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Staff Hero ― 支える勇者 ―  作者: 和泉發仙


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第24層《変化都市》 ――沈黙のあとに、笑うしかなくなる

前書き・オープニング


第22層《変化都市》


――殺しても、終わらない


剣が折れ、

骨が砕け、

影が引き裂かれる。


それでも――

次の瞬間には、また“敵”が立っている。


瓦礫が蠢き、

崩れた建物が形を変え、

石とも金属ともつかぬ質感が、

魔物の輪郭を取って立ち上がる。


「キリがねぇな……!」


リゲロが吐き捨て、影を放つ。


伸びた影が地面を走り、

コボルトの群れをまとめて絡め取る。


「まとめて来るなら、まとめて沈め!」


影が締まり、

骨が軋み、

数体が一気に崩れ落ちた。


だが、その“素材”を使って――

次のオーガが生える。



「来るわよ!!」


リテラの声が響く。


弓が唸り、

閃光が走る。


一射で三体。

二射で五体。


スライムが弾け、

ゴブリンが吹き飛ぶ。


「っ……! まだ終わらない!?」


「終わらせる気で撃つな!!」


ガンドラが吼え、

巨槌を振り下ろす。


地面が割れ、

オークの群れがまとめて叩き潰される。


「数が多いなら――

 潰す面積を増やせばいい!!」


単純で、

乱暴で、

だが今はそれが正解だった。



その背後で。


ミナは、静かに“軍勢”を広げていた。


「……全部、呼ぶ」


空気が冷える。


霊圧が、重なる。


レイス。

スケルトン。

ワイト。

下級吸血鬼。


影と冥光が入り混じり、

“死者の陣列”が戦場に展開される。


「前、抑える」


眷属たちが一斉に動く。


骨剣が閃き、

呪詛が走り、

吸血鬼が獣の喉元に噛みつく。


数で来るなら、

こちらも数で返す。


殺し合いというより、

すり潰しだった。



ジージーは、空中からそれを見ていた。


(……すごい)


(でも――)


倒しても、

倒しても、

街は止まらない。


建物が崩れ、

その破片が、

また別の魔物になる。


ラミアが這い出し、

メタル系の個体が跳ね、

プラチナ色の影が、戦場を横切る。


経験値が跳ね上がる感覚。

だが同時に、

消耗も同じ速度で積み上がっていく。


(これ……

 “強い敵”の層じゃない)


(“終わらせない層”だ)


下では、

リゲロが息を荒げながら笑っていた。


「はは……!

 これ、戦争だな!!」


リテラも、ガンドラも、

ミナの眷属たちも――


まだ、動けている。


だがジージーには分かっていた。


(これは……

 まだ“入口”だ)


この層は、

全力を出させ、

削り、

心が折れる瞬間を待っている。


そして――

その“限界”は、必ず来る。


ジージーは、杖を強く握った。


(その時に、立っていられるか)


それが、

この層の本当の問いだった。




本編


最初に異変に気づいたのは、

音だった。


(……静か?)


さっきまで――

絶え間なく聞こえていたはずの、


・瓦礫が蠢く音

・魔物が生まれる湿った音

・骨と石が擦れる、不快な軋み


それが、

一斉に消えた。


ジージーは空中で思わず周囲を見回す。


「……え?」


視界に映るのは、

動きを止めた魔物たち。


ゴブリンが、

オークが、

ラミアが、

建物から半身を出したまま――


止まっている。


完全に静止しているわけではない。


だが、

・襲ってこない

・増えない

・動線が崩れている


まるで――

戦場の“意思”そのものが、眠ったようだった。


「な、なにこれ……?」


下から、リテラの声。


「ジージー!

 敵の動きが……鈍ってる!?」


ガンドラも眉をひそめる。


「いや、鈍ってるってレベルじゃねぇぞ。

 ……反応が、遅い」


リゲロは影を伸ばしながら、短く笑った。


「はは……

 罠か?」


ミナは、周囲を見渡してから一言。


「……違う」


「“見えなくなった”」


ジージー

「見えなく……?」


ミナ

「敵が、

 “何を見るか”を失ってる」


その瞬間だった。


――ドン。


オークの頭が、

何の抵抗もなく吹き飛んだ。


遅れて、

リテラの矢音が響く。


「……え?」


「当たった?」


次は、

ガンドラの一撃。


本来なら反撃してくるはずの角獣が、

ただ、倒れた。


「……おい」


リゲロが影で縛ったゴブリンが、

暴れもせず沈む。


「おいおい……

 これは……」


ジージーの背中に、

ぞくりと寒気が走る。


(これ……

 “弱くなった”んじゃない)


(世界の見え方が、変えられてる)


その答えを、

誰も口にしないまま――


ミナの眷属たちが、

一斉に動き出した。


「……今」


「“狩れる”」



そこから先は――

もう、戦いじゃなかった。


「よし、行くぞ!!」


「まとめて引き受ける!!」


「数はこっちが上だ!!」


止まった魔物を、

次々と倒す。


倒しても、

再構成が起きない。


建物は崩れたまま、

新しい敵を生まない。


「待って待って待って!」


ジージーが慌てて叫ぶ。


「これ……

 今のうちにやったほうがいいやつだよね!?」


リテラが笑った。


「当たり前でしょ!!」


ガンドラも豪快に笑う。


「こんな“殴り放題”

 二度と来ねぇ!!」


リゲロは、完全に開き直っていた。


「よーし……

 じゃあ遠慮なくいくか!」


影が、

骨が、

冥光が、

閃光が――


経験値に変わっていく。


メタル系が弾け、

プラチナ色が砕け、

かつての魔王の模造体が、

無言で崩れる。


(え、なにこれ……)


(……ちょっと待って)


(これ、完全に――)


ジージーは、

思わず苦笑した。


「……経験値会得合戦じゃん……」


セルグレン(遠くから)

「笑ってる場合か!!

 だが……

 止める理由もないな!!」


ミナは静かに言った。


「……今は、

 “与えられてる時間”」


ジージー

「与えられて……?」


ミナ

「誰かが、

 “戦場を隠した”」


ジージーは、

無意識に周囲の霧を見る。


そこに、

姿はない。


声もない。


けれど――


(……ああ)


(あの人だ)


(絶対、あの人)


理由は分からない。

名前も呼ばない。


でも確信だけはあった。


(モルガレン……)


(今、

 私たちを“見せない”ようにしてる)


ジージーは、

杖を構え直した。


「……よし」


「今のうちに、

 できるだけ強くなろう」


「“次”は、

 きっと、こんなに優しくない」


誰も反論しなかった。


第24層は、

地獄から、狂った狩場へと姿を変えた。


だがそれは――

嵐の前の、

不自然な静けさだった。


挿絵(By みてみん)

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