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Staff Hero ― 支える勇者 ―  作者: 和泉發仙


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「湖畔亭の夜宴 ― 小さな英雄たちの祝杯」


報告を終えギルドを出て、

夜風を頬に受けながら――


「「かんぱぁぁーい!!!」」


チャリンッ!

湖に響くように、グラスの澄んだ音。


レストラン「湖畔亭」。

湖を見下ろす特別個室。

水面に揺れる光を、

豪奢なシャンデリアが写し返す。


席には

ジージー、セルグレン、リゲロ

マリーヌ、ルーシー。


テドラとミーロは休養のため、孤児院へ戻っている。


テーブルは皿が“城壁”のように積まれ、

芳しい香りと湯気に包まれていた。


――ようやく、戦いの夜が終わった。


◆ 豪華な料理とジージーの小さな贅沢


「う、うまっ……なにこれ……!」


ジージーの目が、

獣人の子の丸太ん棒オモチャより大きく開く。


「ふふっ、喜んでもらえて光栄ですわ!」

マリーヌは満面の笑顔。


「湖畔亭でも最高級の川魚ムニエルですのよ!」


リゲロは涙ぐむ。


「……俺、今、戦ってよかったって心から思ってる」


「お前はいつも思ってろ」

セルグレンも珍しく二皿目を要求。


マリーヌは誇らしげに胸を張る。


「皆さまの武勇へのご褒美!

 帰りが遅れた方には……出ませんわ〜?」


「ひでぇな」

「ご褒美の格差社会だ……」


笑いが、緊張を溶かしていく。


◆ ルーシーの芽生えた想い


「ジージー、これ……ありがとう」

ジージーからプレゼントされたペンダントを見せて

小声で囁き、

ルーシーは照れながら言った。


「テドラ、すっごく喜んでた。

 私もね、誰かの役に立てること、したいんだ」


ジージーは一瞬言葉を失った。


(この子は――誰かのために動ける子だ)


「……うん。すごく助かってるよ」


ルーシーの笑顔は、

湖の明かりより眩しく見えた。


◆ ミナ、見えない乾杯


耳元に、ふわり。


「乾杯、参加できないの、少し寂しいね」


ジージーは木のグラスを

そっと左に傾ける。


「ミナにも乾杯。

 いつもありがとう」


「ふふっ、うれしい」


確かにそこに“居る”。


それだけで、心強い。


◆ 贈り物 ― 魔法の鞄


食後の余韻が残る中。

ジージーは小さく深呼吸し、

帰り際、マリーヌを呼び止めた。


「これ、渡したくて」


ジージーは背負った袋から

普通に見える二つの鞄を取り出した。


「ダンジョンで見つけたんだ。

 もしできたら……」


少し視線を泳がせながら続ける。


「孤児院に、食べ物や日用品を

 届けるために使えないかなって」


マリーヌは瞬きする。


「孤児院への支援……?」


「うん。

 戦いが終わったからって、

 この町の子たちの生活が全部

 良くなるわけじゃないから」


ジージーの表情は、

戦いの時よりずっと真剣だった。


「私たちは潜ってる間も…

 地上で子どもたちの暮らしが

 少しでも良くなれば」


マリーヌは唇をぎゅっと結び――

目を輝かせた。


「……ジージー様は

 いつも自分のことより

 誰かの幸せを考えているのですね」


ジージーは慌てて手を振る。


「ちが、ちがう!

 私たちが勝手に助けられたからだよ!

 その恩返しがしたいだけ!」


その瞬間。

マリーヌの胸に“決意”が芽生えた。


「でしたら――

 その想い、わたくしが必ず形にしますわ!」


鞄をぎゅっと抱きしめる。


「この鞄、誰よりも正しく、

 そして強く役立ててみせます!」


ミナが、見えない笑顔で囁く。


「やっぱり優しい子ね、ジージー」


◆ 鑑定 ― 共有収納鞄


マリーヌの屋敷。

執事アーサーが白手袋越しに鞄へ触れると――

青い魔法陣が浮かび上がる。


「……これは“共有収納鞄”です」


「共有……!?」

ルーシーが身を乗り出す。


「二つ一組。

 片方に入れた物がもう片方へ即転送されます」


「それって!

 迷宮とここを繋げられるってことじゃん!」

テドラの声が弾む。


「ただし――魔力を消費します。

 特に、危険すぎる物は拒絶されるはずです」


(つまり)


回復薬や食料は――送れる。


「ジージー様はコレを孤児院の支援に使いたいですって。彼女らしいお考えですわ」


と、マリーヌが説明すると


ルーシーが眉をひそめて叫んだ。


「ちがうよ!!」


マリーヌ「えっ!?」


「ジージーお姉ちゃん達は

 あっちで命がけなんだよ?

 私たちこそ、助けたいよ!」


テドラも力強い。


「ジージーはいつも、自分より

 誰かのために動くんだよ?

 だから――今度は、私たちが支える番!」


マリーヌの視界が、ほんのり滲んだ。


「……そうですわね

 わたくしたちが、

 彼女たちの“帰る場所”を守る番ですわ!」



そして、宣言へ――


ルーシーが小さく、しかし強く言った。


「……錬金術、学びたい。

 ジージー達を、支えられるようになりたい!」


テドラも拳を握る。


「私も!

 自分の手で、守れるようになりたい!」


マリーヌの胸が高鳴る。


「なんて素敵…!!」


勢いよく立ち上がり、宣言する。


「決まりですわ!!

 わたくしたちは――

 ジージーたちの補給部隊ですもの!!」


「おーっ!!」

ルーシー&テドラ


アーサー

(お嬢さま…昔より生き生きなさっておられる)


◆ 動き出す未来


「ではお嬢さま、錬金工房への手配を」


「よろしくねアーサー!」


三人は手を重ねた。


ジージーたちが迷宮で戦えるのは

ここから――彼女たちが繋ぐ命綱のおかげ。


まだ誰も知らない。


この夜、

冒険者と街を結ぶ 小さな補給隊 の誕生は――

後に、彼女たちの命を救う“奇跡”の始まりとなることを。


挿絵(By みてみん)

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