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Staff Hero ― 支える勇者 ―  作者: 和泉發仙


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モルガレンという存在



オープニング


――回復後・全体ミーティング


 古の魔女の館、円卓の間。


 全員が揃っていた。

 包帯は外れ、顔色も戻っている。

 だが――疲労は、まだ骨の奥に残っていた。


 円卓の中央、杖を床に立てたアンリが、全員を見渡す。


アンリ

「……さて」


 一拍置いて。


アンリ

「今回の戦い、総評からいくぞ」


 誰も口を挟まない。


アンリ

「まず結論じゃ。

 よく生き残った」


 その一言に、場の空気がわずかに揺れる。


アンリ

「判断は遅くない。

 連携は未熟じゃが、崩れはしなかった。

 恐怖に飲まれかけながらも、踏みとどまった」


 セルグレンが背筋を伸ばす。


アンリ

「じゃが――」


 杖が、コツンと床を叩く。


アンリ

「勝てる戦いではなかった」


 重い言葉。


アンリ

「四天王“級”に届きかけた存在。

 それを相手に、あれ以上粘れたのは立派じゃ。

 だが、力の差は明白」


 ジージーは拳を握る。


アンリ

「ゆえに、撤退判断は正解。

 英雄気取りで死なぬのは、褒めてやる」


リテラ

「……つまり?」


アンリ

「まだ、戦場に立つ資格はある。

 だが、王の前に立つには、足りぬ」


 アンリは視線を移す。


アンリ

「特に――」


 ジージーを見る。


アンリ

「魂帯。

 力を“振るう”段階に、まだ届いておらん」


ジージー

「……」


アンリ

「じゃが、見込みはある。

 折れなかった。それだけで十分じゃ」


 そこで話を切る。


アンリ

「総評は以上。

 質問は――一つだけ受け付ける」


 ジージーが、迷いながら口を開いた。


ジージー

「……モルガレン、について」


 アンリの目が、細くなる。



本編



アンリ

「……聞くか」


 円卓の空気が張り詰める。


アンリ

「あれは“敵”じゃ。

 だが、魔将軍でも、四天王でもない」


セルグレン

「では、何者なのですか」


アンリ

「魔王に忠誠を誓った者。

 ただし――魔王の復活のやり方に、納得しておらぬ」


リゲロ

「内部不和、ってやつか」


アンリ

「近いが、もっと厄介じゃ」


 杖を傾ける。


アンリ

「モルガレンは、王を“信仰”しておる。

 だからこそ、王を安売りする計画が許せぬ」


ジージー

「……だから、助けた?」


アンリ

「助けたのではない。

 王の舞台を汚させなかっただけ」


ミナ

「……利害の交差」


アンリ

「そうじゃ。

 あれは味方にならぬ。

 だが、無意味に刃を向ける相手でもない」


 少し間を置いて。


アンリ

「次に会えば、敵になる可能性の方が高い。

 だが――」


 ジージーを見る。


アンリ

「お主らが“成った”時、

 あれは必ず、再び交わる線になる」


 それ以上は語らない。


アンリ

「今日はここまでじゃ。

 頭を使いすぎた」


 立ち上がり、背を向ける。


アンリ

「休め。

 明日から、また鍛え直しじゃ」




――それぞれの眠り


 灯りが落ち、館は静寂に包まれる。


 ジージーは布団に入り、

 天井を見つめたまま、目を閉じた。


(まだ、足りない……)


 そのまま、深い眠りに落ちていく。



夜の森


――静かな邂逅


 館の外。


 月明かりの森を、

 ひとりの影が歩いていた。


 銀の骸骨の仮面。


 モルガレン。


 風に外套を揺らし、

 何かを確かめるように木々の間を進む。


 ――その足が、止まった。


アンリ

「夜遊びかの」


 背後からの声。


 モルガレンは、振り返らない。


モルガレン

「……まだ、ここにいるとは思わなかった」


アンリ

「追い返すほど暇でもない」


 二人の間に、沈黙が落ちる。


モルガレン

「勇者たち……」


アンリ

「未熟じゃが、生きておる」


モルガレン

「……それでいい」


 仮面の奥で、かすかな吐息。


モルガレン

「だが次は、守らぬ」


アンリ

「最初から、守ってなどおらんじゃろ」


 月光が、二人の影を重ねる。


 敵でも、味方でもない。

 ただ、同じ時代を知る者同士の距離。


 やがてモルガレンは、霧の中へと消えた。


アンリ

「……やれやれ」


 杖を突き、空を仰ぐ。


アンリ

「厄介な時代になったものじゃ」


 森は、再び静けさを取り戻した。


挿絵(By みてみん)

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