空中模擬戦・八日目 ――落とされる覚悟
オープニング
八日目の空は、やけに静かだった。
風はある。
だが昨日までのような、刃を含んだ気配がない。
アンリは珍しく、杖を構えなかった。
「……今日は飛ばん」
全員が顔を上げる。
セルグレン
「休み、ですか?」
アンリ
「いいや。
“休ませる”日じゃ」
ジージーは、ゆっくり息を吐いた。
空中模擬戦が始まってから、
まともに地面に座った記憶がない。
アンリ
「八日目は、覚悟を整理せい。
飛ぶのも、撃つのも、落とすのも……
理由を持たねば、すぐ死ぬ」
その言葉だけ残し、
アンリは館の奥へ引っ込んだ。
⸻
休憩時間
庭の端、石段に腰を下ろす。
ジージーは、靴を脱いで足を伸ばした。
「……生きてる、って感じするね」
セルグレン
「分かる。
昨日までは、息するのも訓練だった」
リゲロは壁にもたれ、空を見上げる。
「空ってさ、
上に行くほど、怖くなるな」
ミナ
「……怖いのは、落ちることじゃない」
ジージー
「え?」
ミナ
「落ちたあと、
誰もいないこと」
その言葉に、
ジージーは少しだけ黙った。
⸻
他の勇者たちとの絡み
少し離れた場所では、
他の勇者たちも思い思いに休んでいた。
ネルヴァは、剣を膝に置き、目を閉じている。
オーヴェンテは地面に魔方陣を書き、消しては描き直す。
そこへ、ドワーフの女勇者――ガンドラが声をかけてきた。
ガンドラ
「お前らが、杖の一団か」
ジージー
「え、あ、はい」
ガンドラ
「空、飛んでたな。
正直……羨ましい」
セルグレン
「羨ましい、ですか?」
ガンドラ
「逃げ場が増える。
それだけで、生き残る確率は跳ね上がる」
少し間を置いて、低く続ける。
「……だが、
落ちた時の痛みも、倍だ」
リゲロ
「経験者?」
ガンドラ
「三回な」
笑っているが、
冗談ではないのが分かる。
一方、エルフの勇者――リテラは、ミナの方をちらりと見た。
リテラ
「……あなた、
戦場の“音”が違う」
ミナ
「……?」
リテラ
「矢が飛ぶ前の静けさを、
知ってる人の気配」
ミナ
「……死んでるから」
リテラは一瞬、言葉を失い、
それから静かに頭を下げた。
「失礼。
でも……頼もしい」
⸻
これから先の話
しばらくして、
全員の前にアンリが戻ってきた。
杖で地面を、こん、と叩く。
「休憩は終わりじゃ」
空気が締まる。
アンリ
「次は“空”ではない」
「下じゃ」
ジージー
「……ダンジョン?」
アンリ
「うむ。
飛べる者ほど、
地を忘れがちになる」
セルグレン
「なるほど……」
アンリ
「安心せい。
今日中に潜らせはせん」
少しだけ、口元が緩む。
「準備と、心構えじゃ」
ジージーは、立ち上がり、杖を握り直した。
(空で学んだことを――
今度は、地獄で試す)
八日目の空は、
静かにその決意を見下ろしていた。
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次は自然に↓につながります。
•空中模擬戦・九日目(地上と空の切り替え)
•もしくは
•ダンジョン突入前夜(勇者たちの本音回)




