ギルドとかファンタジーであってほしい
僕はリアスと論文を提出しに教師の部屋へ向かっていた。
「ねぇ、名前はなんていうの?」
「僕は、ジン。気軽に呼んでもらえればいいよ」
「ジン……。ねぇ。ジンも魔術好きなんでしょ?ジンは何の魔術が得意?」
「僕か。僕は基本、魔術は使わないんだ。いつも魔力と技術だけかな。とは言っても実力はないけどね。強いていうなら、風属性かな」
風属性。まぁ木属性の中にある属性だ。
「魔力だけで戦うなんてすごいのね。風属性は闇属性ととても相性がいいのですよ。私達コンビ組めるかもですね」
リアスは笑う。その笑いは外見も相まって周りの目が痛い。でもその痛みは刺激的でクセになる。あの時と同じだ。僕が初めて悪党を殺した時。あの時の感覚は今でも鮮明に覚えている。殺人は癖になることを僕はその時初めて知った。
と、話は逸れたが、コンビか。中々面白そうだ。
「いっそのこと、冒険者として本当に組んでみない?」
「……いいの?誰かと組んでみたかったから嬉しいんだけど、私なんかと本当にいいの?」
「うん。僕は最近暇だったし、成績もちょっと伸ばしたくてね」
「なら決まりね!じゃあ早速今日登録しに行かない?」
「いいね。でも早いのはいいけど僕が力不足で足手纏いになるかも」
「大丈夫。私がいるから!……いいこと思いついた。ジン。私の弟子になる気はない?弟子をとってみたかったの!」
「弟子か……」
弟子……面白いかもな。
「――よろしくお願いします!師匠!」
「師匠……。いい響きね。なんだかすごく嬉しい」
リアスが可愛らしい笑みを僕に向ける。
確かにその気持ちはわかるかもしれない。前世で修行してた時。たまたま山で遭難していた人が、僕の修行を見てやりたいと言い出したから教えてやったら『師匠』と呼んでくれた。あの快感は素晴らしかった。まぁ一日でバテて辞めていったけれどね。そんな奴は山で永遠の眠りについてろ。と、山の奥に捨てておいた。
そして、提出をチャチャっと済ませて、解散した。集合場所は『グリム魔冒険管理所』総称『ギルド』の前の『英雄』の像に決まった。
「弟子か……フフフッ」
せっかくの弟子という立場。やりたいことは山ほどある。どんなプレイをしようか。
やりたい事を頭でイメージしていたら授業は終わり、帰宅時間となった。空はオレンジ色に染まり始めている。
学生の帰宅ラッシュで混み合う街の中、たくさんの青春を送る人々の隙間を風の如く自然に通り過ぎた。
集合場所は学校から2キロくらいの位置にある。ちょうどその近くは商店街で行ったことはないけど、何やら新しいお店が始まったらしいから今度行ってみようかと思ってる。
僕は混み合う道を歩いていたが、今日はやけに馬車……『魔道馬車』が多い。そういえば数日後王都のお祭りがあるとセンとマルが言っていたような気がするしそのせいなのかも知れない。
人混みを抜け、やっと『英雄』の像に辿り着いた。この英雄の像は『フィン・マックール』という英雄の像だ。親指を噛み、剣を空に掲げている。
確か英雄は昔のお伽話に出てきた存在だった気がする。この国グリムはこの『フィン・マックール』の祖国でありこの国を救った英雄だ。
と、英雄の像を眺めていると後ろから声がかかる。
「ジン。お待たせ」
そこにはリアスが居た。当たり前だけどね。リアスはわざわざ着替えたのか、私服になっている。
「服着替えたんだ」
「どう?似合ってる?」
「とてもいいと思うよ。リアスに似合ってる」
「よかった」
「ちなみになんで着替えたの?」
「え、えっと。お出かけするなら着替えた方がいいと思ってね……」
「そう」
「早速行きましょ」
「そうだね。そう言えばリアスはランクなに?」
「私は基本、学校の研究室にこもっているのでDランクです。ジンのランクは?」
「僕はCランクだね。暇な時たまに森に行って弱い魔物とか狩ってるけどまぁ僕のレベルだしCランクは僕に相応しいんだろうな」
「大丈夫です。この私がついてるので!」
「よろしくお願いします!Dランクの師匠!」
「Dランクは余計よ」
リアスが笑った。見てるこっちまで嬉しい気持ちにさせるような純粋な笑顔。
僕達はダークブラウンを基調とした洋風なデザインの『ギルド』に入った。飾りすぎてないのも評価ポイントの一つだ。
ギルドは人で活気付いていた。いかにも冒険者というような少しダサい服装の人や、チンピラや、騎士かと見間違いするほどの装備をつけた人、ローブにとんがり帽子をつけたいかにも魔術師……いや魔女のような姿の人もいる。
『今日の依頼どうだった?』
『今日は簡単なのはないな、どれも俺たちの実力じゃあ無理だ』
とか。
『てかよぉお前があの時、前にでてたらよぉ依頼成功したのぉによぉ』
『謝ったじゃん、もうその話何度目よ。いい加減にしてよね』
『まぁまぁ落ち着いてください』
『そうだぁ、そうだぁ』
どうやら依頼に失敗してヤケクソで酒を飲んでるようだ。こんなような人達がこのギルドには数多くいる。
「賑わってるね」
「みんなもうお酒を飲むのね」
「そうしないとやっていけないんだろう。なんと世知辛い」
「それに、ギルドの職員さん達はなんだかすごく忙しそう」
「多分もう直ぐあるお祭りの準備じゃないかな」
「そう言えばもう直ぐでしたね。あそこのポスターにも書いてあるわ」
そこには『グリム英雄祭』と書いてあるポスターが貼ってある。
「みんな大忙しだ。でも『英雄祭』ってなに?」
「知らないの?『英雄祭』はかつて悪魔を封印したと言われる8人の英雄を祝う日よ。ここグリム王国ではギルド前にもある像、『フィン・マックール』がその英雄の1人ね。でもお伽話ですけどね」
と、ドヤ顔で語ってくれた。頼りにされるのも嬉しいようだ。
「へぇ。お伽話が祭りになるなんてすごいなぁ」
「そうね。じゃあ登録しましょうか」
「そうだね」
受付場所へ向かった。どこか見覚えがあると思ったら市役所だ。前世の市役所に似ている。ただ建物の造りやデザインがだいぶ違うから、あの前世の退屈感はない。
その受付で対応してくれたのは茶髪に犬耳の獣人と人間のハーフの女性だった。
「初めまして。初めてのご利用ですか?」
少し慌ててリアスが言った。
「い、いえ。今回はパーティー登録をしたくて」
どうやらリアスは少し人見知りのようだ。
「パーティー登録ですね」
受付係がそう言うと慣れた手つきで書類やらペンやらを机に用意する。もっとファンタジー感あってもいいのにどうも堅苦しいし、前世の日本のような、きちっとした書類で少し残念だ。
「ここに署名と、各登録記入欄にご職業や連絡のできるものをお書きください」
そう言って受付係の人はその場を少し離れた。
リアスが僕より先に動く。まるで大人の女性のように爽やかで頼れるように見えた。けれど、格好をつけたのはいいものの、どこをどう書くのかわからないみたいで焦っている。
「リアス僕が先にやるから見ててね」
「ごめんねジン。格好悪いとこ見せちゃって」
「いいよ。それに格好をつけないといけないわけじゃない。結果が全てじゃないんだ。君が頑張ろうと行動したことに本当の価値がある」
と、適当に名言をリアスに披露した。リアスもこの名言が刺さったようで少し泣きそうなでも前向きな表情をしている。
「じゃあ僕の参考に書いてみて」
「ありがとうジン」
リアスは普段魔術の研究をしているからか慣れた手つきで僕が書いたのを参考にしながら欄を埋めていく。ちなみに書類の内容は、本人を証明するものと、それぞれの同意。そして何かあった時の規約が書いてあった。
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