―地上から見上げる勇者
古の魔女の館・外庭。
結界が張られ、地面は淡く光っている。
その上空――
ジージー、セルグレン、リゲロ、ミナの三人と一体は、
浮遊魔法で宙に留められていた。
一方。
地面に残された二人。
リテラ
「……あれは、飛翔じゃないわね」
ガンドラ
「浮いているだけだ。
だが――」
空を見上げる。
ジージーは安定していない。
身体がわずかに揺れ、魔力の流れが可視化されるほど荒い。
ガンドラ
「……必死だな」
リテラ
「ええ。でも――」
リテラは目を細めた。
リテラ
「“逃げない浮き方”をしている」
上空。
アンリの声が容赦なく飛ぶ。
アンリ
「止まるな!
浮くことに意識を割くな!
戦え!!」
アンリの杖が振られると同時に、
模擬魔弾が空を裂く。
ジージーは、咄嗟に護盾を展開。
ジージー
「っ……!!」
弾かれながらも、落ちない。
その様子を、地上から見ていたリテラが呟く。
リテラ
「……無駄が多い」
ガンドラ
「だが、全部を“前”に使っている」
セルグレンは、聖魔法で姿勢を安定させつつ、
盾役に徹している。
リゲロは空中で完全に静止せず、
落下と浮上を繰り返しながら影を走らせる。
だが――
ジージーだけが違った。
撃たれ、弾き、揺らぎながらも。
必ず、前を向いている。
リテラ
「ねえ、ガンドラ」
ガンドラ
「なんだ」
リテラ
「あの子……
“勝つため”じゃなくて
“戻るため”に戦ってる」
ガンドラ
「……帰る場所がある者の戦い方だ」
上空で、ジージーが声を張る。
ジージー
「ミナ! 距離、詰める!」
ミナ
「……了解」
合図は短い。
連携はまだ粗い。
それでも――
一瞬も、独りにならない。
アンリの模擬攻撃が一段階強くなる。
アンリ
「ほう……」
リテラは、拳を握った。
リテラ
「……正直、甘いと思ってた」
ガンドラ
「何がだ」
リテラ
「“転生者”とか、“選ばれた武具”とか」
少し、間を置いて。
リテラ
「でも、違った。
あの子――」
ジージーが、強引に体勢を立て直し、
風刃を放つ。
《ウィンドカッター》
狙いは甘い。
だが、退かせた。
ガンドラ
「……折れない」
リテラ
「ええ。
勇者って、きっと……」
空を見上げたまま、言う。
リテラ
「一番怖がりで、
それでも前に出る人なのね」
その時。
アンリの声が、地上にも届いた。
アンリ
「地上の二人!!
見ているだけで満足か!!」
リテラが、口角を上げる。
リテラ
「……だそうよ」
ガンドラ
「準備運動は終わりだな」
アンリは、続けて言った。
アンリ
「飛べぬなら、
飛ぶ者を落とす側になれ!!」
地上訓練、開始。
空と地上。
役割は違う。
だが――
同じ戦場に立つための、
次の段階へ。
リテラとガンドラは、
静かに武器を構えた。
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