第3話『沈黙が歩いてくる』
【前書き】
母核を倒した影響が、迷宮全体に波紋を起こす。
魔物の“逃げる”異常。
静かすぎる4F。
罠と幻惑のみの5F。
迷宮は、生きている。
そして今――牙を研いでいる。
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◆1 3F:逃げる魔物たち
階段を降りると――
ゾワッと全身に鳥肌が立つ。
「……気配が、遠ざかってる?」
エルナの指先が震えた。
通路の向こうに影。
狼型魔物が一体――こちらを見た。
「来るぞ!」
剣を抜くガレス。
だが――
「……っ!?」
狼は逃げた。
尻尾を巻いて。
音もなく。
命乞いのように。
「……どういうことだ?」
リゲロが顎に手を当てる。
魔物たちは、戦わず消えていく。
物陰に、暗闇に、穴の中へ。
ミナが囁く。
「怖がってる。
“上にいる何か”を」
ジージーの背筋が凍る。
(迷宮が……私たちじゃなく
“何か別の存在”を恐れてる?)
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◆2 4F:静寂の墓場
「ここが……母核の階層」
破壊されたはずの部屋は、
何も残っていない。
血痕も、爪痕も、
魔物の亡骸も。
まるで――
最初から何も起きなかった世界。
「……嫌な場所だ」
セルグレンの吐息が白く揺れる。
ガレスは笑った。
「楽勝って証拠だろ?」
(違う。
これは……“警告”だ)
ミナは壁に触れ、小さく震える。
「怒ってる。迷宮が」
「迷宮が……?」
ジージーは短杖を握り直した。
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◆3 5F:罠の回廊
通路は狭く、湿気が濃い。
「雷気あり。罠だ」
セルグレンが床を指すと――
バチッ! 火花が散った。
ユルクが地図を確認する。
「この層……全部“幻惑迷路”かもしれません…!」
レオニードが苛立つ。
「もう罠は飽きた。
敵がいない迷宮など、ただの廃坑だ」
ガレスが前を蹴飛ばす。
「ガンガン進むぞ!」
その瞬間。
――通路が動いた。
グワァァァァ……!
床が傾き、壁が回転し、
天井が閉じる。
「閉じ込めはじめやがったか!」
エルナが叫ぶ。
ドナートが盾を構えて叫ぶ。
「守ります!!」
「無茶すんな馬鹿!押し潰されるぞ!」
リゲロが引き戻す。
視界が歪む。
通路が変わる。
判別できるのは――
仲間の声だけ。
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◆4 迷いの中で
ジージーは息を整えた。
(落ち着いて。聞く)
周囲は闇。
床と壁の境さえ見えない。
ミナが手を取る。
「……右。風が動いてる」
「風……?」
「外に繋がる“本物の道”は、息をしてるの」
ジージーの目の前で、ミナが指を伸ばす。
そこだけ――闇が薄い。
「セルさん! こっちです!」
セルグレンの影が現れた。
「ジージーか……!」
仲間が次々と集まる。
ノーラ、ユルク、トリス、ドナート、エルナ。
ガレスとレオニードだけ――まだ来ない。
ガレスの怒声が遠く響く。
「チビども!そこから動くな!
俺がそっちに行ってやる!!」
(いや……たぶん逆方向……)
ミナが警告する。
「ガレスさん……罠の“中心”へ向かってる」
「レオニードさんも……!」
セルグレンが唸る。
「まずい……あっちがやられるぞ」
ジージーは短杖を握りしめた。
迷宮は、彼らを分断した。
弱くて、互いを知らない寄せ集め隊を――切り離そうとしている。
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◆5 怒る迷宮
ガレスが叫ぶ。
「迷宮ごときがッ……!」
その後ろで
低い唸り声が響いた。
「……来る」
ミナの声は、かつてないほど震えていた。
「大きいのが。
怒ってる。
侵入者を殺す気だ。」
ガレスとレオニードが踏み込んだ先から、
何かが迫ってくる音。
ズ……ズズ……!
石の軋む音。
「すごく……悪いのが来る……!!」
ノーラが泣きそうな声で叫ぶ。
「ど、どうすれば……」
ジージーは一歩前へ。
迷宮中に響くほど大きな声で叫ぶ。
「まず――合流!!
戦う前に、絶対に全員で!!」
ガレスの怒声が返る。
「言われなくてもそうする!!
チビ、死ぬなよ!!」
その声は――
少し震えていた。
迷宮の闇が、牙を鳴らす。
次回:
第4話『寄せ集めの反撃』
Bランクすら恐怖する“それ”が動き出す。
ノーラとジージーの魔法が光る。
そして……
初めて、寄せ集め隊が“連携”する。




