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Staff Hero ― 支える勇者 ―  作者: 和泉發仙


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夜を噛む影

◆星喰い、襲来


影獣が地を蹴るたび、

星の光が吸い込まれていく。


ジージーの頬を、冷たい汗が伝った。


「ミナ、位置は……!?」


ミナの瞳が淡い光を宿す。

胸元の加護が脈動した。


「影が……二重になってる

 上の牙は罠、本体は足元!」


「セルグレン、下っ!」


セルグレンが即座に盾を下へ構え、

突進してきた影獣の本体を押し返す。


ガギィィン!!


風圧で土が舞い上がる。


「リゲロ!」


「了解」


リゲロの影が地を滑り、

影獣の足に絡み――

二重影喰いの急所へ二連撃を叩き込む。


ズバッ! ズバッ!


影が裂ける音がした。

が――すぐに再生しようと蠢く。


「ジージー!」


「わかってる!」


ジージーは杖を握り直し、魔力を集中――


「【絡めよ、光のライトバインド!】」


光の蔦が影獣を束ね、動きを止める。

しかし、黒い靄が蔦を溶かす速度も速い。


「ダメ! 溶けちゃう!」


「なら、止める側を……

 ミナ、任せられるか。」


セルグレンが振り返らずに問う。


ミナはうなずく。

その表情は、

幽霊じゃなく——仲間の前衛だった。


「わたしの“一歩”は……

 仲間を守るために」


ミナが浮かび上がり、

影獣へ向かってまっすぐ飛ぶ。


黒い牙が襲いかかる。

その刹那——


ぱあっ…!


ミナの身体が星光で縁取られ、

影獣の牙が

空を噛んだ。


ジージーの目がみひらかれる。


「ミナ……今、避けさせたの?」


「うん。

 一歩だけ、未来をずらした」


影獣は狙いを外し、

大きく体勢を崩した。


そこへ――リゲロの影刃!


「【影閃断】!!」


影獣の胸に、

大きな裂け目が走る。


だが影はまだ消えない。


星を喰らい続ける腹を

狙っている。


ユニコーンが前脚で地を踏み鳴らした。


——今だ。


ジージーは杖を掲げ、

深呼吸一つ。


「ミナ、お願い!」


「任せて!」


ミナが

影獣の頭上から急降下し、

その影の核を見抜いて叫ぶ。


「そこ! 影の“中心”!!」


ジージーは叫ぶ。


「【黎明れいめい】——!!」


杖の先から朝の光が迸り、

影獣の中心へ突き刺さる。


影が震え、

黒い靄が弾け飛ぶ。


影獣は苦痛の声をあげ、

星を吐き出すように

夜空へ光が解き放たれた。


そして——


影獣は霧となって消えた。


 


◆戦いの後


ジージーは息を切らせながら

ミナへ駆け寄る。


「すごいよ……ミナ……!

 一歩をずらすなんて……」


ミナはちょっと照れたように笑う。


「加護の力……だと思う。

 でも、使えたのはジージーたちが

 ちゃんと信じて前に出てるから」


リゲロが肩をすくめる。


「死んでるのに前に出る奴に言われる筋合いはないが…

 助かった。間違いなく」


セルグレンもうなずいた。


「ミナ、お前はもう

 立派な“守り手”だ」


ミナはふわりと浮きながら

胸に手を当てて呟く。


「うん……

 わたし、生きてないけど。

 でも、ちゃんと“ここにいる”って

 今は思える」


ジージーが笑って

ミナの手を取る仕草をした。


「一緒だよ。

 これからも、ずっと」


その言葉に

ミナは目を細めた。


 


◆ユニコーンからの導き


ユニコーンが近付き、

星鏡へ光を宿す。


ジージーの手の中で

星鏡が青く輝いた。


リゲロが小さく呟く。


「これで森の迷いを断てる」


セルグレンは周囲を睨む。


「だが敵はこの森に潜む。

 注意を怠るな」


ミナが泉の奥を指さした。


「星鏡が導いてる……

 この先が魔女の森の入口」


ユニコーンは言葉なく、

ただジージーたちへ背を向け、

森の奥へ歩き出す。


まるで

ひとときの同行を許すかのように。


ジージーたちは、

その背に従い歩き出した。


 


小さな泉の水面が揺れ、

星の影がきらめく。

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