囚われのBランク ― 魔族の転移陣
◆ 森を裂く悲鳴
日が沈みきる前、森の奥から――
焼け焦げる臭いと、甲高い爆ぜる音が響いた。
「マズい! ガレスたちの方角だ!」
「急げ!」
先頭の馬車が急停止し、隊列が乱れる。
ドナートの木盾がガタンと揺れ、ノーラの身体がよろける。
「ど、どうするの!?」
「決まってる——助ける」
セルグレンは迷いなく盾を構え、リゲロが短剣を抜いた。
ジージーは短杖を握り、真っ直ぐ前を見た。
その瞬間、風を切る黒い影が四つ――
森の木々を折り飛ばし、防衛線へ襲いかかる。
『ギィィ……ッ!!』
黒い皮膜の翼。
縦二つの瞳孔。
魔王軍──“翼魔鬼”グラシア。
(っ……! 気配が、濃い……!)
◆ 初撃
「《押し留めろッ!》」
セルグレンが盾を叩く。
その前にリゲロが滑り込み、脚を払って一体を転ばせる。
「おいおい、強すぎんだろコレ!」
「後ろは任せて! 撃つよ——」
「《炎弾魔法!!》」
ノーラの炎弾が一体の翼に当たり、そのまま地面へ叩き落とす。
(やった……!)
だが、息をつく間もなく
森ごと爆ぜる黒炎が視界を覆った。
爆心の向こうから、
悠々と歩み出る二つの異形。
◆ “魔軍下士官”登場
一人は、大剣を肩に担ぐ黒鎧の巨漢。
その脚が踏み出すたび、地を焼く。
「俺はヴァルガン。大屠殺の黒刃だ」
もう一人は、薄紫の髪をなびかせた魔女。
嘲笑を浮かべ、指先に転移魔法陣を灯す。
「そして私はミルヴィア。転送を司る可愛い魔法使い♪」
ヴァルガンは顎でガレスを指した。
彼の足元に——
血を滲ませ倒れている ガレス がいた。
「余ったBランクか。まぁ、“サンプル”としては十分だろう」
「くそっ……! 勝手に……連れてくな……」
ガレスが、歯を食いしばって鎖を引くが、
魔女の陣はすでに輝きを増していた。
「ミナ! 索敵!!」
「……すぐ!」
ミナの全身が淡く光り、
初めて目に見えるほど強い風が巻き起こった。
「仲間を……呼ぶ!!」
空気が裂ける。
◆ 仲間を呼ぶ Lv2 ——発動
黒い蒸気が地を覆い、
そこから金属音と共に何かが立ち上がる。
ガチャガチャ……
骨だけの戦士達。
だが、ただの骸骨ではない。
亡者兵。
三体が前衛に並び、
ミナを中心に霊気の陣形を取った。
「……今度は、見えやすい形で守るから」
「ミナ……!!」
◆ 反撃開始
「《二連突き》ッ!」
リゲロの短剣がヴァルガンの脇へ滑り込む。
だが——火花だけ。
「チッ、鎧が化け物じみてやがる!」
「《崩し》だ」
セルグレンが盾で体勢を崩す。
「今ッ!!」
「《魔力拍》——ッ!!」
ジージーの短杖が、
ヴァルガンの頸の継ぎ目へ叩き込まれる。
ズガン!!!
巨体がたたらを踏み、地をえぐった。
(……効いた!)
「ちっ、鬱陶しいガキ共!!」
ヴァルガンの大剣が横薙ぎに走り、
木々が一斉に吹き飛ぶ。
「——!!」
骨兵三体が盾のようにジージー達の前へ立ち塞がり、
粉砕されながらも攻撃を止めた。
「ミナの……戦いだ」
震える声だが確かな強さ。
◆ 魔女の詠唱
「そろそろいいわ♪
サンプル君は連れて帰るし、
あなた達は邪魔だから散ってもらうわね」
ミルヴィアが地をなぞる。
巨大な転移魔法陣が森一面へ広がった。
「マズい!!」
セルグレンが叫ぶ。
「ガレスを!!」
リゲロが駆けだす。
「ミナ、援護!!」
「任せて!!」
霊気の鎖が魔女の足を捉える。
「……ちょっとはやるじゃない」
ミルヴィアは笑う。
「だけど遅いわよ?
転移は——もう起動した」
光が爆発的に強まった。
◆ 最後の距離
ジージーは魔力の奔流へ飛び込む。
「ガレス!!」
「来るな! 巻き込まれ……」
手が触れた。
その瞬間。
視界崩壊。
◆ 奪われる世界
天地がひっくり返り、
光と闇が反転し、
鼓膜を破る高周波が脳を刺した。
「ジージー!!」
「セル!!」
「ミナァ!!」
耳鳴り。
重力の消失。
肉体の境目がほどけていく。
(まだ……離さない……!!)
ジージーは
ガレスの腕を必死に掴んだ。
その力が——
魔法陣の中心へ二人を引きずり込む。
三人+一体。
世界から消えた。
◆ 着地 —— よろしくない形で
ドシャアッ!!!
硬い岩の地面へ叩きつけられ、
肺から空気が奪われる。
「ごほっ……! ここは……?」
辺りには風の音しかない。
緑がひとつもない荒野。
空気は乾きすぎて、喉がひりつく。
ジージーは立ち上がり、
周囲を見渡す。
「セルグレン!? リゲロ!?
ミナ!! ガレス!!」
「ここだ」
セルグレンが岩陰から現れる。
リゲロも、足を引きずりながら近づく。
ミナは霧のように漂い、まだ不安定。
だが。
「ガレスが……いない」
ジージーの心臓が凍りついた。
魔族に 連れ去られた。
◆ 不気味な空
その時、空に黒い影。
巨大な四翼の怪鳥——いや。
禍々しい魔力。
魔王軍の軍旗。
「……ここは」
セルグレンが低く呟く。
「宙海連邦でも、湖畔公国でもない。
山脈をいくつも越えた西の大陸のようだ…」
風が、戦の匂いを運んできた。
ジージーは、短杖を強く握る。
「探そう。
ガレスを。
そして——帰る方法を」
荒野の向こうへ、
歩みを進める。
⸻
◆ 後書き
✔ ガレス(B)は魔族に拉致
✔ ミナ《仲間を呼ぶ》Lv2(スケルトン登場)
✔ ジージー達は西の大陸へ転移
✔ 次章は “未知の大地でのサバイバル” へ突入!




