第四話 遺跡のマッチョ!
「起きなさい!」
朝早くから、私は団員達を起こしていた。昨日のこともあったからか、みんな疲れているようだ。
「王都に戻るわよ」
「え?」
「当然よ。昨日のことすぐにでも報告しないといけないの」
「でもまた奴らが街に出たら」
「昨日のことを忘れたの?私達では防げない。癪だけど他の者たちに頼るしか」
「……そうですね」
私達は拠点を片づけ、住民に挨拶をしてすぐに街を出た。
帰りは街の人が用意してくれた、馬車を使って帰ることに。
団員達は賑やかに会話を弾ませている。少しは恐怖が和らいでるようで良かった。
私はしばらく馬車に揺られていると、昨日よく眠れなかったからか瞼が重くなってきた。
――そこで私の意識は途切れた。
目覚めたら、そこはもう活気溢れる王都だった。
「さぁ、行きましょう」
「はい!」
馬車を運転してくれた人に騎士としての礼儀をわきまえお礼を言ってから、私達は城へ向かった。
――そこは重い空気を纏う部屋だった。
私はノックをしドアを開ける。
豪華な装飾を施した椅子に座っているのは国王、ラース・グリム。金髪に赤目の髭を少しはやした、まさに国王という見た目だ。
「失礼します」
国王が私の目を見つめる。それはとても鋭く重たい。
「報告を聞こう」
「はい」
私は国王陛下の威圧に耐えながら昨日の出来事について話し始める。
「過日、深夜に私どもはあの辺境の街へと到着いたしました。しかしながら、現地にて魔力中毒により怪物と化した存在を4体目撃するに至りました。私どもは直ちにこれの討伐を試みたものの、敵の力量は凄まじく、辛うじて1体を討ち取ったものの、全滅の危機に瀕する状況となりました。その窮地の中、突如として怪物の首が跳ね飛び、眼前には黒いスーツに黒い仮面を纏った謎の男が立っておりました。その者は自らを「通りすがりの魔術師」と言い残し、瞬く間にいずこかへと去っていきました。」
「魔力中毒だど?」
「はい。症状からして確かと」
「まさか、そんなことが」
「魔力中毒は知っての通り自然に起こることが滅多にないものです。その上で4人も出たとなると裏になんらかの存在がいることは確実でしょう」
「――そうか。その通りすがりの魔術師とやらの足取りは掴めているのか?」
「いえ。あの時は空に飛び去って行ったため追うことがだきず……」
「うむ。報告ご苦労であった。下がってよい」
「はッ」
私は去り際に一礼をし、静かに立ち去った。
国王は窓の外を眺めていた。
「通りすがりの魔術師か――。魔力中毒を一瞬で倒すほどの実力……まさかな」
新しい時代の幕は上がったようだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――僕は今準備をしている。なんの準備かというと、今夜、他の貴族とパーティーをするらしい。
なんで僕もと思ったが、何か面白そうな予感がしたから行くことにした。それにそこには国王とか来るらしい。まぁ会う気はないけど。
服、それは何をするにもとても大事な役割を持つ。時と場にあった服装にする事で、まとまりを持たせ最高に格好いいものとなる。
と言う事で今日着ていく服を大して多くもない服の中から最適な選択をする必要がある。
ここは無難にスーツか、黒はいつもきてるしせっかくならもっと違うのがいいよな。同じものだけじゃ飽きてしまうのだ。
悩んで選んだ結果。選んだのはグレーの生地にザラザラとした模様が入った異世界式スーツだ。
これで朝の準備は完璧だな。
――そしてお昼。
僕は昨日の騎士達のことが気になったので廊下で見かけた父に声をかけた。
「父さん。街に騎士が来てたみたいだけど何か知ってる?」
「あぁ、最近街に魔物が迷い込むことが増えて王都から派遣された人たちだ。ただ昨日魔力中毒が出たらしい。それで今は王都に戻ってるそうだ。お前も魔力中毒や魔物には気をつけるんだぞ」
「わかったよ父さん」
あれは王都の騎士だったのか。とてもいい引き立て役だった。
そういえば魔力中毒を起こした犯人がまだ見つかってなかったよな。あの時は特に気にしてなかったけど、確か山の方に変な気配あった気がするんだよな。その時はただ魔物だろと思って見逃してたけど行ってみるか。
ということで、まだパーティーまで時間が全然余ってるのですぐに家を出て近くの山へ向かった。
僕は空を飛びながら木々が生い茂る山を観察する。
「ここか」
そこは岩肌が出て、草木が周りに一切生えていない場所だった。
まだ変な気配が残っている。僕が山に降り立つと、淀んだ空気が僕を出迎えた。
「――遺跡だな。ただもう相当古い」
目の前にはボロボロになった石の建物がある。
一応周りを見渡して人がいない事を確認してから中へ入る。
中は暗く、今にも崩れ落ちそうなほどボロボロで、砂や埃が降ってくる。鼻がムズムズするが今は我慢だ。
――しばらく歩くと真っ暗な遺跡の中に一つの魔石ランプがついている。そこの扉は分厚く頑丈に出来ていた。
僕はドアを開く。そこには檻があり、その中には肉の塊のような『何か』が捕えられている。ただ生きてはいないようだ。
他には……。
あたりを見渡して何かないかと探していたその時。
背後から突如として音もなく降りかかるは、一本の剣。
が、僕は右手で受け止めた。後ろを振り向くと筋肉質なマッチョが険しい顔をして立っていた。
「もう少し気配を消せ」
「貴様、何者だ」
「ただの通りすがりの魔術師だよ」
「魔術師が俺の剣を止めたというのか?」
「そうだね」
「ほざく。まぁいい。ここに来てしまったことをすぐに後悔するだろう。せいぜい足掻いてみよ!」
「それはどうかな」
そして一瞬の静寂。
空気が揺れ男が動き出そうとした時。
僕の手からは魔術で生成した銀の触手が無慈悲に男の腕を貫いていた。あまりの速さに男は対応も出来ない。
「あぁぁあ!ッ、少しはやるようだ。ただ俺はその程度では倒せない!いくぞぉお!」
腕を貫かれたのにも関わらず、無理やり体を動かす。
男の剣は岩のように重い。地面にヒビを入れるほどだ。けれどそれだけ。僕は音を立てず自然に剣を鞘からゆっくり抜いた。
男は一度後退し、再び踏み込み衝撃波で建物がボロボロと一部崩れる。鈍い音をたてて僕と男は剣を交えた。一撃一撃重くそして早い。
衝撃波が飛び交い、斬撃が飛び交う。
――確かに強い。魔力量だけで言ったら僕よりもある。けれど全く使えていない。それに技も未熟だ。
「そんな、か弱い体で俺に勝てると思うなよ!」
男は一層力を入れ、剣が折れそうなほど激しく振るう。一歩また一歩と僕は進む。それに合わせて男が真っ直ぐ振り下ろした剣に沿うように滑らせ、受け流す。
「君、全然ダメだね」
「ッ何!」
「もう少し上手く魔力を扱え」
「黙れ小僧。お前に何がわかる!知ったかぶりはよせ!」
男から大量の魔力が溢れ出し、静電気のようにパチパチと空気中を魔力が流れる。
速度、力は凄まじく大気を震わせるほど。
――剣が耐えれないか。
僕が一歩。たった一歩だけ足をゆっくり踏み出す。その瞬間、存在、気配、音それら全てが一瞬にして消え失せる。
ジンは男の後に周り込み、剣を男の首に優しく丁寧に添えた。
「お前ッ」
男はすぐに後ろを振り向こうとしたが、剣を突きつけられていることに気づいたのかすぐに顔を前に戻した。
「ねぇ、君名前なんていうの?」
「答えるわけがないだろう!」
僕は剣で首に押し当て細く薄い切り傷をつくる。
「ッ!……バーナム・ゴードンだ」
「バーナム君、君は何が目的だ?」
「答えるとでもぉ!」
貯めた魔力を解放し凄まじい衝撃波で僕は飛ばされるが体勢を立て直し静かに着地する。
貯めて解放はいい選択肢だが、勿体無いな。もっと圧縮と出力の調整をしていれば僕に傷をつけられただろう。
僕は足音を静まり返った部屋に響かせた。
「ッくるな!それ以上近づくとお前の命はない!」
忠告を無視して僕はただ近づいた。
「フッ、バカだなお前。俺が忠告してやったのになぁ!」
その瞬間。地面が爆発し大きな音とともに、破片や砂が舞い、視界が奪われた。
僕は剣を一振りし砂埃を薙ぎ払う。
――そこに男の姿はなく、あるのは人一人分の穴だけだった。
「逃げたか」
僕は不敵な笑みを浮かべて言った。
「もう少し遊んでやろう」
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