寄せ集め遠征隊、始動
【前書き】
ダンジョン打ち上げの数日後。
ジージーたちは再び、迷宮へ潜るためギルドに呼び出される。
だが今回は、三人+幽霊で気楽に潜る探索ではない。
Bランク冒険者を頭に据えた、混成パーティによる「正式攻略任務」。
性格の悪いBランク、雑にまとめられたC・Dランクたち――
空気の悪いスタートの中、ジージーたちはどんな立ち位置を取るのか。
そんな「寄せ集めダンジョン遠征隊・結成編」です。
――では本編をどうぞ。
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◆1 朝のギルドへ
朝の風はひんやりしていて、迷宮の石の匂いよりも、パン屋の焼きたての匂いの方が強かった。
「……緊張してる?」
ジージーは肩にかけた短杖の重みを確かめながら、隣を歩くセルグレンを見上げた。
「してないと言えば嘘になるな」
セルグレンは、いつも通り無愛想だが、その歩幅は少しだけ速い。
「なんたって、正式に“攻略隊”を組むって話だ。ギルマスが直々に呼びつけてくるなんて、そうそうねぇ」
リゲロが肩をぐるぐる回しながら、気楽そうに笑う。
「迷宮の方も、俺たちがボスぶっ倒してから、他のパーティがちょこちょこ様子見してるらしいぜ? “本番が開いてる”のを、ギルドの連中もようやく確信したってわけだ」
(あの石の階段……)
ジージーは、あのとき見た“真のダンジョン”への入り口――5Fへ続く石階段を思い出す。
重く、深く、底が見えない。
でも、怖さだけじゃなく、胸が高鳴るような期待もあった。
『次は、もっと準備してから行こう』
そう決めて一度地上へ戻り、休養して、鍛錬して。
打ち上げで肉とスープを限界まで詰め込んだ後、数日。
「おはよう、みんな」
ふわりと、耳許に風が触れた。
見えない誰かが、ジージーの横に並ぶ。
「おはよう、ミナ」
ジージーは小さく口だけ動かして囁いた。
「今日は“普通の人たち”も一緒なんだよね?」
「ああ。だから、いつも以上に静かに頼む」
「任せて。ジージーと、セルと、リゲロにだけ聞こえるようにするわ」
ミナの声は、優しくくぐもった響きでジージーの胸に落ちた。
(ミナがいてくれる……それだけで、だいぶ安心できる)
三人と一体は、いつもより少しだけ引き締まった顔で、ギルドの扉をくぐった。
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◆2 奥の部屋へ
朝のギルドは、いつものざわめきに満ちていた。
依頼掲示板の前に群がる冒険者。
受付窓口で値段交渉する新人。
昨夜の酒がまだ抜けていなさそうな顔。
その中で――受付のアリーナが、ジージーたちを見つけて手を振った。
「ジージー! セル! リゲロ! 早く早く!」
「おはようございます、アリーナさん」
「おはよっす」
「おはよう」
近づくと、アリーナはカウンターから身を乗り出し、小声になった。
「例のダンジョンの件でしょ? ギルマスから直々にね、“奥の作戦室まで通してくれ”って。ちょっと緊張するかもだけど、あんたたちなら大丈夫よ」
それから、ニヤッと目を細める。
「……それとね、今日は“上のランクの人たち”も一緒だから。変に噛みつかないようにね?」
「噛みつくのは向こうだろ、多分」
リゲロが即答すると、アリーナは「あはは」と乾いた笑いを漏らした。
「作戦室、あっち。もう何人か来てるから」
示された奥の扉へ向かうと、空気は少しひんやりと変わった。
酒と汗の匂いが薄れ、かわりにインクと紙と油の匂いが強くなる。
扉の前で、セルグレンが一拍だけ間を取った。
「入るぞ」
ノック。
短い返事。
扉を開ける。
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◆3 顔ぶれ
作戦室は、普段はギルドの備品管理や隊商護衛の打ち合わせに使われる部屋だ。
長机が一本。
壁には簡略化されたダンジョンの地図。
棚には記録の書類や、古びたダンジョン報告書。
その長机の片側に、すでに六人ほどが座っていた。
「お、来たな」
最初に声をかけてきたのは、Cランクの女戦士だった。
栗色の短髪を後ろで束ね、使い込まれたチェインメイルの上に革の肩当て。
片目の下に小さな傷跡。
くたびれた雰囲気なのに、瞳だけはやたらと強い。
「“短杖のジージー”だろ? 噂は聞いてる。あたしはエルナ・ケイン。前衛。よろしく」
「ジージーです。こちらセルグレンさんと、リゲロさんで――」
「セルグレンだ。よろしく頼む」
「リゲロ。気楽に行こうぜ」
エルナの隣には、華奢な青年が座っていた。
ローブは着ているが、どこか「研究室向き」の顔つきだ。
「あ、あのっ。ぼ、僕はユルク・ハーゲン。探索魔術と罠解除、少々……。あの、その、ジージーさんの戦い方、勉強させてもらってます……!」
「え、えっと……ありがとう?」
(こういうタイプ、学院にいた頃にもいたなぁ……)
それから、Dランクの若者三人。
一人は、筋骨隆々の大柄な青年。
茶色の肌、短く刈った黒髪。
大きな木盾と棍棒を持っている。
「オレはドナート! Dランクだけど、壁には自信あるんで! ぜってぇ前から引かねぇっす!」
もう一人は、痩せ型で目つきが鋭い少年。
軽装、短剣二本。
靴底はやたらと薄く、足音がほとんどしない。
「トリス。斥候兼、雑用。生きて帰ることしか興味ないんで、そのつもりで」
(正直……一番ダンジョン向きなメンタルしてるの、この子じゃない?)
そして、最後の一人。
緊張で硬くなった顔。
淡い茶色の髪を三つ編みにしてまとめ、深緑のローブを着ている少女。
腰には、魔法書を入れたと思しき小さなポーチ。
手には、初心者向けの木製の杖。
「あ、あのっ。Dランク魔法師の、ノーラ・フィオレですっ……!」
か細い声。
立ち上がった瞬間、椅子の脚がギィと嫌な音を立てて、余計に慌てる。
「ご、ごめんなさいっ、すみませんっ」
「落ち着いていいよ。ジージーだよ。よろしく」
ジージーが笑いかけると、ノーラはぱっと顔を赤くして、こくこくと勢いよくうなずいた。
「きょ、今日は、“炎矢魔法”だけでも、お役に立てるようにがんばりますっ!」
(フレアアロー一本勝負か……逆に分かりやすくていいかも)
そんな風に、C・Dランク組とはわりとすんなり挨拶が済んだが――
問題は、まだ来ていない。
部屋の空気に、うっすらとした緊張が漂っているのを、ジージーは感じていた。
(Bランク、二人……)
ミナが、誰にも見えない位置でそっと耳元に囁く。
「この部屋、ちょっと“棘のある気配”が、まだ届いてない。きっと、その人たちの分ね」
「棘のある気配ってなに?」
「つまり……性格、悪そうってこと」
「ミナ、結論が早い」
ジージーが小さく笑いかけた、その時だった。
コン、コン、と重いノック。
次いで、扉が遠慮のない勢いで開く。
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◆4 俺様系Bランク、登場
「すまん、待たせたな――って、お前ら全員もう揃ってんのか」
先に入ってきたのは、ギルマスのダイアーと、副長のエーリッヒだった。
ダイアーは相変わらず樽みたいな胸板で、髭の中から豪快な声を響かせる。
エーリッヒは、その隣で静かにメモを挟んだ板を抱えていた。
「よう、ちびども」
「ちびじゃないです」
ジージーが即座に訂正すると、ダイアーはニヤッと笑う。
「まぁ座れ。紹介が山ほどある」
ダイアーとエーリッヒが部屋の前方に立つと、その後ろから――二人の冒険者が姿を現した。
一人は、高身長の剣士。
金色の髪を無造作にかき上げ、黒いロングコートに軽鎧。
腰には幅広の片手剣。
顎にはうっすら無精髭。
もう一人は、赤みがかった黒髪を後ろに撫でつけ、深紅のローブを羽織った魔術師。
目つきは鋭く、いつも誰かを値踏みしているような視線。
ダイアーが指し示す。
「紹介する。今回の攻略隊の“頭”だ。
剣士の ガレス・ヴォルク。
そして魔法師の レオニード・クラウス。
二人ともBランクだ」
ガレスは、ふっと片側だけ口角を上げた。
「ガレスだ。ま、よろしくな」
視線が、テーブルの面々をざっと撫でていく。
ジージーのところで、いったん止まる。
「……お前が“短杖のジージー”ってやつか」
「はい。ジージーです」
「へぇ。もっとしょんべん臭ぇガキかと思ってたが、…いや思ったより……ガキだな」
「それ褒めてませんよね?」
即座に返すと、レオニードが鼻で笑った。
「口は回るらしい。
……Cランクのくせに、妙なあだ名ばかり先行するタイプだな」
(あ、この人。やっぱり性格悪い側だ)
ミナが、ジージーの背後で小さくため息をついた。
「ガレス、レオ。余計なことは言うな。まだ編成も説明も終わってない」
エーリッヒがピシャリと釘を刺すと、ガレスは肩をすくめた。
「はいはい、副長さま。真面目だねぇ」
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◆5 編成と説明
ダイアーが机をドンと叩いた。
「静かにしろ。
……今回の任務は“ダンジョン第5層以降の調査と、安全なルート確保”だ。
目的は三つ。
一、5F以降の構造と魔物の種類の把握。
二、ボス級の有無の確認。
三、もし可能ならば、6Fまでの安全な往復ルートの仮設定。
――以上だ」
壁の簡略地図の横に、新しく貼られた紙には、5Fと書かれた一枚の白紙があった。
そこには何も描かれていない。
“未知”そのものだ。
「先日、ジージーたちのパーティが4Fの“母核コア”を撃破し、5Fへの本階段が開いた。
よって、その功績を踏まえ――」
ダイアーは、ジージーたちを指さす。
「ジージー、セルグレン、リゲロの三名は、今回の攻略隊に“必須メンバー”として組み込む」
部屋の視線が、一斉にこちらへ向く。
(“必須メンバー”……)
肩が少しだけ重くなる。
「そこに、Cランク前衛のエルナ、探索役のユルク。
Dランクの盾持ちドナート、斥候トリス、魔術師ノーラ。
以上八名に、Bランクのガレスとレオニードを頭として加え、合計十名。
これが今回の攻略隊だ」
エーリッヒが、さらさらと板に書き込みながら補足する。
「編成上の“表向きの隊長”はBランクのガレス。
しかし、ダンジョン内の判断については、経験と状況に応じて、セルグレン、エルナ、そしてレオニードの意見も重視すること。
“俺が全部決める”は禁止だ」
ガレスが、やれやれといった顔をする。
「耳が痛いねぇ。信用ないな俺」
「自覚があるならよし」
(この二人、完全に昔からの付き合いだな……)
ジージーは、なんとなく力関係を理解して、小さく息を吐いた。
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◆6 俺様の本音
「じゃ、細けぇことはともかく」
ガレスが机に片肘をつき、椅子を傾けながら言った。
「人数だけ見れば、なかなか豪華な編成だ。Bランク二人、Cランクが五人、Dランクが三人。
問題は、こいつらが“バラバラ”だってことだな」
レオニードが、頷きもせずに続ける。
「特に、Dランク組は足を引っ張らないようにしてくれ。
これは遊びじゃない。5F以降は、4Fまでの延長線という保証はない」
ノーラの肩がびくっと震えた。
ジージーは思わず口を開く。
「Dランクが心配なら、そもそも連れてこなければよかったんじゃ……」
「人手が要るんだよ」
レオニードが即答する。
「荷物持ち、雑用、先行の囮……役割はいくらでもある」
「“囮”は役割じゃありません」
ジージーが言い返すと、今度はガレスが口を挟んだ。
「おいチビ。
……俺たちはな、“全員必ず無事に帰す”なんて甘い約束はしないんだよ。
危険を承知で潜る。それがダンジョンだ」
「それは分かってます。でも――」
「ジージー」
セルグレンの低い声が、ジージーの言葉を静かに止めた。
「ここは、“理想”を語る場じゃない。
現実を知る場だ」
その目は、ガレスを真っ直ぐに見据えている。
「だが、“囮に使うために連れていく”と明言するのは、確かに違う。そこは言葉を選べ」
一瞬だけ、空気がぴりっと張り詰めた。
ガレスはその張り詰めを、肩を竦めて笑い飛ばす。
「はいはい。悪かったよ。言葉が過ぎた。
――ま、安心しな。
俺は、自分の隊の死人が多いと、酒がまずくなるタチでね」
そう言って、Dランク組をざっと見渡す。
「お前ら。特に魔術師の嬢ちゃん」
「は、はいっ!?」
「死にたくなければ、自分の立ち位置とタイミングだけは絶対に間違えるな。
“炎矢魔法”だけでも、撃ちどころが良けりゃ十分だ。
撃つ前に倒されるなよ」
「……がんばりますっ!」
ノーラは、涙目になりながらも必死に頷いた。
ミナが、ジージーの耳元で囁く。
「この人たち、一応“死なせたくない”って気持ちはあるみたい。
でも、その前提が、私たちとだいぶ違うね」
「うん。……でも、そこはたぶん、ダンジョンに潜ってきた年月の差なんだと思う」
ジージーは、自分にも言い聞かせるように小さく呟いた。
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◆7 出発前ブリーフィング
エーリッヒが、簡略化されたダンジョン図の前に立つ。
「ではルートの確認だ。
4Fの中枢部――“母核コアの部屋”までは、ジージーたちの報告と、前回の探索結果を元に、安全ルートを設定してある」
地図の上に、赤い線が引かれている。
「ここまでは、出来る限り戦闘を避ける。
4Fの雑魚は、すでに他のパーティが数を減らしているし、母核撃破後は全体の出現数も低下している。
だが、完全に“空”ではない。油断はするな」
「了解」
セルグレンが短く応じる。
エーリッヒは続けた。
「母核コアの部屋から5Fの階段に至るまでのルートは、まだ完全には把握されていない。
そのため、ジージーたち三名の記憶と、レイスによる偵察情報――」
一瞬、言葉を止める。
ジージーの心臓が、ドキッと跳ねた。
(レイス――って、ミナの……!?)
ミナもぴくりと揺れる。
しかし、エーリッヒの次の言葉は、少し違っていた。
「……“霊的な痕跡”を感知する一部の神官の報告を元に、暫定ルートを設定している。
ミナという名の幽霊が協力している、という噂は聞いているが――」
そこで、わざとらしく咳払いをする。
「公的報告書には、そう書けないからな」
(あ、やっぱり聞いてたんだ……)
ジージーは、思わずミナの方を盗み見る。
ミナは、困ったように微笑んで肩をすくめていた。
「安心しろ。
――お前らが“ミナ”の存在を、誰にも軽々しく話していないことも、ちゃんと分かっている」
エーリッヒの視線は、ほんの少しだけ柔らかかった。
「公的には、“ジージーたちが4Fの構造を体で覚えている”ということにしておく。
実際、それも事実だろう?」
「……はい」
ジージーは、少し胸を張って答えた。
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◆8 それぞれの決意
説明が一通り終わると、エーリッヒが締めくくる。
「出発は、今日の午前。
この後一時間で、各自装備と荷物の最終確認を済ませろ。
“戻ることを前提とした装備”だけを持っていけ。
以上だ」
ダイアーが、いつもの豪快な声で続ける。
「お前ら。
死ぬな――とは言わねぇ。
ただ、死にそうになったら、“今死んで得られるもの”と“生き延びてから得られるもの”を天秤にかけろ。
迷ったら、“生きてから得られるもの”の方に賭けろ。
それが、冒険者の鉄則だ」
ガレスが立ち上がり、椅子を乱暴に押しやる。
「じゃ、解散だ。
一時間後、ギルド前集合。
遅れた奴は、5Fの最初の罠に突っ込ませるからな」
「物騒な集合罰だな、おい」
リゲロが苦笑いしつつ立ち上がる。
ノーラは、魔法書を抱えて立ち上がった瞬間、ジージーの方を振り返った。
「あ、あのっ、ジージーさん!」
「ん?」
「きょ、今日のこと……すごくこわいけど……でも、がんばりたいです。
もし、その……迷惑じゃなければ、戦闘のとき、立ち位置とか、教えてもらってもいいですか……?」
ジージーは、ふっと笑って頷いた。
「迷惑なんかじゃないよ。
ノーラさんの“魔法”が、今日の鍵になるかもしれないしね」
「そ、そんな、まさか!」
慌てて否定しながらも、ノーラの顔には、ほんの少しだけ光が宿っていた。
エルナが、肩をぽんと叩く。
「アンタら、ちゃんと飯食っときなよ。
とくに魔術師は、魔力だけじゃなくて体力も必要なんだからね」
「は、はいっ!」
ドナートとトリスも、それぞれ無言で頷き、部屋を出ていく。
作戦室には、ジージーたち三人と、ガレスとレオニード、そしてダイアーとエーリッヒだけが残った。
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◆9 出発前の一言
ダイアーが、ジージーたちにぐっと顔を寄せる。
「ジージー。セル。リゲロ」
「はい」
「お前らは今回、“ガレス隊”に組み込まれる形だが、俺の中では“お前らの目”を信用してる。
何かおかしいと思ったら、引き返す提案もして構わねぇ。
ガレスが聞くかどうかは知らんがな」
「ひでぇな、おい」
ガレスが笑う。
「聞くさ。“状況が合ってりゃ”な」
「その“状況が合ってりゃ”が曲者なんだよ、お前は」
エーリッヒが、半分あきれた目で呟いた。
レオニードは、壁に背を預けて腕を組んだまま、ジージーたちをじっと観察している。
「まぁいい。
――ジージー」
「はい」
「4Fのボスを落とした時、お前は“非致死”を捨てたと聞いた」
その言葉に、ジージーの胸が少しだけざわついた。
「捨てたつもりはありません。
ただ、“効かない相手には別の手段を使う”ってだけです」
レオニードの口元が、わずかに歪む。
「ほう。
なら、その“別の手段”が、5Fでも通じるかどうか、見せてもらおうか」
「……見ててください」
ジージーはまっすぐに言い返した。
そのやり取りを見ていたミナが、そっと囁く。
「ジージー、“怖い”と“ワクワク”が半分ずつって顔してる」
「う。バレてる……」
「ふふ。
でも、それでいいと思うよ。
怖くなくなったら、多分、迷宮に食べられちゃうから」
「それは……すごく、説得力あるね」
ジージーは、短杖のグリップを握り直した。
――さぁ、もうすぐだ。
5Fへ。
未知の階層へ。
寄せ集めの十人で挑む、最初の一歩。
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【後書き】
第1話「寄せ集め遠征隊、始動」でした。
•朝ギルド → 奥の作戦室へ
•C・Dランクメンバーの顔見せ
•俺様系Bランク二人(ガレス&レオニード)登場
•ギルド側の目的説明(5F以降の調査とルート確保)
•ミナの存在は“噂レベル”でしか共有されていないが、公式には伏せられている
•Dランク魔法使いノーラの「炎矢魔法しかできない」自己紹介
•出発前のそれぞれの決意
次話から、いよいよ4F~5Fへの実際の“進軍編”に入っていきます。
途中で小さな事故や意見の食い違いを挟みながら、
ノーラの立ち位置や、Bランク組のいや~な性格もだんだん見えてくる感じで進める予定です。




