第七話 初めての友達(本物)
僕はベランダで夜風にあたっていた。
僕はパーティーの素晴らしさを改めて知った。好きなものをお腹いっぱい食べれて、ついでにお金も手に入る。なんて素晴らしいのだろう。次のパーティーが楽しみだが、次は何年後になることか。パーティーはそう頻繁には開催されない。手間もお金もかかるからだ。
賑やかな会場からも離れ、外の夜はとても静かで心地よい。
「1人月光に照らされて夜風にあたる。とてもいいシチュエーションだ」
やっぱり月はいいな。どこか惹かれてしまう。人の宿命なのだろう。
基本的に月が嫌いな人などごく僅か。あれほど美しいのだから皆見惚れてしまうのも無理はない。
「……なにか違和感があるな。なんだ?魔力……か?」
この会場の地下だろうか。何か異質な魔力を感じる。
――これはイベント発生の予感。
僕は意識を向け気配を探った。
「10人ほど地下にいるな」
凄く多いとも少ないとも言えない数だが今はたいして問題ではない。
「今宵は僕が血のパーティーを開催しよう」
片手のワイングラスに入ったぶどうジュースを僕は飲み干した。
すると月が照らす静寂のベランダに1人の少女が顔を出した。
その少女は黒の髪を下ろしたスカイブルーの目をした可愛らしい見た目をしている。
「……あら、先客がいたのね。横失礼していい?」
凛とした声はベランダに響く。
「構わないよ」
平凡な答えを返す。
「外は空気が良くて涼しいですわね」
彼女は言った。夜に浸りながらも僕は共感をする。
「会場は賑やかすぎるからここはちょうど良い」
「そうですね」
彼女も落ち着いた様子で答えた。
「君はどうしてここへ?」
会話を凌ぐために言った、特に意味も重要性もない質問。
「人が苦手で酔ってしまったの。だから少し夜風にあたろうと思って」
しかし彼女は丁寧に完璧に答えてくれる。
そして少女の綺麗なスカイブルーの瞳を月光が照らす。
「そうなんだ」
至って普通の返しだ。
「あなたはどうして?」
彼女は僕を見据えた。
「僕も似たような感じだよ」
「そうなんですね。ねぇ、急なんだけど一つお願いがあるのだけど聞いてくれない?」
「内容によるかな」
「……私の友達になって欲しいの」
出会って数分の男に友達になろうと提案。とても珍しい人か、もしくは……。
「友達か。まぁ別にいいよ」
友達になっても害はないだろう。だから僕は気楽に了承した。
「本当?!ありがとう。私、友達ができたことなかったから凄く嬉しいわ!そう言えばあなた名前はなんて言うの?」
その少女は満面の笑みを浮かべて言った。
「ジンだよ」
「ジン、いい名前ね。私はリマというわ」
「リマね、わかった」
リマは嬉しそうにこちらを見ている。
よくよく見てみるとドレスの生地は光沢があり、装飾もそこまで派手ではないが趣がある。相当偉い貴族の娘なのだろう。
「よろしくね。ジン」
「よろしく」
こうして僕はリマと友達になった。
――友達。どう言うものなんだろうか。今まで友達というものを作ったことがない。それは無駄な付き合いをしたくなかったからだ。
いつも通りならこの誘いを断ってもよかったけど、僕のイベント発生の直感が反応した。
「私そろそろ戻るわね。また会いましょ」
「じゃあね。また」
そう言うと、リマは笑みを浮かべた。
にしても、ずいぶんと不思議な子だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そこは薄暗い地下の牢獄だった。
「……私は……」
1人目を覚ます。それは銀髪の黄緑がかった金眼の少女だった。少女は鎖で繋げられ身動きを取れないようにされている。
「目覚めたようだな」
1人の男の声が牢獄に響く。騎士に近いがモノトーンな服装をした1人のスラットした男が立っていた。
「ッ!出して!ここから出して!」
「うるさい。黙れ」
男は少女の頬を叩く。少女の頬は赤くジリジリと少し腫れた。
「よく聞け。今からお前に質問をする。答えなければまた痛い目を見てもらう」
少女に脅すように言った。少なくとも従えば命を奪われることはないだろうと少女は考え顔色を伺いながら答える。
「わかったわ」
「ならまず一つ目の質問だ。お前は意識が飛ぶことがよくあったか?」
奇妙な質問を問いかけだ。少女は少し迷ったように考えてから言った。
「……よくあったわけではないわ。けれど一年に数回ほどあった」
少女は素直に答えた。男は考え事をしているのか顔が険しい。
「次の質問だ。夢で特定の存在、例えるならツノと翼が生えた怪物……などを何度も見たことがあるか?」
またしても奇妙な質問をした。ただこれには見覚えがあったのか、少女は驚いた顔をしている。
「……あるわ」
「そうか。やはりお前は持っているようだな」
「持っている?」
それがなんなのか少女にはよくわからない。わかるものでもない。
「わからなくていい。お前はもうすこし寝ていろ」
「まって!私のお母さんは!」
それは少女にとって命に変えても良いほどに重要なことだった。
「あぁ、お前と一緒にいた女か。そこにいるだろう」
男は牢獄の外にある、十字架を指差した。
「……ッ!」
そこには十字架にかけられた女性の姿があった。首は切れ、指がなく、片目をくり抜かれ、お腹から内臓が少し見えている。
こんな母親の無惨な姿を見てまだ10歳程度の少女が耐えれるものではない。
「まッ……て……おか……や……やだ……やだ、お母さん、そんな、嘘だ」
少女は苦し紛れにすこしの笑顔を見せた。現実を受け入れられないのだろう。ただそんな少女を気にもせず男は言った。
「あれがお前のお母さんだ。娘を返せとうるさかったからしつけてやったが、すぐに力尽きてしまった。お前のお母さんは貧弱だな」
醜い顔をしている男は少女にとって怪物以外の何者でもなかった。
「嘘よ。お母さんは……」
受け入れられないそれが至って普通だ。
「いい加減現実をみろ。あれがお前のお母さんだ」
男が厳しく少女に現実を投げつける。
「でもだって……お母さんはいつも明るくて元気で優しくてあんな顔しない……だから……違うの。あれは……あれは――ッ」
少女は過呼吸になり十字架にかけられた女性から目を離せなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
僕は地下の入り口を探していた。
会場の建物内や庭など歩き回っているけどなかなか見つからない。くらい廊下や、庭の隅、階段の裏や、床。本当に色々探したけど見つからない。
もう諦めて強引に行こうかなとしていた時。僕は庭の隅の木の間に何かを見つけた。
「なんだこれ」
そこにはヤギのような顔とツノに翼と尻尾が生えた人型の像がたっていた。それに触れようとすると、パチパチと魔力が反発する。
「これ、入り口の鍵的な役目な気がする」
僕はそう考え、とりあえずその像に魔力を流してみた。
結果は特に変化なし。流石に単純すぎか。
次は反発を押し切り無理やり触ってみた。
これも特に変化なし。ゴリ押しも無理と。
「んー。どうしたら開くかな」
頭をフル回転し考えた結果辿り着いたのは、呪文。こう言うのは呪文を唱えることで開くのが鉄則。
「じゃあまず、オンマリシエソワカ」
……。摩利支天は無理らしい。
「ノウマクサンマンダバザラダンカン」
……。不動明王も無理だ。
「なら、オンバザラダトバン」
……。あの大日如来でも無理。
「そりゃ無理か。地球の呪文というか真言だしな」
ただ異世界の呪文なんて僕が知っているわけがない。
もうなんか適当でいいか。ここは定番の
「ヒラケゴマ」
流石にこれでは開かないだろう。僕は諦めようとしたその時。
ドォドォドォォォ。と床が割れて石の階段が顔を出した。
「開くんかい」
その階段は綺麗で、まだ作られたばかりのように見える。
早速僕はルンルンな気分で不気味な階段を降りて行った。
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