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Staff Hero ― 支える勇者 ―  作者: 和泉發仙


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230/242

――撤退、そして帰還

前書き


――夜明け前、火の名残で


 焚き火はすでに熾火になっていた。

 炎はないが、熱だけが残っている。


 そのそばに、三人の勇者が並んで腰を下ろしていた。


 ジージー。

 リテラ。

 ガンドラ。


 誰も、すぐには口を開かなかった。


 戦いのあと。

 酒も尽き、笑いも落ち着いた時間。


 先に息を吐いたのは、リテラだった。


リテラ

「……不思議ね」


ジージー

「なにが?」


リテラ

「昨日まで、あなたたちと話す理由なんて

 “戦場で隣にいた”以上のものじゃなかった」


 ジージーは、少し考えてから答える。


ジージー

「うん……私も」


ガンドラ

「……だが、今は違う」


 短く、低い声。


ガンドラ

「命を預け合った。

 それだけで、十分だ」


 リテラが小さく笑った。


リテラ

「ドワーフの言葉は、いつも端的ね」


ガンドラ

「無駄が嫌いなだけだ」


 少しの沈黙。


 ジージーが、熾火を見つめたまま言う。


ジージー

「……私ね」


二人

「?」


ジージー

「正直、みんなみたいな“勇者”を見ると

 ちょっと怖かった」


リテラ

「怖い?」


ジージー

「うん。

 強くて、迷いがなくて、

 “選ばれた人”って感じがして」


 リテラは目を伏せる。


リテラ

「……そう見えるだけよ」


ガンドラ

「迷いはある。

 見せないだけだ」


 ジージーは、驚いたように二人を見る。


ジージー

「そうなの?」


リテラ

「ええ。

 “選ばれた”なんて言葉、

 重すぎて好きじゃない」


ガンドラ

「役目を投げないだけだ」


 ジージーは、ふっと肩の力を抜いた。


ジージー

「……なんだ。

 同じだね」


 リテラが、ジージーを見る。


リテラ

「ええ。

 少なくとも、“今日を生き延びた者同士”」


 その言葉に、ガンドラが頷く。


ガンドラ

「次も、生き延びる」


 簡潔で、確かな宣言。


 夜明け前の空が、わずかに白み始めていた。




 朝になった頃には、全員の限界が明らかだった。


 包帯だらけの腕。

 引きずる足。

 魔力は底をつき、集中力も続かない。


セルグレン

「……駄目だな。

 この状態で次の層に行くのは、自殺だ」


リゲロ

「珍しく意見が一致した」


 ミナは静かに全体を見渡す。


ミナ

「魂の揺れが大きい。

 このまま戦えば、誰かが壊れる」


ジージー

「……アンリの館、だね」


 誰も異論はなかった。


 空間が歪み、

 視界が白く反転する。


 次の瞬間――



古の魔女の館・中庭


 石畳に、どさどさと人影が落ちた。


アンリ

「……」


 腕を組み、待ち構えていた古の魔女が、

 無言で一同を見下ろす。


 そして一言。


アンリ

「ボロ雑巾が集団で帰ってきおったか」


セルグレン

「ご期待に沿えず申し訳ありません」


アンリ

「期待などしとらん。

 予想通りじゃ」


リゲロ

「辛辣だなぁ」


アンリ

「事実を言うのが礼儀じゃ」


 アンリは杖を軽く床に打ち鳴らす。


アンリ

「全員、風呂へ行け。

 血と死臭を落とせ」


ジージー

「……はい」


アンリ

「その後、食事。

 寝ろ。

 話は回復してからじゃ」


 背を向けながら、付け加える。


アンリ

「生きて帰ったのは、上出来じゃ。

 それだけは誇れ」


 その言葉に、

 誰も返事をしなかった。


 だが――

 全員の足取りは、ほんの少しだけ軽くなっていた。


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