『お見舞い』と僕の姉の『美化』された噂
放課後、僕とセンとマルで街中にアイルへのお見舞いのプリンを買いに来ていた。2人は以外と仲間思いなのかもしれない。
「センとマルって今日は珍しく仲間思いだよね」
「な、なんのこと?」
「べ、別にアイルさんの部屋でお礼をもらおうなんてしてませんよ」
「自分で白状してくれてどうもありがとう」
そうでもなかった。
「おい!マル何してんだ」
「ッ。なんと巧妙な罠をッ。バレたのなら仕方ない。ジンさんも同罪になってもらいます」
「……そうだな。ジンも知ったからには逃さないからな」
「この僕をハメるなどと現を抜かすなよ」
「……仕方ない無理やり行使だ」
「わかりました。じゃあ行きますよジンさん」
そう言うと2人は僕の腕を掴み無理やりプリンを買いに行こうとする。
「わかったよ。しかたないから僕も協力するよ」
「そうこないとな」
「ちなみにどこのお店に行くの?」
「あいつ、『ムーン商会』を気に入っていただろ?その商会のお店が新しくできたからそこに買いに行こうと思ってるんだ」
「僕達でも買えるお値段で今人気なんですよ」
「よく知ってるね」
「そりゃ日々女の子にモテるために勉強しているからな」
「努力を欠かしたことはありません!」
2人は結構な情報屋だからな。陰キャほど陰で聞いていたりするものさ。それを将来に活かせるとセンとマルも良かっただろうに。
「そりゃすごいや」
しばらく歩くと、この街に似合わないようなレベルでお洒落な外観をした行列ができているお店があった。
名前を『シャトラーゼ』。うん、これもなんか聞いたことがある。偶然にも程があるだろ。
たくさんの女性が並ぶ行列に学生3人が並ぶ。すごく場違いな感じがするが、逆にそれも普段とは違い、いいだろう。
「すごい行列だな。さすがは『ムーン商会』」
「ですね。でもこれも仲間の為です!」
2人は『いたって仲間思い』を突き通しているようだ。
20分ほど待った頃、ようやくお店の中に入れた。お店の中は涼しく、暑くなりつつあるこの時期には最高だ。どうやら異世界式エアコンらしい。ただこれも『ムーン商会』が作ったもの。『ムーン商会』か、僕と同じ転生者なのだろうか。確かに、僕がこの世界に転生してきてるんだし他にもいる可能性はあるな。
「涼しいですね」
「俺たちの教室にも設置してほしいよな」
確かにそうだ。どうせなら寮の部屋にもほしい。
「快適な生活を追い求めるのも悪くはない」
僕達は混み合う人の隙間からあたりを見まわし、高級そうな見た目の商品を見る。
「なぁ、これ全部売り物か?ケーキや何か見たこともないお菓子が沢山あるぞッ」
「しかもお手頃価格です」
「これはプリンだけじゃ足りないよな」
「そうですね」
「買い過ぎないようにしなよ2人とも」
「なんだよアイルみたいなこと言いやがって」
「僕達の自由です。それに本当はジンさんも買いたいんでしょ」
「ッ。いやそんなわけなくもなくもなくもない」
「やっぱり買いたいってことですね」
「クッ、僕としたことが。手が勝手に」
僕達はプリンや他にもケーキとかシュークリームとかアイスを買って店を後にした。1人四品くらい買って700ゼニーも超えない程の安さ。これには僕も心の中で泣きながら拍手をおくるよ。
「本当に安いですね。アイルさんが『ムーン商会』を気に入っているのがわかりました」
「あぁ、そうだな。安いのに質がいい。最高だよな。全種類制覇も夢じゃないな」
こうして、おやつ、じゃなくてお見舞いの差し入れを買うことができ、アイルの家に向かう。今度は自分ようにいっぱい買おっかな。結構気に入った。
ちなみにアイルは僕と同じように家は伯爵。ただ田舎の伯爵と都会の伯爵ではやや差がある。もちろん都会の伯爵の方が上だ。まぁ今回は寮に行くだけだけど。
アイルの寮は王都の南側でマルも南の寮。僕とセンは西側の寮だ。
魔道列車で南駅まで行き、そこからは歩き。
マルの道案内を頼りに、進んでいく。この王都は水路が張り巡らされており、船が街中を通っていることも珍しくない。
「ここが寮です」
見た目は僕が住む寮とあまり変わらない質素な感じだ。
「確かアイルさんは最上階の部屋です」
「最上階?ずいぶんと裕福な」
寮は4階建てで、4階は寮にすむ貴族達の中では上の者が住む、比較的広く設備もしっかりしている部屋だ。
僕の部屋ははベットで半分が埋まってしまうほどと言うのに。
中に入り階段を上がる。3人の足音が寮に響いた。
「確かここ002号室がアイルさんの部屋です」
センがドアをノックする。
「おーいアイル。大丈夫か?お見舞いしにきたぞ」
すると足音がして、鍵を開ける音が聞こえた。
「あっ、セン達か」
そう言って出てきたのは辛そうな顔をして少し汗をかいているアイル。
「どうしたんだ?熱でも出たのか?」
「う、ん。今日のお昼から熱がで始めたんだ」
「どうしましょう聖職者でも呼びましょうか?」
「それほどの熱じゃないから大丈夫だ、よ」
まぁ、風邪で熱を出すのは言うて38度までくらいしか上がらないだろうし、安静にしていれば大丈夫だ。
面白いのはこの世界では熱がでたら聖職者を呼ぶことが多々ある。他にも病気とか。医療技術が発展してないからこそそう言うものに頼るのだろうな。
「アイルに差し入れを買ってきたぞ」
「アイルさんが好きな『ムーン商会』のプリンです!」
「あと、今は辛いかもだけどケーキとかもあるよ」
「みんな……。ありがとう。私は君たちみたいな友達を持てて嬉しいよ。一瞬センとマルの嫌な記憶がよぎったけど気にしないことにする」
「じゃあお大事にね」
「よく眠るんだぞ」
「早く治るといいですね」
「ありがとう。また治ったらお礼するよ」
「いい、いいですよ別にッ」
「そ、そうだぜ、別になぁ、たまたま『シャトラーゼ』を通ったからで」
「いいよ隠さなくて。お礼が目当てだったのだろ?素直に受け取ってね」
「……流石にお見通しというわけか」
さすがはアイル。それをわかった上でお礼をしようとしていたなんて本当にできた男だ。
「アイルさん弱ってましたね」
「だな」
「風邪に熱も引いたんだからそりゃね」
僕達はマルの部屋で少し話をしていた。
「そう言えば明日祝日で休みでしたよね」
「そうだったな。なら明日どっかいくか」
「王都の首都駅前に『ムーン商会』の『デパート』とかいうお店ができたらしいですよ」
「まじか。なら行こうぜ」
「僕パスで」
「え?」
「ジンさん何か予定でもありましたか?」
「ジンに予定なんてないだろ」
「失礼な。明日はダンジョンに行くんだ」
「お前がダンジョンに?無茶なことは言わない、今すぐに諦めろ。お前がダンジョンなんて笑えない。どうせ一階層で怖気付いて失禁するだろ。そもそも誰と行くんだ?」
「失礼な」
まぁそう言われるほどの演技をしてきたから当然なんだけど。
ここでリアスとか言ったらこいつら絶対うるさいよな。女には目がないこいつらだ。絶対ややこしいことになる。
「えっと、グリル兄さんとだよ」
「そう言えばお前に兄貴いたな」
「ジンさんのお兄さんって、超イケメンで確か学校で伝説になってませんでしたっけ」
「もう卒業したから本当かはしらねぇが、噂は聞くよな。しかもジン。姉貴もいなかったか?」
「マリカ姉さんのこと?」
「そうだ。俺的にめちゃくちゃタイプなんだけどさ、今度紹介してくれよ」
「僕もお願いします!」
「いや……やめた方がいいと思うよ。あの姉さんとは」
「何言ってるんだ。学校のマドンナだぞ?いつもクールでお姉様って感じでツンとした態度だけど優しい一面がある美女。最高じゃないか」
「そんな感じに言われてるの?」
「他にどんな感じがあるって言うんですか」
「いや我儘で、口うるさい姉だよ?」
「それもまたよし」
「どんな感性してんだか」
あの姉を好きなんて信じられない。どう考えてもおかしい。
「まぁ、明日は無理なんだな。なら俺ら2人で行ってくるわ」
「ジンさん後で行きたいなんて泣きついても無駄ですからね」
「はいはい」
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