第10話 『鍵のかかった扉開け講座』これで君も扉開けマスターさ
なんやかんやでボスを倒した。ゆえにこの施設ももう攻略したと言っても過言では無い。ただ一つ問題があるとすれば――ここ何処なんだ?
来た道を全く覚えていない。
こりゃ困った。道は四つ。そのうちのどれかが正解というわけか。
「ふむ……ここだ!」
確信があるわけじゃないただ何かに導かれるように運命に沿うように僕は進んだ。
アーチ型の静かなトンネルの天井からは水滴が落ちてくる。隅は苔むしていて、水が流れていた。
「ボス戦結構いい感じだったから満足だ。強さはまぁそこそこで子供の僕でもなんとか倒せるレベルだった。……原罪教。なんか面白そうだ」
通路には僕だけの足音が不気味に響く。変わり映えのしない景色。その退屈にもなりつつあるトンネルに一つの扉が見えてきた。扉は鍵がかかっている。
こんな時とってもいい解決法が一つある。
これを学べば、いつか誘拐されて閉じ込められても助かるかも。ぜひ覚えておくといい。
まずはStep1。
1メートルほど距離を取る。大きさ分厚さ頑丈さ重さ、細かく観察をして隙を探す。
そしてStep2。
その扉に向かい敬意と謝罪を込めて一礼。そして深く見つめる。
最後にStep3。
拳に力を思いっきり込めて。
あとは打ち込むだけだッ!
「ほらね開いた」
これでみんなも扉開けマスターだ。是非試してみてくれ。
「よぉし!行くぞぉ!」
と、僕は意気込んでいた。ただ待ち受けていたのは重苦しい空気。
ボキッ。何か足で踏み潰してしまった。
「あっ」
それは人骨だった。放置は良くない。しっかり片付けないと。
僕は丁寧にキックを入れ、隅に蹴飛ばした。バラバラになったけど大丈夫だろう。言うて人骨だ。
「これでOK」
また歩き出すと見えてきたのは牢獄。もう錆びれて所々折れいる。これじゃ牢獄の意味はもうないだろう。
人骨をある程度隅に寄せながら進むとまた一つの扉が僕を出迎えた。
僕は一礼し、扉をスマッシュッ!!した。
また同じような光景。牢獄が並び人骨が床に散りばめられている。その床は苔むしていて、少し滑りやすくなっていた。
ただその中で一際大きく頑丈な檻が、一番奥の角を曲がるとあった。その横には拷問場があり色々な痛々しい器具が揃っている。
その拷問場には十字架には死体が架けられていた。まだ死んで数日も経ってないと言った感じかな。
そして牢獄には。銀髪に水眼をした、美しい少女が倒れていた。こっちはまだ息があるようだ。目立った外傷もなし。
とは言っても僕には関係ないし、助ける理由もない。とりあえず見なかった事にして回れ右をして歩き出す。
その瞬間。突如として少女の魔力が僕に繋がった。干渉をしてきたのだ。
少女、ではなくまた別の存在によるものか。
「そこ人間よ……助けてくれないか」
何処からか声が聞こえた。
「誰?」
「俺の名前は……サ…、…ン……サンだ」
サン?san……太陽?
「サンとても明るそうな名前だね。で?サン、助けて欲しいとはどうしたんだ?」
「この娘を助けてはくれないか?死なれたら困るんだ。ただ俺の今の力じゃここから出すことはできなくてな」
「それで僕に助けて欲しいと」
「あぁ。おぬし以外に助けられるものがここにいないのだよ」
「いいかいサン、こちらにメリットを示さないと。この僕にお願いをするんだから、それ相応の態度で、メリットを示したまえ」
「クッ、つれぬ。仕方ない……」
サンは少し諦めた様子で言った。
「どうかお願いします。この娘を助けてください。助けてくれるならば、あなたに、知識と力を与えましょう。この娘も好きにしていい、俺が許可します」
何を俺の物としてこの子を扱ってんだ?こいつ何者だ。僕の偏見だが、おそらく相当なロリコン……。
「今何か失礼なこと考えたか?」
「この僕がそんなこと考えるわけがないだろう」
危ない危ない。さすがにバレるのか。感情の揺らぎを見たのかな。だとしたら相当な……。
「そうか……」
「知識と力、具体的には?」
「俺はなんでも知ってる。気になることは全部教えよう。長く生きた俺ならなんでも答えられる。古代魔術もだ」
「ふむ」
「どうだ?」
「上から目線なのは気に入らないが、まぁやりたいこともあるしいいよ」
「本当かぁ!喜ばしいよ」
この子見たところかなりポテンシャルがある。師と弟子の関係。師匠プレイをしてみたかったんだ。
それに配下として迎えれば、こんなことも……。
「全員揃いました」
隣に立つ女性が言った。
目の前には何百人という人数が列をなして並んでいる。
「ふむ」
僕は一番高い豪華な席で足を組み見下ろしていた。
「敬礼!」
1人が言うと一斉に配下達は寸分の狂いもなく揃って敬礼をする。
そして配下の中でも特に強いメンバーが前に出て、膝をつく。それに合わせ他の配下達も膝をついた。
「主様、準備が整いました」
「計画に狂いはありません」
その言葉を聞き僕は余裕を持って言う。
「そうか、ならば始めよう。これからは我らの時代だ」
「はッ!」
……と、こんなことも。フフフ、これはやりたい。
「で、好きにしていいんだよな」
「あぁ。死なないならいい。好きに家庭を築いてもいいし、雑務を任せても」
「僕にそんな趣味はないが、好きにしていいんだな。感謝する」
「珍しい奴だな」
「そういや君なんなんだ?肉体を持ってないようだしエネルギー体か」
「俺は……まぁそんな感じだ」
「そう」
あまりスッキリはしないがその答えで今は満足しよう。
「俺はしばらく眠りにつく。力を使い過ぎた」
突如としてサンは言った。
「そうか。知識と力は起きてからきっちりと教えてもらうよ」
「……あぁ」
サンが掠れた声で言うと干渉してきた魔力も戻り、水滴が落ちる音だけが響く。
僕は、檻を片手で破壊し、小柄な少女を抱えた。
髪が綺麗だな。顔立ちも整っている。女性とはこんな感じなのか。家ではうるさい姉と母しかいないし、前世なんて女性と話した記憶がほとんどない。最後に話したのは幼稚園くらいの時だろうか。ちなみに前世の母は僕が産まれてすぐ他界したから、もちろん話したことない。
と、観察していると耳が尖ってることに気がついた。
……この子エルフだ。
この世界にはヒト属以外にもいるのは知ってたが本物を見るのは初めてだ。
変な感覚だ。女性に慣れていなさすぎるのだろう。治さなければ。僕の目指すかっこいいは女性に怯えるような姿じゃない。
女性に怯えてるなんて笑える……。
そんなことあってはならない。手を打っておくか。
先ほど通り、扉をスマッシュ!して先を急いだ。
超長い螺旋階段を駆け上がったり下がったり、別れ道を全て網羅する勢いで突っ走ったりして、ようやく見覚えのある場所に辿り着いた。
「ハァハァハァ、やっと着いた」
ここは最初の部屋。研究室だ。この扉を開けばもう帰れる。すぐに扉を開け階段を駆け上がる。
「あぁ、空気が美味しい」
一気に空気が澄んで、涼しい夜風が吹いていた。
「この子、一度何処かに寝かせておかないとな」
僕がこの子を抱えてパーティーに戻るなんて絶対にあり得ない。
僕は会場に静かに忍び込んで誰もいないソファに寝転がせて毛布をかけておいた。これで大丈夫だろう。
「さて、急いで戻らないと」
ひっそりと息を潜めて、いかにもずっと居ました的雰囲気を漂わせながら僕は隅でお皿に料理をよそっていた。
完璧だろう。誰も気づきはしない。
そのはずだった。
「ジン!」
これは兄の声だ。もう気付かれたか。
「グリル兄さん」
「もう、ジン心配したんだからね。何処に行ってたの」
「ちょっとトイレに……」
「トイレ?」
「一気に食べ過ぎてしまって」
「そうか……無事なようで良かったよ。本当びっくりしたんだからね。大事な用事ができたとか言って急に飛び出していくのだから」
「あはは」
流石に焦り過ぎたな。反省だ。
まぁそんなこんなで、パーティーも無事終わり馬車で帰っていた。あの子は先に家に送っておいた。空の旅は快適だっただろう。
夜空にはもう月はない。
こっちの世界にきて早くも10年か。特に大きな出来事はなかったけど、あと5年くらいしたらつまらない日常からもおさらばだ。
第十話も読んで頂きありがとうございます。
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