死んだフリも面白いよね
「……んん」
リアスは目を覚ました。何か夢を見ていた気がする。
「ジン!ジン!」
「んぁ」
「大丈夫?」
「大丈夫だ」
私は……私?いや僕だ。あの記憶はなんだったんだ?英雄の記憶?
「何が起こったのかしら」
「リアスは覚えてる?」
「え?何が?」
「……いや、いい」
僕達は部屋を後にした。
あの結晶は悪魔だったのか。
「……」
「どうかしたの?ジン。顔が怖いわよ?」
「考え事してただけだよ」
「そう」
「……帰ろうか」
「そうね」
古びた城を出て出口を探して歩く。
「どうしようか……」
「最悪壊して進むしか……」
「師匠!やっちゃってください!」
「えっ?えっ?わ、わかったわ!」
「冗談です」
「もう、焦ったじゃない」
すると広い洞窟の中で声が聞こえた。
「君たちこんなところで何をしているんだい?」
「え?」
当然の反応だ。リアスとジンの2人だけ。他に誰もいないその空間で声が聞こえたのだから驚くのも無理はない。
「君たちはリアス君とジン君だったかな?」
「なんで私たちの名前をッ」
僕はその男に向かって歩き出した。
「お久しぶりですね。とはいっても僕が一方的に見ただけですけどね。副理事長」
「ッ、副理事長?!なんでここに」
「覚えてくれていたのか、私は嬉しいよ」
「こちらこそ、僕達の名前を覚えていてくれて嬉しいですよ」
「君達は何故ここに?」
「ダンジョンに潜っていたら、ここに飛ばされてしまいましてね」
「そうか。災難だったね。あのお城の中には入ったのかい?」
「えぇ、入りましたよ」
「何か見たのかね?」
「それはどうでしょう」
その瞬間瞬きをする間もなく、副理事長ゼイガルニクの剣は僕の目の前にあった。
「ほう。いい腕をしているなジン君」
「それはどうも」
ギリギリで僕の剣がゼイガルニクの剣を止めていた。
「副理事長何をッ!それになんですか、何故2人はそんな顔をしているんですか」
僕と副理事長は互いを見つめる。
「あぁ、そうだな、『楽しい』のかもしれないな」
「楽しい?どういうことですか」
「ジン君が面白いということだよ」
「わかりませんけど、ジンを攻撃するのは辞めてください」
「すまないがそれは無理だ」
「何故です」
「知る必要はない。君達は此処にいる時点でもう帰る未来はないのだから」
「その気なら私は抵抗させてもらいますからね」
「いいぞ。かかってこい」
「闇属性魔術、『陰之手』」
リアスから黒い触手のようなものがゼイガルニクに向かって鋭く早く伸びる。
「ほう、闇属性か」
が、ゼイガルニクの剣が全て切り落としてしまう。
「クッ、これなら『黒火球』」
闇属性と火属性の混合か。リアス結構やるな。
「面白い」
「舐めてるようじゃ防げないわよ!」
その球は反発と吸収の矛盾する性質が合わさった、高密度高質量の黒い炎だ。これに何の対策もなしに触れれば肉が溶け、消えるだろう。
だが、ゼイガルニクは剣で全て切った。
「これでも私は剣を長年握ってますからね。その程度なら余裕なのですよ」
確かにすごいと言えるものだ。まだ剣技が洗練され始める前からこのゼイガルニクという男は鍛錬を積んでいたのだろう。そう感じさせる無駄のない動き、効率的な魔力の使い方。尊敬にあたいする。
「次はこちらから行きましょう」
ちょっとまずい。リアスは魔術は得意だが運動神経は全然ない、だから相性は最悪なのだ。
「リアス逃げて!」
「えっ」
目で追えないほどの速度でリアスに近づく。速いな。僕じゃなきゃ見えないね。
「グハァッ!」
僕の胸にはゼイガルニクの剣が刺さっていた。
「えっ、ジン、何で――」
今回は本物の血を吐き出した。ついでに魔力で多めに大袈裟にだしている。
痛くないのかって?めちゃくちゃ痛い。ただ痛いだけだから大丈夫だ。
「庇うか。ジン君はお人好しだね」
剣が抜かれて、さらに血が出る。すこしグロい。自分の体の内側を見ることなんて普段ないから貴重な体験だ。ただほぼ血で肉とか見えないな。ちょっと残念。
意識を体に向けると熱く、痛みが痛みとして感じきれない。そしてだんだんと感覚が鋭くなっていく。
僕はその場に倒れ、血の水溜りを作る。
「……待って。お願いだから待ってよ。ねぇジン、ねぇってば。ジン!」
私が不甲斐ないせいで、私が弱いせいで、ジンが、ジンがこんな目に、師匠失格だ。
「やめて。お願いだからジン。冗談って笑ってよ。やだよ、ジン。1人にしないでよ……」
私は昔から1人たった。魔術に才があったからか、周りの人はその才だけを見て、私のことを見てはくれなかった。その才に同世代の子は嫉妬したのだろう。いつしか虐められるのが当たり前になっていた。
私はハーフエルフで近づいてくる男は数多くいた。そのせいか女性達からは常に悪口と行きすぎた虐めが毎日行われた。
王都にきて魔術学校に入学してそんな生活から離れられたと思ったけど、元々内気で人見知りの私は、友達や話せる子すらできなかった。
そんな中でジンだけが、私に体目当てや才能じゃなく、1人の人として師匠とまでいってくれた。まるで神様の様な、救いの光そのものだった。
「ねぇジン行かないで!まだ私はジンに何も返せてない!」
その瞬間ジンの手が私の頬に触れる。
「あぁ、よかった。……そんな顔しないで、いつもの、あの笑顔でいてくれないか?ゲホッ」
ジンは笑顔だった。
「それ以外喋らないでッまだ助かるかもしれないから、だから、諦めないで」
「自分のことは自分が1番よくわかってるんだ」
「嘘よ。嘘。まだ助かるはずなの」
「いいんだ。最後に君を守れてよかったよ」
「あぁぁぁぁ、待って、待って、待ってッ」
命をかけてくれる程、あなたは……。
どうにもできないこの状況に私は人生で初めて激怒していたと思う。
ジンは目を閉じた。
「ねぇ!やだ、やだ、やだ、目をつぶらないで!行かないでよ……お願いだから……」
リアスはジンの胸に顔を押し当て泣いた。ジンの心臓の鼓動がゆっくりになっていくのに酷く恐怖を覚えた。
「ァァァァアアァアア!」
泣き叫んだ。ただそれしかできなかった。
「お別れは終わったかね?……反応は無しか。まぁいい」
ゼイガルニクは圧倒なスピードでリアスの背後に周った。そして剣を鞘に収める。
リアスの背中には大きな傷が入っていた。
目で追えない速度で切られていたのだ。
「2人仲良く永遠の眠りにつくがいい」
そう言い残して、どこかに歩き出した。
いい感じだっだろう。わざわざ心臓、呼吸、血の流れを魔力で調整して死に際を再現した成果が出た。これぞやりたかったことの二つ目!しかもボスが副理事長と何という幸運。
ただリアスの魔力が弱まってきているな。
「もう気絶したよな。治してやるか」
傷は結構深いな。こりゃ致命傷だ。ただ僕の手にかかれば治すことは容易い。15歳になって体も脳も成長している今なら余裕なのだ。
そして僕はリアスの体の細胞レベルから高速で再構築していく。
「これで回復はした、あとは体の機能を少しいじってやれば……できた。完全回復だ。ただもう少しリアスには眠っていてもらおう」
少し脳をいじって明日の朝くらいまでは寝てもらう様にした。
そして僕の体も治し、立ち上がる。僕の方は内臓とか動かして致命傷はない。だから治すのに1秒もかからないのだ。
「これで完璧だな。さて、行くとしようか」
僕は黒のスーツにロングコートに着替え、仮面をつけた。
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