表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Staff Hero ― 支える勇者 ―  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

238/242

第24層・後編 変化都市《模造の大行進》――限界点



瓦礫が、また動いた。


壊したはずの建物が、

倒したはずの魔物が、

「そういう形だった」かのように再構成されていく。


終わらない。


どれだけ斬っても、砕いても、

この層そのものが“敵”だ。


セルグレンの盾が、重く鳴った。

受け止めた衝撃が、骨まで響く。


「……っ」


声にならない息が漏れる。

盾の縁に走る、細かな亀裂。


「セル!」


ジージーが叫ぶが、返事は短い。


「まだ、いける……!」


だがそれは、

**“行けるふり”**の声だった。


リゲロはもう笑わない。

影を操る指先が、わずかに震えている。


「……影が、薄い」


ミナは見ていた。

仲間の呼吸が、揃って乱れているのを。


眷属たちも同じだ。

数はまだいるが、動きが鈍い。


「……削られてる」


ミナの声は静かだが、重い。


「魂も、意志も。ここは――休ませない」


その言葉通り、

街は一瞬たりとも沈黙しなかった。


オークが崩れ、

オーガが倒れ、

次の瞬間、その“素材”から別の何かが生える。


リテラが弓を引く。

だが指が、わずかに止まった。


「……手が、言うことを聞かない」


ガンドラの槌が、地面にめり込む。


「……くそ、重い……」


ジージーは、空中で杖を支えながら、

自分の鼓動を数えていた。


速すぎる。

呼吸が浅い。


(これ以上――)


一瞬、頭をよぎる。


**「一度、退く」**という選択。


だが、すぐに消えた。


(ダメだ)


ジージーは理解してしまった。


(この層は、休んだ瞬間に終わる)


敵が強いからじゃない。

数が多いからでもない。


“休ませない構造”そのものが、殺しに来ている。


(止まったら、飲まれる)


(ここは……“耐え切った側が勝つ”場所だ)


その理解が、

ジージーの背筋を冷やした。


「……休めない」


誰に向けた言葉でもない。

自分自身への確認。


「ここは、休めない……!」


その瞬間だった。


古の魔王の模造――

その背後に控えていた“五魔将軍”の影が、

一斉に前へ出た。


圧が、跳ね上がる。


リテラが叫ぶ。


「来る!!」


五体同時。

役割を理解した動き。


前衛が潰し、

後衛が詰め、

中央で“王”が圧をかける。


完璧だ。


「……これは」


セルグレンが歯を食いしばる。


「……持たない」


それは、初めて出た本音だった。


ジージーの視界が、わずかに狭くなる。


(……限界)


腕が重い。

魔力の流れが乱れている。


(でも――)


そのとき。


世界が、ズレた。


音が、遅れて届く。

色が、濁る。


敵の動きが、

ほんの一拍だけ――遅れた。


「……?」


五魔将軍の一体が、足を止める。


次の瞬間、

その視界が、闇で塗り潰された。


光が消えたわけじゃない。

“見えているのに、把握できない”。


距離感が狂う。

味方と敵の境界が曖昧になる。


「何だ……?」


「視界が……!」


敵側が、ざわつく。


だが――

術者の気配は、どこにもない。


ミナが、はっと顔を上げた。


「……長い」


「え?」


「これは……短い妨害じゃない。

 ずっと、積み上げてきた闇」


ジージーは、理解した。


(今……じゃない)


(もっと前からだ)


(戦いが始まる前から――)


敵が、術者を探そうとして動く。

だが、どこにも“焦点”がない。


視界は狂うのに、

魔力反応は、散っている。


リテラが息を呑む。


「……誰かが、ずっと詠唱してた……?」


ガンドラが低く唸る。


「しかも……見つからん」


その一瞬の“隙”。


ジージーは、反射で動いた。


「――今だ!!」


説明はいらない。

勇者たちは、戦場の空気で理解した。


連携が、自然に噛み合う。


セルグレンが前に出る。

リゲロの影が、足を縫う。


ミナの眷属が、迷いなく支援を重ねる。


そしてジージーが――

“流れの中心”に立つ。


(ありがとう、誰か知らないけど)


(でも――勘違いはしない)


(これは、助けじゃない)


(ただの事故だ)


遠く、遠く。


闇の中で。


銀の骸骨仮面が、

何も言わずに戦場を見ていた。


次は敵だ。

それだけは、変わらない。


だが今は――


線が、一度だけ交差した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ