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Staff Hero ― 支える勇者 ―  作者: 和泉發仙


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旅路の章 ― 砂と風の短編集 ―  ゴブリン防衛戦その3― 右斜面に吹く風 ―

【前書き】


ゴブリンの大規模侵攻。

レーヌ湖畔公国の町ラドゥール──

その丘陵地帯にて、冒険者・義勇兵・町兵たちが迎撃を開始した。


前編では左斜面での交戦と、

《風切り》の隊長ベルドの奮戦、

ジージーたちFランク組の合流が描かれた。


そして今回の中編は、

右斜面で孤立した別働隊の救援戦 が中心となる。


ホブゴブリンの脅威が初めて姿を現し、

戦況は混乱し、

ジージーは“踏み込まなければ誰かが死ぬ”現実と対峙する。


では、物語へ。


―――――――――――――――――――――――――

【本編】


◆ 1 右斜面の煙


ラドゥールの丘は、

南北に細長く伸びた尾根のような地形をしている。


左斜面は前衛が張り付き、

すでに激戦。


右斜面は森が深く、

斜度も急で、戦闘は極めて不利。


そこに配置されたのは、

Cランク冒険者パーティ《風切り》の別働隊、

そして町兵十名。


だが、煙が上がっていた。


「右斜面から狼煙!」

「増援要請です!!」


伝令の少年が涙声で駆けてくる。


セルグレンが険しい目で煙の高さを見る。


「……あの高さ。押されてるぞ」


ジージーは胸をつかまれるような感覚に襲われた。


「ベルドさんの仲間が……?」


「急ぐぞ。Fランクだろうが行くしかねぇ」


リゲロが槍を担ぎ直す。

幽霊のミナはいつものように軽い笑みを浮かべながら漂う。


「ジージー、準備は?」


「……はい!」


◆ 2 森へ走る


右斜面へ向かう道は、

背の高い木々が並び、風が刺すように冷たい。


進むほどに、

ゴブリンの腐臭が強まっていく。


「近いぞ……下がれ!」


Cランクの一人、

紺色の外套を着た女戦士アーシャが木陰から飛び出してきた。


「《風切り》のアーシャさん!」


「ジージー!?なんでここに!」


「救援に!」


アーシャは一瞬だけ迷った。

が、すぐ叫ぶ。


「助かる!ホブが出た!」


「ホブ……!」


通常のゴブリンの倍近い体格。

知能も体力も段違い。


さらに斧持ち、槍持ちが複数。


ジージーは思わず喉を鳴らす。


(これ……セルグレンさんたちがいなかったら絶対詰んでる……)


◆ 3 最前線の惨状


開けた斜面に出た瞬間──

ジージーは息を呑んだ。


町兵五名が倒れ、

Cランク《風切り》のベルドの仲間たちは

血だらけで円陣を組んでいる。


中央でベルド本人が

肩を斬られながらも必死に剣を振るっていた。


「ベルドさーーーん!!」


「来るなジージー!!」

ベルドが叫ぶ。

「ここは……ッ!ホブが二体いる!!」


次の瞬間、

斜面上部から巨体が飛んだ。


ホブゴブリン──

緑黒色の皮膚。

人の二倍の体格。

獣のような脚力。


その斧がベルドの後頭部めがけて振り下ろされる。


「やばいッ!」


ジージーは咄嗟に杖を投げた。


杖は斧の柄にぶつかり、

軌道がずれた。


「ぐおッ……!?」


ベルドの肩に浅く切り込みが走るが、

致命傷は免れた。


「ジージー!!そこから動くなァ!!」


アーシャが怒鳴る。

同時にセルグレンが飛び込む。


◆ 4 Cランクたちの奮戦


セルグレンが剣を構え、

一撃でゴブリン三匹を吹き飛ばす。


「ベルド!生きてるか!」


「なんとかな!」


Cランクの仲間リド、カルナ、スオウも次々に応戦する。


リド(双剣):「ホブを引き離す!」

スオウ(槍):「距離!距離を取れベルド!」

カルナ(短弓):「小型が多すぎる!!」


斜面全体が戦場と化した。


リゲロがジージーの隣で息を整える。


「お前、さっきのは……狙ってやったのか?」


「い、いや……反射で……」


「すげぇじゃねぇか……!」


だが、余裕はない。


ホブのうち一体が、

こちらにゆっくりと歩いてくる。


その目に、

明確な“殺意”があった。


「……ジージー。構えろ」


セルグレンの声が低くなる。


「逃げるなよ。今回は……刺し違えてでも止める気で行く」


ジージーは膝が震えていた。


だが。


(……誰かが死ぬのは、イヤだ)


ホブの牙が光る。


斧がゆっくりと持ち上がる。


そして──


◆ 5 “踏み込む”瞬間


ジージーは前に出た。


「ジージー!?危ない!」


「大丈夫じゃないですけど……行きます!!」


足が重い。

斧の影が大きい。

怖い、怖い。


でも──杖を両手で握る。


「はッ!!」


ジージーの一撃がホブの膝を打つ。


それは、

“倒すため”ではなく、

“止めるため”の打ち込み。


ホブがぐらりと傾く。


「今だ!!」


セルグレンが横から斬り込み、

ホブの脚筋を断つ。


獣じみた悲鳴。


リゲロが槍で押し倒し、

アーシャが喉元に剣を突き立てた。


巨体が崩れる。


森が静かになった。


「……終わった」


ジージーはゆっくり息を吐いた。


膝が震えて座り込む。


アーシャが肩を叩いた。


「よくやった、あんた……!

 Fランクでホブの動きを止められる奴なんて滅多にいない」


セルグレンも短く笑う。


「踏み込んだな」


ジージーは泣きそうになりながらも笑った。


「はい……こわかったです……!」


◆ 6 だが、終わらない


右斜面での戦闘は、

まだまだ終わっていなかった。


森の奥深くから、

大量の足音が迫ってくる。


カルナが顔を上げる。


「第二波……!?そんな……」


アーシャが歯を食いしばる。


「本丸は右だったのか……!」


ベルドが叫ぶ。


「撤退だ!!

 右斜面は陥落する!

 戦線を町側に引き直す!!」


伝令が走る。


「左斜面も後退中です!!

 ギルドマスターが街門前で総指揮に移ったとのこと!!」


ジージーは丘の下を見る。


(……街が……)


煙が、

遠くラドゥールの街のほうにも立ち上っていた。


「右も左も押されてる……」


「街に行くぞ!」

セルグレンが叫ぶ。

「ここで粘っても全滅だ!」


Cランク《風切り》は負傷者を抱え、

町兵を支えながら退却を開始。


ジージーたちもその後に走る。


彼らの背後から、

森を埋め尽くすような“黒い波”が迫ってきていた。


「町が……飲まれる……!」


ジージーは杖を強く握った。


(……次は、街を守る番だ)

【後書き】


今回の中編は、

•右斜面救援戦

•ホブ三体との激戦

•ミナの初戦闘

•ジージーの“踏み込み”

•全体連携の重要性

•ゴブリンキングの出現予告


と、後編へ向けた最大の山場でした。


次回、**後編(最終決戦)**では

ゴブリンキングとの真っ向勝負、

ギルドマスター&副長の参戦、

《風切り》の全力連携、

そして“街を守るための覚悟”を描き切ります。

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