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Staff Hero ― 支える勇者 ―  作者: 和泉發仙


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第二十二層《雷帝再臨》――崩壊段階





雷飛竜が、空中で大きく身をよじった。


「今だ!!

 集中!!」


セルグレンの号令。


ジージーの《ダイヤモンドダスト》が翼の根元を凍結し、

リゲロの闇刃が雷紋を断ち、

剣士尸鬼の魔法剣が鱗を砕く。


雷飛竜は、確実に――削られていた。


だが。


雷帝ワーヴ・ハイゼルは、動かない。


ただ静かに、

杖を両手で握り、

詠唱を“溜めて”いた。


ミナが、凍りつく。


「……チャージ」


「は?」


「雷帝、

 今、最大出力を準備してる」



その時。


闇魔導士の一体が、

雷飛竜の背後に滑り込んだ。


「回復術式、展開」


黒い光が、雷飛竜を包む。


「――ッ!?」


凍結が剥がれ、

裂けた鱗が再生していく。


リゲロ

「ふざけんな……!」


ミナ

「まだ終わってない!」


闇魔導士が、低く呟いた。


「次だ」



空間が――沈んだ。


魔法陣の規模が、

今までと桁違い。


「まさか……」


ミナの声が、震える。


闇魔導士

「切り札を使う」


地面が裂け、

空気が腐る。


大悪魔グレーターデーモン降臨


黒曜石のような肉体。

四本の腕。

歪んだ翼。


大悪魔は、降り立つなり――


笑った。


「ほう……

 まだ生きている者がいるか」


その背後で、

レッサーデーモンが“生まれ続ける”。


「数が……!」


セルグレンが歯を食いしばる。


さらに――


大悪魔の身体から、

闇の霧が溢れ出した。


視界が歪む。

音が遅れる。

距離感が狂う。


「……ッ、感覚が……!」


リゲロ

「くそ、三半規管が……!」


ミナ

「まずい……

 闇魔導士が……」


闇の中で、

影が増えた。


一体だった闇魔導士が――

三体に分裂。


「……幻影じゃない。

 実体、三つ」



そして。


雷帝の詠唱が――

終わった。


雷帝

「――終幕だ」


空が、完全に白く染まる。


「伏せ――」


遅い。


雷帝

「《天雷皇撃》」


雷が、世界ごと落ちてきた。


防御魔法が砕け、

聖盾が軋み、

眷属たちが吹き飛ばされる。


ジージーの意識が、遠のく。


(……だめ、

 これ――)



その時。


別の雷が、

横から突き刺さった。


「――そこまでだ」


「!?」


雷帝の雷が、逸れた。


空間が、裂ける。


「遅れてすまない!」


「生きてるか!!」


別の勇者たちが、

次々と飛び込んでくる。


火、氷、土、聖。


多属性の魔法が、

一斉に戦場を覆う。


雷帝は、初めて舌打ちした。


「……余計な連中が」


ジージーは、息を吸い直す。


(まだ……

 終わってない)


セルグレンが、盾を構え直す。


「全員、立てるか!」


リゲロ

「……上等だ」


ミナ

「まだ、やれる」


雷帝。

雷飛竜。

三体の闇魔導士。

大悪魔。



ジージー

(怖い。死ぬかもしれない。

 でも――)


(みんながいるから、

 前へ行ける)


棍が脈動する。

魂帯の紋様が、鼓動と重なった。


「響け……!!」


大地と空気が、同時に震える。


《響裂衝・三連穿さんれんせん》ッ!!!!


ドドドドッ――!!


三つの閃光が一直線に走り、

雷飛竜の胴、翼、喉元を時間差で貫いた。


「ギャアァァァッ!!」


雷が乱れ、飛竜が高度を失う。


その瞬間だった。


「今だ――!!」


光が、横から割り込む。


リテラが放った閃光の矢が、

雷帝ワーヴ・ハイゼルの視界を奪う。


「……チッ!」


続けて――


ドンッ!!


地面が砕ける音と共に、

ガンドラの戦鎚が闇魔導士を叩き伏せた。


「一体、沈めた!」


ジージーの一撃が合図になった。


それを見て、

“待っていた勇者たち”が、動く。


「勇者は――

 一人で戦うもんじゃねぇ!!」


別方向から炎が走る。

氷が壁を作り、

風が軌道を歪める。


一人一人は未熟。

一撃では足りない。


だが――


重なれば、話は別だ。


リゲロが影を走らせ、叫ぶ。


「雷帝の足、止める!!

 三秒だ!!」


セルグレンが即座に前へ出る。


「三秒あれば十分だ!!」


聖盾が展開され、

雷帝の反撃が正面で受け止められる。


バリィィィンッ!!


盾が悲鳴を上げる。


「くっ……!」


その背後で、ミナの声。


「冥僧――結界、重ねて。

 僧侶――次、来る」


影の膜が一枚、二枚と重なり、

雷が“殺し切れない”威力に落ちる。


ジージーは、息を吸った。


(今だ)


「もう一発――!」


棍を構え直す。


だがその瞬間、

雷帝が笑った。


「面白い……

 人が、集まるとこうなるか」


雷帝の周囲に、雷が収束する。


“本命”の詠唱。


空気が、裂ける。


「間に合わねぇ――!」


その時。


リテラが、歯を食いしばる。


「――信じるわ!!」


ガンドラが一歩前に出た。


「受け止めろ、世界!!」


二人の攻撃が、真正面から雷帝に叩き込まれた。


完全な阻止ではない。

だが――“溜め”を崩した。


雷帝の魔力が、暴発する。


「……っ!」


雷が四散し、

大悪魔の召喚陣が歪む。


その隙を――


見逃さなかった。


「今だ、ジージー!!」


セルグレンの叫び。


「決めろ!!」


リゲロの声。


ミナは、静かに言った。


「……全部、繋がってる」


ジージーは、前へ出た。


怖さは消えない。

足も、震えている。


それでも――


(勇者って、

 こういう時に立つんだ)


棍が、再び光る。


「――これが、私たちの答えだ!!」


雷帝の胸へ、

最後の一撃が叩き込まれる。


雷が砕け、

空気が静まり、

戦場が――息を取り戻した。


しばしの沈黙。


そして。


リゲロが、肩で息をしながら笑った。


「……さすがだな」


セルグレンも、盾を下ろして言う。


「勇者と認められし者たちだ」


ジージーは、棍を支えに立ったまま、

小さく笑った。


「……まだ、途中だけどね」


霧の向こうで、

誰かがそれを見ていた。


評価でも、賞賛でもない。


ただ――

“次の舞台に立つ資格があるか”を量る視線。


雷帝戦、終結。


だがこれは、

“勇者たちが一つの戦場になった”

最初の夜にすぎなかった。


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