う相手がいなければ意味がない。


 僕はあたりを見回した。


 そして、薄暗い闘技場の真ん中に立ち、手をポケットに入れ目をつぶった。こうしていたらきっと現れてくれるはずだ。


 ……ほら。


 しばらく待っていると一つ気配を感じた。隠してるようだけど僕にはバレバレだ。


「来い!」


 その言葉を合図に燃え上がる火の玉が投げられた。僕めがけて飛んでくる火の玉は鈍い音を立てて近づいてくる。


 今だ。


 僕はタイミングを合わせその火の球を片手で振り払う。


 魔術とは言っても、結局のところ最後は現象として物理的だ。肉体で対処可能なのだ。


 すると、2階の観客席らしき場所に1人の男が居た。目が合うとこちらに歩みを進め2階から下へ綺麗に着地する。


 そして男は言った。


「貴様が侵入者か。余興は楽しんでくれたかな?」


「余興?あの程度が余興だと?笑わせる。余興にもならない程度の魔術など僕の敵ではない。さっさと始めようか」


「待て、焦るな。少し話をしようじゃないか」


「話?」


「まず貴様。何が目的だ」


「なに、ただの遊びだよ」


「遊び?ほざく。遊びでここへなど来るわけがないだろう。それに来ることすらできないはずだ」


 そう思うのも無理はないのだろう。ただ。


「常識に囚われるなど哀れな」


 男はその言葉を深く考える。


「そうか。確かに決めつけていたな。ただどうやってここに入った。ここに入るには入り口の呪文と一日経っても辿り着かない階段があったはずだ」


「簡単さ、僕の頭脳があればね」


「……それほど優秀というわけか」


 それは当たり前だ。僕が優秀じゃないわけがないだろう。


「僕からも質問させてもらうよ」


「あぁ構わない。俺は律儀だからな」


 マリックは自分で自分を律儀と言った。相当な精神だ。


「『龍の血』について知っているか?」


 僕が言うと、男は顔を顰めて言った。


「ッ!なぜその名前を知っている。それは教団のものしか知らないはずだ」


 教団やはり何かの組織なのか。


「少し前にその龍の血を取り込んだ男と戦った」


「……まさか貴様が通りすがりの魔術師!」


 なぜ知っているのかは知らないがあのマッチョ君もその教団のものなのだろう。


「正解さ」


「数時間前ほどに報告を受けていた。あの『剛拳』を倒したやつが通りすがりの魔術師と名乗ったと」


 剛拳それはあのマッチョ君の呼び名だろう。


「あの場にはその剛拳しかいなかったはずだがなぜ知っている?」


「我々の施設には監視石があるのだ。だから情報はすぐに伝わる」


 監視石、監視カメラみたいなものなのかな。


「本当に君律儀だね。敵にペラペラと情報を吐いて。こちらとしては嬉しいけど」


 すると男は言った。


「大丈夫だ。ここで貴様は死ぬことになるのだから」


 男は微笑む。面白い奴じゃないか。


「ほう。僕を殺すことができるとでも?」


「貴様はここに辿り着けるほどの実力者なのだろうが、我々原罪教には敵わない」


「原罪教か」


 それが教団の名。なかなかのネーミングセンス。


「いずれ世界を支配する強大な組織だ」


「ならば、刃向かおう。例え世界を支配しようと僕がそれ以上の力で潰してやろう」


「なに?そんなことできるとでも言うのか?そんなこと誰にもできないのだ。不可能だ」

 

 不可能か。その可能性を自分でふさいでしまえば、不可能のままだろう。


「不可能?笑わせる。僕に不可能などというものはない」


「不可能がないだと?ほざくのもいい加減にしろよ」


 男は僕を睨みつける。


「理解はしなくていい。僕を理解しようなど夢物語だ」


 僕は瞬きしたその一瞬で黒のスーツに着替えた。


「さて、お話はここまでだ」


「……いいだろう。ならばかかってこい。俺はあの剛拳より遥かに強い!」


 声を荒げて男は言った。僕は不敵な笑みを浮かべ格好を付けて言う。


「果たして君は僕を楽しませれるかな」

第八話を最後まで読んでいただきありがとうございました。ブックマークと評価をよろしくお願いします!

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