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Staff Hero ― 支える勇者 ―  作者: 和泉發仙


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山の村モンテーヌ

◆峠道を抜けて


野湯で体を休め、

夜明け前に動き出したジージーたちは、

足元の土の色が

灰色から赤茶に変わるのに気付いた。


「……人の手が入った地面だな」


セルグレンがしゃがみ込み

小石を握って確かめる。


「たぶん……近くに村がある」


リゲロが前方を指す。


「煙だ。あれは人の家の煙」


壊れかけの柵、

地面に残る割れた瓶、

踏み固められた道。


ジージーの心が

そわそわと落ち着かない。


「魔物……出ちゃったのかな」


ミナの声が低く響いた。


「匂いがする。

 “何かを奪う”ために動いた魔物の匂い」


ジージーは呟いた。


「行こう。放っておけない」


◆モンテーヌ村


村と呼ぶには

まだ建物が少ない。

だが、数軒の民家に加え

資材置き場や食料小屋がある。


山に住む人々の挑戦。

ここから少しずつ広げていくはずの場所。


だが――今は

どこか張り詰めた空気に満ちていた。


「……誰か来たぞ!」


木の槍を持った男が

こちらに向かってくる。

まだ若い。

だが恐怖と責任が刻まれた顔だ。


「旅の者さん……?

 こんな時に、悪いが……

 村には今、魔物が出ていてな」


ジージーが一歩前に出る。


「魔物……被害が出てるんですか?」


男は大きく頷いた。


「家畜がさらわれ始めたんだ。

 そのあとで……子どもが一人、行方不明になった」


ジージーの瞳が大きく揺れる。


「……子ども……!」


男は顔をしかめる。


「ギルドなんてまだ来てくれない。

 俺たちが探したけど……

 森に入るのは危険すぎる」


セルグレンが静かに言った。


「どんな魔物か、見た者は?」


「姿は……分からねえ。

 ただ、夜に光る目を見たって子がいる」


ジージーは拳を握りしめる。


「わたしたちに任せてください。

 その子、必ず助けます」


男は驚き、

次いで安堵の色を浮かべた。


「本当か……!

 力を貸してくれるのか……!」


リゲロは周囲を見渡す。


「犠牲がこれ以上出る前に動く。

 今夜が勝負だ」


ミナが建物の影を指さす。


「影の濃さが変。

 昼でも夜の匂いが残ってる」


セルグレンが短く指示を飛ばす。


「ジージー。

 まずは聞き込みと、被害箇所の確認からだ。

 魔女の森に向かう前に

 一度ここを救おう」


◆村人の願い


村の中心に

広場と呼べる場所があり、

そこに村長らしき老人がいた。


杖をつきながら、

旅人を見据える瞳だけが強い。


「……子を守れぬ村に、未来はない。

 しかし、魔物に対抗できる力はまだない」


ジージーは胸の前で杖を握り、

深く頭を下げた。


「この村の未来を守るために

 できること、全部やります」


老人は目を細めた。


「勇者か。

 その杖は……特別なものだろう」


「はい。でも……

 わたし一人では戦えません。

 一緒に戦ってくれる仲間がいます」


セルグレンは

騎士のように姿勢を正し、


「命を奪わずに、脅威を退ける。

 それがこの隊の方針だ」


リゲロは淡々と、


「影は俺が見る。

 子どもを戻す。無傷で」


ミナは柔らかな声で、


「怖がらなくていい。

 わたしたちはここにいるから」


村長は目を伏せ、

拳を震わせながら呟いた。


「……どうか頼む。

 たとえ一夜だけでもいい。

 安心して眠れるように……」


ジージーは静かに答えた。


「大丈夫。

 今夜はわたしたちが見張ります」


◆夜の幕が落ちる


太陽が山の背へ沈み、

影が伸びていく。


ジージーは

子どもが消えたという家の裏手に

仲間と共に身を潜めた。


セルグレンは盾を握り、

リゲロは屋根の影へ溶けた。


ミナは闇の中で

胸の加護を光らせ、周囲を見張る。


ジージーは

息を殺しながら、

ただ待つ。


夜は冷たい。

影は深い。


と――


ミナの声が

かすかに震えた。


「来る……

 狙われてる」


ジージーは杖を握り、


「ミナ、位置は?」


ミナは小さく息を吸い込んだ。


「家と家の隙間……

 影の底から……」


その瞬間、

ジージーの目にも見えた。


闇の中で、

ぬるりと 目が光った。


ひとつ、ふたつ。

みっつ、よっつ――


「……なに、あれ……」


リゲロが歯を食いしばる。


「数が……多い」


セルグレンは低く言い放つ。


「ジージー、下がれ。

 これはただの魔物じゃない」


影が地を滑り、

一斉に襲いかかる。


ジージーは震えながら

それでも足は地を踏む。


「逃げないよ。

 助けなきゃいけない命があるなら——」


影の猟犬たちが吠えた。


夜の戦いが

幕を開ける。



次回


「影犬の夜 ― 消えた子どもの行方 ―」


・影魔物の正体

・ジージー隊の市街戦

・ミナの索敵と「一歩の救い」

・行方不明の子ども発見

・村に巣食う“影の糸”


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