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英雄の記憶


 そこは地下だった。目の前には古びたお城。広い空洞にお城……かっこいいな。憧れだ。


 誰が作ったのか、なんのために作ったのか。当然わかりはしない。結局のところ都合良くいかない。それが人生だ。けれどそんなことは今はいい。こうして何か面白そうな事が始まりそうなのだから。


「ここは……」


「洞窟かな。ただ大きなお城があるけど」


「不気味ね」


 そのお城は黒を基調とし、相当前からあるのか綺麗とは言えない状態だった。


「転移魔術陣が発動して飛ばされたんだろうけど」


「わからないわね」


「うーん。とりあえずあの城入ってみない?」


「でも危険よ」


「何もしなければ今は変わらない」


 何もしなければ何も変えれない、何も得られない。前世で僕が学んだ事だ。


「……分かった。ジンが言うなら行ってみましょうか。危なかったら直ぐに私を頼ってね?」


「わかったよ」


 そう言って歩き出す。


「大きいお城ね」


 高さは100メートル以上の高層マンション並み。


「こんな城よく作ったな」


「古代技術でしょうね。今の技術ではこのレベルを作ることはできないですし」


「そうなんだ」


「昔の建造物は技術がとても高いんですよ」


 ここでもリアスのうんちくが披露された。さすがはリアス。


 この城の扉は大きいがボロボロで人一人分の穴があったため開ける必要もなく入れた。


「中も結構作り込まれてるね」


「まるでお伽話の世界ね」


 内装は綺麗でただ壁や天井に何か不気味な絵が書いてあるのが難点だ。そう言うのはもっと地下室とか何か大切な部屋にしないとね。


 部屋は多く、家具、ましてや食器そして腐った食品まであって、どこか不自然だった。ここまで生活感が残るだろうか。


 しばらく探索していると他よりも厳重でそして不気味な雰囲気を纏う空間に出た。


「何ここ……」


 一歩進むと、もうそこは白い光の部屋で、科学と自然が融合したかの未来的な部屋だった。


「こんなの見たことない。これが古代に作られたものだというの……」


「流石にこれはすごいね……」


 天井から垂れる蔦にはみたこともない奇妙な花が咲いていて、その白い空間の真ん中には円形状に重なるステージのような場所があった。そして何より目を引くのはそのステージの上に浮かぶ大きな水色の結晶。

 

 中はよく見えないが、明らかに人ではない何かがその結晶の中に眠っている。


「封印……のようね。でもこんなにも美しいなんて」


「あぁ、本当に美しい、そしてどこか儚い」


 眺めているとその結晶が少し光った。一瞬のことで気のせいに済ませてしまうほど些細な光。


「今何か……」


 ……なんだか意識が。


「師匠どうしたの……」


 これは前のサンの時と似ている魔力干渉か……。


 僕とリアスは意識を失った。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 私は英雄だった。産まれて直ぐにその称号を得た。英雄とは加護のようなもので選ばれし8人だけに与えられるものだ。


「フィン。いい子ね。でもそんなに頑張らなくていいのよ。あなたは英雄である前に1人の子供なの。だからお母さんに甘えていいのよ」


 母は優しい人だった。いつも私を可愛がってくれて私は母に相当懐いていたと思う。


「フィン、お母さんの言うとおりだぞ。そこまで抱え込まなくていい。困った時は周りの人を頼れ」


 そう言うのは私の父だ。父も優しく時に厳しく、少し怖い印象だったが、それも私のためだったのだろう。


 英雄という加護を与えられ成果を出し、英雄として活躍しようと苦手だった剣技も魔術も頑張って練習していた。ただいつしか英雄という加護が重りになってただ辛かった。そんな私を両親は普通の子として扱ってくれたのが私はただ嬉しかった。


「ありがとう。お母様お父様。でも私は諦めない。英雄として民を救いたい。だから……」


「いいのよ。私達はフィンの選ぶ道を応援するわ。ただどうしても耐えれなくなったら必ず頼るのよ?フィンは自分で抱え込んでしまう性格があるのだから」


 私は両親に大切にされ立派に育っていった。やがて15歳になった頃、私は英雄として各地に出向き魔物の討伐や人助けに力を注いでいた。民からは慕われ、とても良くしてもらえた。こんな私が、と自分に自信はなかったが、それでも誰かの役に立てたことが嬉しかった。


 そして18歳になった頃、国から正式な英雄としての称号を与えられた。その際ほか7名とも初の顔合わせで緊張していたが数人とはなんとか仲良くなれた。


 そんな平和が続いていたこの大陸に一つの脅威が舞い降りた。


 それを知ったのは国王陛下から直々に依頼をされた時だった。


「英雄達よ。今この大陸に悪魔が現れた。数は7。どの悪魔も膨大な力を有しておる」


「悪魔が……」


「なんてことでしょう。これではこの大陸は」


「何故悪魔が今現れたのですか」


「終焉の魔人、かつて邪竜と恐れられた存在、デミウルゴスが目覚めたのだ」


「何ッ!」


「そんなまさか……」


「本当ならこの大陸いや……世界は……」


「だからお願いがあるのだ。その悪魔を封印してはくれぬか」


「ですがデミウルゴスは」


「その悪魔達を封印すればデミウルゴスも眠りにつくと伝承では言われておる」


「いいじゃねぇか。面白そうだ。その話受けてやるよ」


「そうですね。我々英雄は民を守るのが務め。世界の危機なら私達でやらなければ」


「……でも、悪魔だよ?本当にできるのかな……」


「あぁあ?弱虫は黙ってろ!」


「ひっ」


「やめてください」


 確かに悪魔は強大で私達で封印できるかどうか。でもやらなければ。


「今は仲間同士で争っている場合ではありません」


「なんだ?フィン。いつからお前と俺様が、仲間になったんだ?」


「ッ。同じ英雄です。仲間でしょう!」


「違うな。頭お花畑かよ」


「静まれ!」


 国王の声が響いた。


 それから具体的な役割が出され、私は魔分明王(ベルゼブブ)の封印を任された。


「ここに悪魔が」


 私は南の国へ向かった。ここに魔分明王(ベルゼブブ)がいるとの報告を受けて、数千という兵隊を連れて万全の準備を整えてから挑んだ。出向いたのは渓谷。そこに奴はいた。魔分明王(ベルゼブブ)の見た目は太った竜といった見た目で数百メートルほどの巨体を持っている。


 凄まじい魔力量。そして圧。悪魔というものはここまでに強大で恐ろしいものだと感覚として私は知った。

 

 ――結果は私達の勝利であった。とはいっても真正面から戦っていれば負けていただろう。勝ったとはいえ封印をしたという意味だが、一つの脅威は取り除けたはずだ。


 私の体はボロボロで、当分戦えるような状態ではない。兵隊のやく8割は亡くなった。それほどまでに悪魔は強敵だったのだ。


 やがてその悪魔は結晶化し、国に管理された。だが、その日その管理するお城ごと消えたのだ。最高技術で作られていたお城はそう簡単に侵入はできない。ましてや城ごと消えるなどという前代未聞の事態。


 だが、それでも封印はできていたので問題はないだろうと判断された。その封印は遠隔操作で再度封印をかけられるからだ。


 そして、他の英雄達も帰還した。1人は片目を失い。1人は両手を失い。1人は足を失い、1人は脳に損傷があった。誰しも怪我なく帰ってくることはできなかった。


 最も酷かったのは悪魔明王(サタン)を封印しにいった、2人の英雄だった。サタンは他の悪魔達よりも強力で2人がかりでやっと封印できたのだ。ただその2人は、生きているのが不思議なくらいの状態だ。足も片手もなく傷が痛々しい。2人はただぼーっとどこかを眺めているだけで言葉も話さない。


 胸が締め付けられるように苦しかった。もっとやれていたのではないか。もっと他の方法があったのではないか。私は失った両手の部位を眺めて泣いた。


 その後私達は大陸中の民から讃えられ、一躍有名となった。私達の像が建てられ、本が出され、憧れの対象となった。


 何年ぶりだろうか、久しぶりにあった両親は泣きながら私を抱きしめてくれた。

 第21話の最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。もしよろしければ、作品の応援をお願いします!


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 第22話もよろしくお願いします。

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