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Staff Hero ― 支える勇者 ―  作者: 和泉發仙


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226/242

第二十二層 再臨






階段を上がった瞬間、

空気が鳴った。


バチ、と。

乾いた音ではない。

大地の奥で、何か巨大なものが目を覚ました時の――低い放電音。


セルグレンが、反射的に盾を前に出す。


「……来るぞ」


リゲロは舌打ちした。


「いや、もう来てる」


ジージーは一歩、前に出た。


第二十層は、広かった。

だが“広い”というより――逃げ場がない。


天井は見えないほど高く、

床は黒く焼け焦げ、

あちこちに、かつて雷が貫いた痕が残っている。


ミナが、ぽつりと言った。


「……覚えてる」


ジージーも、覚えていた。


あの日。

初めて、力の差をはっきり突きつけられた相手。


――雷帝ワーヴ・ハイゼル。



空が、歪んだ。


雲もないのに、雷鳴が走る。

次の瞬間、空間そのものが裂けるようにして、**“それ”**が現れた。


巨躯。

重装。

両肩から伸びる角状の装甲。


そして、握られた雷杖。


「……ほう」


低く、重い声。


ワーヴ・ハイゼル

「まだ生きていたか。

 小さき者ども」


雷が、足元を走った。

ただ立っているだけで、魔力が大気を焦がす。


セルグレンの喉が鳴る。


「前より……圧が増してる」


リゲロ

「再戦ってのは、

 大体こういうもんだよな……」


ジージーは、杖を握りしめた。


(でも――)


前とは違う。


浮遊魔法レビテーションが、無意識に発動する。

足が、わずかに地面から離れた。


雷帝の視線が、ジージーに向く。


「……貴様」


一瞬、間があった。


「空に立つ術を覚えたか」


その声に、嘲りはない。

だが――評価でもない。


雷帝

「だが、それだけだ」


雷が、落ちた。



世界が、白くなる。


雷撃は直線ではない。

逃げ場を“選ばせない”ように、網のように広がる。


「セル!!」


「分かっている!!」


聖盾が光を放ち、雷を受け止める。

だが衝撃で、セルグレンの身体が空中で弾かれた。


「ぐっ……!!」


リゲロが即座に動く。


「エアライン――!」


空中に走る不可視の“線”。

セルグレンはそこに足をかけ、体勢を立て直す。


雷帝が、低く笑った。


「連携は上達したな」


次の瞬間、雷帝の背後に雷輪が展開される。


ミナが叫ぶ。


「……来る!

 全方位!!」


ジージーは、空中で杖を振り抜いた。


「《ダイヤモンドダスト》!!」


氷の輝粒が、雷と衝突する。

蒸発。

破砕。

だが、一瞬だけ雷の軌道が乱れた。


雷帝の目が、細くなる。


「……ほう」


評価が、ほんの一段上がった。


だが――

まだ、足りない。



雷帝ワーヴ・ハイゼルは、宣告するように言った。


「教えてやろう。

 再戦とは、希望を折る儀式だ」


雷が、再び集束する。


本気だ。

二十層は、逃げるための層ではない。


ジージーは、歯を食いしばった。


(今度は――

 逃げない)


ここが、

空中戦修行の“成果”を問われる場所。


そして――

雷帝にとっては、

格の違いを思い出させるための戦場。


第二十層。

雷鳴が、完全に支配を始めた。


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