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弟子と師匠


 ダンジョン1層も難なく進んで行き、いよいよボス部屋についた。そこは他より頑丈な造りになっていて、いかにもボス部屋と言った感じだ。


「ここから先がもうボス部屋よ」


「気をつけないとだ」


「基本ボスの魔物を倒せばクリアなシンプルな内容だけど、一応気をつけましょう」


 そう言ってリアスは重たい扉を開く。


「試練一『調べ』」


 どこからか声が響いた。システムみたいなことなのだろうか。


 扉を開くとそこは暗く円形状の部屋だ。すると突然、光の玉が浮き上がり部屋を照らした。


 部屋の奥、光で照らされたのは蛇の形をした石像。


「あれ、魔物はどこに……」


 そう言った瞬間、石像にヒビが入る。みるみると鈍い音を立て割れていく。


「まさかあれがボスか」


「ええ、1層ボス『石蛇』よ」


 『石蛇』まぁ見た目通りかな。


 割れた石の内側からは赤い鱗に鋭い目のドラゴンのような見た目の蛇が出てきた。その体は巨大で5メートル以上の長さがある。


「ジン行くわよ!」


「わかったッ」


 リアスは水属性の魔術。放たれたのは水の球。圧縮され細く伸ばされた水は針のように鋭く、金属のように頑丈になった。その水の球に沿うように風属性の魔術を螺旋を描くように添える。鋭さ、頑丈さ、スピードが網羅された完璧と言える魔術が2人によって放たれた。


 当然蛇の巨体では俊敏な動きはできず、その頑丈な鱗もろとも貫いている。だが、傷が小さい。貫通したところで穴が小さすぎたため多少の傷しかつけれなかった。


「ここは僕が行く」


「ッ……いえ、ジン頑張ってね」


「あぁ」


 石蛇は体を器用に動かし、口からは炎が放たれる。温度や威力はいいものの、スピードがまだ遅いこれなら魔力を使うまでもない。


 その放つ一瞬の隙をつき一気に近づく。僕の剣は確かに石蛇の鱗を捉えている。だが、触れようとした瞬間まるで見えない壁があるかのように跳ね返された。


 ――魔力障壁か。魔力障壁、魔力を練って壁を作る結界術みたいなものだ。


 石蛇は僕の剣を跳ね返した瞬間、僕が石蛇の隙をついたように石蛇もまだ僕の隙をつくように動く。


 面白い。力を大幅に抑えているが、だからこそ刺激的で僕を奮い立たせる。


 石蛇は主に突っ込むという物理攻撃、炎を吐くブレス魔術、体を守る魔力障壁、この三つがこの石蛇の能力だろう。対して僕は魔力を限界まで抑え、魔術は基礎式だけで行使し、あとは筋肉だけという状態。勝ち目などないと思われる状況だ。


 何度も剣を振りその度に魔力障壁で跳ね返される。埒が明かないな。


 リアスはジンの動きを観察していた。確かに魔術の精度や魔力の扱いは素人同然。動きもそれほど良いとも言えない。けれど、なぜか目を離せない。どこか美しく、洗練されているように感じる。


 こんな剣をリアスは見たことがなかった。剣の基準というものはわからないが、でも私はこの剣が好きだ。


 儚くも美しい月に似ているとリアスは感じた。


「ジン!手を貸そうか?」


「いや大丈夫。もう終わらせる」


「え?」


 当然だった。1層とは言えボス。普通ならパーティーで攻略するのが常識なのだ。


「魔力量は最小。魔術式は基礎を重ねる。この一振りで決めて見せよう。覚悟せよ。石蛇よ」


 振り上げた剣には微かな魔力がピリピリと剣から流れる。量は普通……いやそれよりも少ない。ただ剣と空気のそのごく僅かの隙間に無理矢理、圧倒的な鋭さと強度が目に見えもしない薄さに生成した。


 風属性。プラス水属性、プラス金属性。三つの魔術式を重ね、剣に施す。


「剣合魔術。『小星』」


 たった一振り。その一振りで音は凪ぎ、石蛇の首は切れた。


「……何が起こったの?」


 できるはずがなかった。あの魔力の量であれほどまでの威力を出すのは人には不可能だ。それができたというのならジンは一体……。


「ジン……あなたは」


 ジンは笑みを浮かべていた。不気味と感じるのが正解なのだろうが、リアスは尊敬と畏怖を抱いていた。


「クハァッ!」


「大丈夫?!」


「ちょっと無茶しすぎたみたいだ」


 これがやりたかったんだ。リアスはいい表情をしてくれた。弱いと思っていた弟子が実は強いのかもしれないという演出。リアスの反応がなければ失敗に終わっていた。リアスを選んでよかったと心の底から思う。


「ジン凄かった。あれほどまでの技術は私は見たことがない。ジン、貴方はきっと将来名を馳せることになると思うの。私が支えになれるかわからないけど、師匠である私を少しは頼ってね」


「う、うん……」


 なんか重たいな。こんな感じだっけか?リアスって。少しやりすぎたのかもしれない。


「……次行きましょうか」


「そうだね」


 多分大丈夫だろう。きっとそうに違いない。


 それからも僕達はゴブリン、スケルトン、スライムとありきたりでそこまで強くもない魔物を倒したり、落とし穴、矢、針などといった罠も掻い潜りながら、時には獣が魔物化した個体もいたけれどそれも難なく倒し先へ進んだ。


 10階層に着いた頃だろうか。時が経つのは早い。楽しかったからか余計に早く感じた。


「ここで今日は最後ね。気を引き締めていきましょ」


 10層、見た目は特に変わりはしないが異様に魔物が出てこない。罠はあるようだがこれまでのに比べたら優しいものばかり。


 例えばリアスの頭に蜘蛛の巣が落とされたこととか。


「ジ〜ン。助けてぇ〜」


 と、僕が蜘蛛の巣を取ってあげたのは面倒くさかったが、結構良心的な罠だと僕は思う。


 しばらく探索をしたが、特に何もない。ボス部屋自体が隠されているパターンだろうか。


「全然ないね」


「ないね」


 僕の言葉をイントネーションまで真似してリアスは言う。


「どうしたものか」


「10層についてはボス部屋が定期的に変わるらしく場所は分かってないの」


「嫌な層だな」


「ただ確か壁の左側に沿っていけば辿り着くとも聞いたことがあるわ!」


 なんだその迷路みたいな攻略法。


「今私を馬鹿にしたでしょ」


 ほっぺを膨らまして睨んでくる。


「いやそんなことはないよ」


「本当?」


「本当だよ」


「……わかった」


 何故かリアスはあの1層から面倒くさい感じになっている。適当に返事すると怒るけど褒めればすごい喜ぶ。なんてわかりやすいのだろう。


 リアスが言ったとおりに左側を歩いていると、だんだんとダンジョンの雰囲気が暗く不気味になっていく。


「道あってる?」


「多分あってます」


 絶対あってない時の回答だ。


 そんなこんなで歩いていると、リアスが罠を踏んでしまった。


「あっ」


「え?」


 踏んだ瞬間、魔術陣が広がる。


「転移魔術陣?!なんでここに」


「まさかッこれは」


 明らかにそれは『ゲール』に戻る魔術陣の式ではなかった。

 第21話の最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。もしよろしければ、作品の応援をお願いします!


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 第21話もよろしくお願いします。

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