新しい出会い?
僕は街中にある、四角い塔の鐘をバックに片足をおろして座っていた。リーナは僕の横で立って月を眺めている。
「月が今宵も綺麗だ」
「本当に綺麗ですね。まるでヒヅキ様のお心のようです」
僕は目を細め言った。
「ボクの心はもう廃れてしまった。綺麗なものじゃない」
リーナは僕の言葉、姿を見て、静かに優しく言う。
「それでもヒヅキ様は私にとって私達にとってとても偉大で素敵な方です」
「……報告を聞こうか」
「はい。現在この王都に原罪教幹部が集まっていることがわかりました。その中に裏では名の知れた実力者もいるようです。また、グリム魔術学校にも1人潜入していることがわかりました。奴らはもう時期動くでしょう」
「そうか」
「そして、我ら『月柱』および、120名の『ノワール』の部下を拠点に集めています。その時が来ればゼイが合図を出し、教団の者を表の舞台へ引きずり出します。作戦は以前『伝達咫烏』で報告した通り、作戦Aで進める予定です。以上が報告となります」
……120人?いやそんなに増えてるの?もう僕王国作れるのでは?
とりあえず、報告内容は敵がいるよってことね。そしてそれは私達で仕留めますと。それと作戦Aか。確かに前来たけど内容よく読んでなかったんだよな。
「ご苦労だった。帰っていいぞ」
「はッ」
そして、丁寧に一礼をしてリーナは闇に消えていった。
さて、僕も帰るとするか。
塔から倒れるように落ち、体の向きを上に直す。大きな音が出ると思うだろうが風属性の魔術でふんわりと着地した。
そして寮には窓から部屋に入りなんとかバレずに住んだ。
――そして翌朝。
僕は髪の毛を崩し、顔の血色を悪く見せ、背筋を曲げ猫背にし、口角を下げる、そして学校から支給された制服をだらしなく着て、剣を腰にかける。これが僕の朝の準備である。
ちなみに魔術師とはいえこの世界では剣が杖の役割を果たしている。昔は木の杖だったが、実践に使えるようにと剣へと常識は変わっていったのだ。だから最近ではこの剣技が未熟な世界にも剣技を極める者達が現れ始めている。
僕は大通りにある、『魔式列車』に乗ろうと人混みの中でせっせと体を車内に押し込んでいた。
『魔式列車』、『魔道列車』とも言うが基本僕達は魔道列車が主流の呼び方だ。魔道列車は3年前、学校が開発し通学路に導入した画期的な技術でそれは国外でも高く評価されている。
だからかいつも混んでいて乗るのもなかなか大変だ。こんな感じなのかな日本のサラリーマンさん達は。と、その中にいつもの見覚えのある顔がいた。それは顔に絆創膏がたくさん貼られ少し顔が腫れているセンだった。
「おう!ジン。昨日は大丈夫だったか?」
「セン。大丈夫だったよ。何とか間に合った」
「そうか。ならよかったわ」
とセンはいつになく優しい雰囲気を醸し出している。
「それよりその顔はなんだ」
「アイルに引きずられて顔に菌が入ったみたいでな。今朝からこの顔だったんだ。流石に人気店でも人気すぎて衛生管理が追いついてないんだろ」
「そりゃ店の前をせっせと拭きはしないよ」
「まぁそうか」
「そうだよ」
「……なぁ、ジン。この魔道列車、いつになったら楽して乗れるんだ?」
「なぜ僕に聞くんだ?でも当分は無理だろうね。学校に行くにはこの魔道列車が一番いいし、学校側が魔道列車を増やさない限りこの人混みは減らないだろう」
「やっぱりそうだよな。はぁ、上級貴族たちは楽に登校できていいよな」
「そうか?上級貴族達は色々役目があって面倒くさそうだけど」
「確かにそうかもだけど、進路が決まってない俺らよりはいいだろ」
「そう言う考え方もあるか。まぁ何を嘆いたって変わらないんだから諦めなよ」
「ちぇ、ジンは現実主義者だなぁ」
と、そんな会話をしながら僕達は今日も学校へ向かった。
にしても、教団の幹部が学校にもいるんだっけか?誰かはよくわからないが、まぁいずれわかるだろう。
早くイベントが起きて欲しいものだ。
――学校の廊下。
僕はいつも通り猫背でフラフラと歩いていると、突如として少女と肩がぶつかった。少女が持っていた資料が床に落ちた。
「ッ!ごめんなさいね。ちょっと前を見ていなくて」
「いやいいよ。僕も前を確認してなかったし」
そう言って僕は彼女が落とした資料を拾う。ちなみにその少女は白髪ロングのハーフエルフだ。ハーフエルフというかエルフ自体結構珍しい。それに外見はエルフってだけでみんな整っている。なんて不条理な世界なんだろうか。
「拾っていただきありがとうございます」
「いいよ。それよりその資料なに?」
「これは魔術式の論文です。やっと完成したので今から提出しに行こうかと」
「これが……」
僕は一枚の内容を確認する。そこにはずっしりと文字と難しそうな術式が書かれていた。僕はちょっと本気を出して、わずか0.7秒で全ての文字を読んでみると、思ったよりすごいことが書いてある。今の魔術の最先端をいくような内容で、もしかしてこの子結構すごいのでは?と、思うほどに。
「君名前は?」
「私はリアス・メイリアっていいます」
「リアス・メイリア……この論文。君学者なの?」
「いえ、私は魔術師です」
「魔術師か」
「こう見えて私の得意属性は『闇』属性です!」
この世界には基本属性があり名前を『伍代属性』という。その属性は『木』『火』『土』『金』『水』。
ここから派生した、『光』『闇』『雷』の属性がある。それぞれ、『光』は『火』の属性の派生。『闇』は『水』の属性の派生。『雷』は『木』の属性の派生。
『伍代属性』よりも扱いは難しく、国に100人くらいしか使えるものはいないらしい。その三つ以外にも派生した属性は数多くあり、いずれも伍代属性に分類される。
ついでに魔術の属性の話を深めるとその他の完全なる『外』の属性がある。世界そのものに干渉する魔術。ただこれは使えるものが大陸で数人な上、消費魔力が半端ない。だから基本使える者は数十人の補佐がいて成立する魔術。
その属性は『空』『時』『概』の三つ。
僕は『空』しかまだ使ったことはないけどね。
そしてこのリアスと言うものは『闇』属性が使えると。つまり中々の実力者。
「『闇』属性。すごいんだね。この学校にそんなすごい人がいるなんて知らなかったよ」
「ふふん。そうなんですよ!」
すごく嬉しそうだ。よほど褒められるのが好きなのだろう。
「じゃなくて、私は行きますね!また今度会えたら」
「う、うん」
リアスは走り出してしまった。そんな慌てると……。
ほら。転んだ。
「リアス。大丈夫?」
「……大丈夫」
リアスは顔を赤くしてまたしても論文をかき集めている。恥をかかせてしまったのだろうか。まぁ知ったこっちゃないが。
「リアス……魔術の才能はあるのにドジなんだね」
「ッ。ただちょっと運動神経が悪いだけでドジではないの。本当だからね?」
「はあ……。僕も手伝うよ」
「いいよ、手伝わなくて。迷惑ばかりかけてるのに……」
「いいんだ。何より僕は君に興味が湧いた。僕は魔術が好きだ。そして君も魔術が好きだろう?」
「……え?」
リアスは論文を抱えたまま、目を丸くして僕を見上げてきた。
いつもは「天才」や「ハーフエルフ」として遠巻きに見られるか、腫れ物のように扱われる彼女にとって、不躾に、けれど純粋に「魔術が好きだろう」と踏み込んでくる人間は珍しいのかもしれない。
「……もう。お人がいいのね。でもありがとう」
リアスは満面の笑みで僕を見つめた。
「いいよ。じゃ行こうか」
ずっとヘタレを演じているだけの退屈な日々が少し動き出そうとしていた。
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