第11話 『ノワール』誕生と僕の本当の名前
「ふぁ。おはよう世界よ」
今日もいい朝だ。僕は体を伸ばし、深呼吸した。朝が心地よいと人生の幸福度が高いらしいし、一日のパフォーマンスにもつながると聞いたことがある。そのため僕は毎日5時30分に起きて、朝滝行している。
スヤスヤとソファで眠る少女はどこか悲しそうな顔をしていた。嫌な夢でも見てるのか。
こういうのは起こした方がいいのだろう。
僕は優しく少女の体を揺らし声を掛けた。
「起きて」
……全然起きない。さらに揺らし声を掛け続ける。
ビクッと体が動きゆっくり目を開けた。
「んぅん……」
少女の前に広がるは中世ヨーロッパ風の部屋に朝日が差し込む幻想的な部屋だった。
「起きたか」
その声を聞いて少女はどこか安心して、僕の方を見る。
「あなたは……」
「僕の名前はジン。君が地下で倒れていたから連れ出したんだ」
まぁ親切で行ったのは嘘だ。見捨てようとしてましたなんて言ってしまえば雰囲気ぶち壊しだ。
「あなたが……」
すると、突如として少女は泣き出してしまった。限界が来たのだろう。
ただどうしようか。僕はこう言う時どうすればいいか全くわからない。
ここは兄を参考にッ。
「安心して、もう大丈夫。僕がいるから」
自分で言ってて虫唾が走る。僕は兄の凄さを思い知った。
ただ――。
さっきより泣き出してしまった。これはどう言うことだ?僕は数百通りの可能性を頭で巡らせ答えを導き出す。
これは……安心からの涙。普段はどこか演じて我慢しているのが人というもの、それを外したからこそ泣いてしまうということだろう。
つまり。
泣き止むのをただ待つべし。これが答え。
面倒くさいな、人って。けど、これも僕の理想には必要なことだ。素直に待つか。
と、考えてたら急に少女が手を掴んできた。
……人に触れていたいと言うことだろう。仕方なく僕は掴まれることを許す。
――そして僕は座りひたすら待った。
しばらくして、少女は落ち着いた様子。
……泣き止んだか。
少女の目は少し腫れ鼻が赤くなっている。
「もう大丈夫よ」
少女が言った。
「そうか」
僕はそう言って立ち上がり、朝日を眺めた。
「君名前をなんという」
少女に質問をする。
「私は、ティマと言います」
銀髪が綺麗な少女が答えた。
「ティマか。ティマはなぜあの場所に居たか覚えているか?」
あそこに居た理由などほとんど決まりきってるがね。
「私は、二日前お母さんと一緒に出かけたわ。その帰り道の夜道で男の人たちに連れ去られ目覚めたらあそこに居て……」
まぁそうだよね。ありきたりだが当人にはとても辛い理由だ。流石に僕みたいなレベルじゃないと自分から捕まりにはいかない。
「ティマ。君はこれからどうしたい」
僕はティマに問いかける。
「私は……奴が許せない。私と同じような目に遭っている子を、世界の不条理に苦しむ子を助けたい」
「なるほど、ただ奴らは、世界は、強大だ。一筋縄ではいかない」
「奴らについて知っているの?」
ティマは僕の目を見つめた。
「あぁ、奴らは世界の裏側で、世界征服を企む存在。そのためならどんなに酷いこともする輩だ」
とりあえずそれっぽく僕は言った。
「……お願い。あなたに忠誠を捧げるから私に抗えるだけの力をッ」
よし来た。これは配下になりたいと言うメッセージ。来なかったらこっちから言うところだったがちゃんと言ってくれた。
見たところエルフでなんか頭良さそうで有能そうだし絶対に配下の1人として迎え入れたかった。見捨てようとしてたことを反省するほどに。
「よかろう、ティマよ。君は今日から僕の配下だ」
「わかったわ」
彼女は頷いた。その目には確かな決意が見えた。
「僕らの敵は原罪教。世界の裏に潜む教団だ。それに対抗するために、僕らはそれ以上の力で押し潰さなければならない。覚悟はいいか」
「ええ。私は絶対に奴らを許さない」
いいね。これだよこれ。このプレイ、心に来るものがある。
あとは、名前だ。ジンのまま組織で活動すると僕だと身内にばれかねない。
僕は一瞬にして黒のスーツに着替えた。そして、朝日を背景にティマを見つめる。
「我が名はヒヅキ。この名が僕の本当の名だ」
ヒヅキ、漢字だと日月。日と月を合体させた名前だ。
「ヒヅキ……。わかったわ」
彼女はゆっくりと頷いた。そして彼女は言った。
「困難な道のりになるでしょうけれど、私はあなたに並べるように努力をするわ」
そのいきだ。いい感じになってよかった。まぁ原罪教なんて結局そこらの盗賊だろうけどね。いくらでも変えは効く。そこらへんの盗賊を原罪教に見立ててやれば信じるだろう。きっと。
あとそうだ重要な事を忘れていた。組織の名前だ。
「そうか、ならついて来い。そして新たな時代を切り開くのだ。その組織の名は『ノワール』」
黒という意味だがシンプルでかっこいいだろう。
「いい名前ね」
だろう。僕のネーミングセンスだから当然だ。ここは自負している。
「組織拡大のためにも人手を集めなくちゃね。それに私達の拠点も」
「あと資金もだな」
こんな感じで僕はエルフの少女ティマをゲットした。
これで僕の人生でやりたい事の一つが叶いそうだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そんなこんなで僕は今、家族と話している。
「ねぇこの子メイドにさせましょ!それならこの家に住まわせられるでしょう」
母がそういうと父が答えた。
「それはいいな、そうしよう」
「やった!ティマちゃんよろしくね!」
姉が言いった。続けて兄も言う。
「困ったことがあったらなんでも言ってね」
「皆さん。ありがとうございます」
ティマが嬉しそうに答える。
……ちょっとまて。なんだこのティマ人気は。
時は遡りティマのこれからの寝る場所について考えてた時。姉が僕の部屋をノックもせず突撃してきたのが始まりだ。
姉のせいでティマが家族に見つかってしまったから、この子親を亡くして住む場所もないと一応嘘ではない事を言って誤魔化すと、次第に家族達は目を輝かせティマについて色々話を進めて、今に至る。
すると母と姉が愉快な足取りでティマを連れてどこかへ行ってしまった。
まぁ、表はメイドで裏は秘密の組織ってのはいいけども。うーん……いやこれ結構いいな。ちょっと焦ってたけどだいぶいいかもしれない。
廊下にはガシャガシャバン!ドン!と侵入者でも出たかのような音が響く。
そんな中、ティマ達が帰ってきた。
どうやらメイド服を着させに行っていたようだ。
目の前には白と黒を基調とし、頭にカチューシャをつけている。銀髪がメイド服に統一感を与えとてもスタイリッシュだ。僕と同い年と思えないほど大人びた格好になったティマは家族やメイド達の目を釘付けにした。
「可愛いぃ」
姉と母が目を輝かせている。
「今日からは私達が家族と思っていいのよ」
「なんでも頼ってね」
完全に惚れ込んでるな。これから大丈夫だろうか。
「あっそうだティマちゃんの所属は誰にします?」
母が言った。メイドは家族の中の誰かについてその主人を中心に生活のお手伝いをする。
「ティマはジンにつくといい」
父のがそう言うと姉が反応した。
「えぇー。私のとこにしてよ」
「ティマを連れてきたのはジンだ。それにまずはティマの意見だ。どうだ?ティマ、ジンの元はいやか?」
「私は……ジンさんのところに行きたいです」
ティマが答える。
「そうか。わかったかジン。しっかりと見てやれよ。あとマリカも潔く諦めなさい。喚くのではないぞ」
「はい……」
姉は残念そうにしながら返事をした。珍しいな。こんなにも潔いなんて。
第十一話も読んでいただきありがとうございました。
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