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第5話 龍の血?なんだそれ格好良い

 男は遺跡の秘密通路を走っていた。


「ハァハァハァ、あれさえあれば!俺は!」


 人一人分しかない通路を無理やり走っていくと、目の前には木の扉があった。


 古びた木の扉は持ち手がなく、男は拳でこじ開ける。


 そこは古い書や実験道具、ポーションなどが散らかった部屋だった。男はその中から机に置かれた、比較的新しく、オークの木箱に綺麗な金の装飾がされた箱を開ける。


 中には、豆粒程度の禍々しいほどのエネルギーが入った紫の結晶。


 男はそれを壊さないように丁寧に持ち上げ、口に放り込む。


 ――パリン。


「アアアァァァァァァア!!」


 体から紫の魔力が稲妻のように体から暴れ出ている。男はみるみる体が大きくなり魔力量も以前とは桁違いになった。


「ハッハッハッ、これが龍の血の力!想像以上だ!」


 男は笑った。


 が、扉の向こうから足音が近づく。


「……来たか」


 そこには黒いスーツを着た、奴が立っている。


「ハッハッハッ、今の俺は最強だ!おまえごときが敵うと思うなよ」


 僕は表情を一切変えず、ただ男を見つめたまま歩み寄る。


「この俺を前に喋ることすら出来ないか。ならこちらから行くぞぉ!」


 男が踏み込むと、後ろの壁が吹き飛び、窪みを作る。暴力的までの速度。しかし、僕はその一振りといとも簡単に片手で握った剣で止めた。その瞬間、衝撃波で、部屋全体を崩落させる。


「これでも耐えるか。認めようお前は確かに強い!だがこれならどうだ!」


 男は剣を捨て、指を一つひとつ丁寧に折り畳み拳を作る。そこに膨大な魔力を込めると紫の稲妻が走り、大気を震わせた。

 

 その拳を体全体を使い重心移動で家が簡単に吹き飛ぶほどの威力の殴りを入れた。


 僕はそれを剣で防御するが、通路を破壊しながら部屋まで飛ばされる。


 すかさず男も後を追い目の前に現れた。それと同時にに腕に込めた魔力を爆発させ拳を入れる。それはまるで隕石の如く圧倒的な重さがあった。


 僕は地面に叩きつけられ、大きくヒビをいれた。


「なんだ?これで終わりか?」


 男が言った。


「これからだよ」


 僕はゆっくりと立ち上がり、黒いスーツについた砂をはらう。


「ッ!これでも無傷か」


「気にするな」


 僕は手をパンッ!と叩く。


 ――次の瞬間。男は宙を逆さまに浮いていた。


 は?何が起きた?今の一瞬で、俺はどうなったんだ?


 男は頭の中は『?』で埋め尽くされる。


 これは魔術でもない。ただ男の足を蹴り上げただけ。手を叩いたのはリズムを掴むためだ。


 リズムは闘いにおいてとても重要。攻撃のスピードど繰り出す技の速さ、足の運び。その全てに影響してくる。


 ――そして僕は逆さになった男の背中を蹴った。


「グァッ!」


 男は壁にぶつかり砂埃をかぶる。


 一歩、二歩。そして三歩目。


 ――その瞬間。


「ガバッ!」


 男の胸には剣が刺さっていた。自然すぎて、男は刺されたことに気づくことすら遅れる。


「なんッ、なんだ……お前、は」


「言っただろう通りすがりの魔術師だと」


「ハッ、そんな嘘俺に通じるとでも思ったか?」


「嘘と思うならそれでいい」


 男はだんだんと意識が遠のいていく。体はボロボロで動かせもしない。


「あぁぁ……リリア……」


 ごめんな。リリア、父さんもうお前には会えない。


 俺が……俺がこんなことを起こさなければ。


 愛する娘よ。どうか悲しまないでくれ。俺はずっとお前、の……。


 ――さて、終わったな。色々破壊しまくったけど、まぁ大丈夫だろう。


 今回はあえて、攻撃を受けてみたがすごくいい演出ができた。が、100点満点中60点だ。まだまだだ。


 そういえば、情報を名前しか聞き出せてないな。しくじった。


 あっ、でもあの男龍の血とか言ってたよな。龍の血か、果たして……。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ペルソナ様!」


 静かな月明かりが照らしだす部屋で1人の男が言った。


「なんだ」


 ペルソナと呼ばれた男は威厳のある圧を発している。


「バーナムの反応が途絶えました」


 恐れながらも報告をした。


「バーナム……あの古代遺跡のマッチョ君だっけか?」


「マッチョ君?」


 口が滑って言葉を濁す。


「いや、なんでもない」


 バーナムね、やたら研究に熱心な子だった。娘さんがいたらしいし可哀想に。


 僕は命令を出した。至ってシンプル。


「調べておけ」


 その一言だけだ。


「はい!」


 男は威勢のいい返事をして部屋を後にした。


 1人静まり返った部屋。僕は月を眺めた。


 はぁ、面倒くさいな。なんで僕はこんなことしてるんだろ。本当はこんなことしたくないのに。こんな僕にしたのは、あの方のせいだ。


「パーティーか、はやく終わってくれ。僕はもう帰りたいんだ」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 ふっ、今宵も月が綺麗だ。グレーのスーツは完璧。今夜は楽しくなりそうだ。


「ジン、珍しく楽しそうだね」

 

 兄グリルが言った。そこまで顔に出てただろうか。


「そうですか?気のせいですよ」


「そう?」


「そうですよ」


 馬車には僕と兄そして父の3人だ。母と姉はお留守番。


「やだぁ、いくのぉ!」


「ちょっとマリカ、今日は我慢しなさい。お母さんと今日はお留守番しよ?」


「やだ!絶対行くの!絶対に行く!ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ……」


「もう……」


 出発前まで、姉は12にもなって駄々を捏ね回していた。無理やりついていこうとしているのを数人のメイドに力ずくで家に引き戻して、なんとかお留守番させることに成功した。大変だった。姉は無駄に魔力や素質が高いから困ったもんだ。


 僕が1時間前のことを思い出していたら父が言った。


「2人ともしっかりと礼儀を重んじよ。決して失礼をはたらくな。いいか?」


「はい。お父様」


「わかったよお父さん」


「それと、今日のパーティー流されないように気をつけなさい」


「流されないように?」


「パーティーには、婚約者を求めてくるものもいる。同じ伯爵の者には特に気をつけよ」


「気をつけます」


 婚約者ねぇ。まぁ兄は15歳。この世界だと15歳で婚約が認められる。日本だとまだ高校一年生とかなのにな。世界の差はすごい。


「ジンもだぞ」


「え?」


「まだ婚約はできずとも許婚として目をつけられる」


 まじかよ、でもこんな僕を狙う奴なんかいないだろ。最悪空気に溶け込もう。


「気をつけます」

第五話を読んでいただきありがとうございました。

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