朝の集会は憂鬱?みんなは優雅に夢の世界
僕達は登録を済ませ、帰路についていた。
「今日はありがとうね。ジン」
「何が?」
「今日のこと色々よ」
「まだ始まったばかりって時になのに、感謝が早いよリアス」
「確かにそうね」
「パーティー組んだのはいいものの、何かすること決まってる?」
「ダンジョンに行きます!」
「ダンジョン。聞いたことはあったけど行ったことはないな」
ダンジョン。それはファンタジーの世界には必ずと言っていいほどに存在し、冒険者がモンスターを倒したり、罠を回避して攻略を目指すものと前世の記憶ではそう覚えている。
「ダンジョンっていうのは、かつて『悪魔』の眷属とされた『魔女』が作ったものなの」
「へぇ」
「行く日は祝日の明後日に潜りましょうか」
「明後日ね。わかった」
『魔女』この世界には本当に色々いるんだな。英雄に悪魔に魔女まで。どれも面白いからいいんだけどね。
「初めは慣らしで10階層まで潜ろうと思うから準備しておいてね」
「10階層か」
「ええ、10階層よ。初心者ならここが普通くらいね。でも私なら30層は余裕なの!」
「そりゃすごい」
すごいのかどうかはわからないが多分すごい。
「でしょぉ」
「すごーい」
「フフン!」
すると、リアスは道に出ているお店に目をつけた。
「ねぇジンあれって何かしら」
リアスが指差すお店には、まるで前世の『ソフトクリーム』のような商品が売られている。よく見ると名前まで『ソフトクリーム』だ。
「『ソフトクリーム』って書いてあるよ」
「ソフトクリーム……。食べてみてもいいですか?」
「いいよ。僕も食べてみたいしまだ時間はある」
そのお店にはまだバニラ味しかなかったが、なかなかのクオリティ。
「ジン先に食べてみてください」
リアスに促され一口いただく。柔らかく冷たい。甘さが程よくとても美味しい。前世のソフトクリームとは少し味が違うが、このソフトクリームも全然いいだろう。
「これ美味しいね」
「本当?じゃあ私も……」
リアスも一口食べてみる。食べた瞬間リアスの顔にはこれでもかと言うほどの幸せを放つ笑みを浮かべていた。
「美味しいぃ。ほっぺが溶けちゃいそう」
可愛らしい感想を言ってからは、リアスは無言でとにかくソフトクリームに夢中だ。どうやら甘いものが好きらしい。
リアスはソフトクリームをほんの数分で平らげてしまう。
「美味しかった!ジンあれすごくいいわね」
「美味しいものは正義である」
「同感です」
と、帰りは歩きながら話したりであっという間に時が過ぎ、僕は寮に戻った。
初めてのダンジョンはロマンが沢山詰まっている。どんな演出をするか悩みに悩むが、こう言うのは普通じゃないのがいいよね。
そして翌日。
今日は朝から学校の講堂で集会みたいなやつが行われるらしい。先輩達によると一年に数回ほどあるものでとても退屈な話を1時間みっちり聞かされるらしい。いつも話すのは学校の理事長で、もうお年寄りのお婆さん。何度も同じことを繰り返し話すから本当は生きていないんじゃないか?地縛霊だ!って噂されている。
そして登校後、センとマルと一緒に講堂へ向かった。今日アイルは学校お休みだ。どうやら風邪を引いたらしい。今日の帰りにでも3人でお見舞いに行こうかと考えている。
「それにしてもアイルさんが休むなんて珍しいですよね」
「それな。あいついっつもニッコニコの笑顔で元気いっぱいそうだったのによ」
「アイルも完璧超人ではないからね」
「そうですね。皆さん今日のお見舞い何持ってきます?」
「そもそも行くかどうかなんだよな」
「行ってやろう」
「まぁそうか。でもアイルって何が好きだっけ。こう言う時って何を持っていくべきなんだ?」
「やっぱりプリンとかじゃないですか?」
「確かプリン、アイルの大好物だったよな。それに風邪でも食べやすいだろ」
「プリンか。じゃあ放課後買いに行こうか」
「そうだな」
「そうですね」
講堂はオレンジ色の光に包まれ、生徒達がザワザワと会話をしている。広さは全校生徒2213人が収まりきるほどの巨大講堂だ。
集会開始時刻まで、あと5分。
「皆さん集まっていますね」
「そうだな。本当に多い人数だ。この人数なら俺のことを好きな女子がいてもおかしくない」
「確かにこの人数なら僕のことが好きな人もいるかもです」
席に座ってマルとセンは生徒の特に可愛い女子を探していた。ここでもセンとマルはいつも通りだ。
「あ、あ――」
マイクテストを行ったのはおそらく放送委員。そのマイクの音が講堂に響くと、生徒達は一斉に静かになり、電気はゆっくりと消え講堂のステージ上だけが照らされる。
「お待たせしました。これよりグリム魔術学校の集会を始めます。本日の集会は理事長が不在のため、副理事長のお話になります。まず初めの挨拶です。全校生徒起立」
一斉に立ち上がるとセンとマルもふざけるのをやめ、だらしなく、しかしステージを真剣に見つめている。
「礼」
そして着席した。本当に前世に似ているな。僕のファンタジーを返してくれ。でも仕方がないこの世界も本物なのだから。
「皆さん。今日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます」
演壇で重みのある低く明るい声でそう言うのはゼイガルニク副理事長だ。ゼイガルニク副理事長はイケオジな感じで、薄い金髪を短く生やし、髭が彫りの深い顔に渋みを醸し出している。服装は異世界式の藍色のスーツに革靴を履いた姿で高身長だ。学校では数回ほどしか見かけたことはないが、確固たる信頼を学校から得ているすごい存在だ。
「本日は理事長が不在とのことで私が今日の集会の話をさせていただきます。皆さんは私のことをあまり知らないと思うので、自己紹介から始めましょうか」
その声は驚くほど脳に響き、意識が釘付けにされる。
「私の名前はゼイガルニク・ベルゴールです。この学校の副理事長を5年前から勤めています。普段は『副理事長室』にいるので皆さんとは関わりがあまりないですが、私なりに話せることをあらかじめ考えてきました」
あまり長くならないことを全生徒が願っていた。
「今学期も始まって早2ヶ月。新入生はもう学校には馴染んだ頃でしょう。2、3年生は将来について考え行動を始めているころですかね。勉学や魔術に励むのも良し、独自の分野を極めるのもまた良し、ただその中で体調を崩さないようにしてほしいのです。また今週の週末から連休に入ります。その中では『英雄祭』という重要な儀式もあります。浮かれ過ぎずに過ごすようにしてください。また……」
と、話始め理事長よりは短いが、20分は話していた。退屈なその時間は魔力を練って暇を潰していると、横からはスゥースゥーと寝息が聞こえてくる。もちろんセンとマルだ。
「副理事長ありがとうございました。これにより集会を終わりとします。皆さんありがとうございました。各教室に戻り授業を開始してください」
その放送が流れると、カチッと言う音がして電気がついた。センとマル、他諸々の生徒達は目覚め、体を伸ばしている。思ったよりも寝ている生徒は多く4割くらいは寝ていた。副理事長はどう思っているんだろうか。
「ふぁ。よく寝たな」
「ええ、なんだか深く眠れました」
「それはよかった」
「ジンお前は寝なかったのか?」
「うん……まぁね」
「すごいな。あの場で寝ないなんてジンまさかお前、真面目か?」
「ジンさん、それは凄過ぎます」
「いや何が。ただ手遊びしてただけだよ」
「なんだ。そう言うことかよ。とりあえずさっさと教室戻ろう」
「そうですね。今日はまだ始まったばかりですしね」
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