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Staff Hero ― 支える勇者 ―  作者: 和泉發仙


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星する町・星見の集落



山の稜線を越えると、

視界は一気にひらけた。


山あいの窪地――

そこには、夜がまだ生きている町があった。


朝の光が差しているはずなのに、

頭上にはまだ無数の星が瞬いている。


星の光が

街路のランプの中に溶け込み、

屋根の上では小さな風見鳥が

星の方向へ首を向ける。


空と、地上と、

境目がふわりと曖昧。


町の中央には背の低い塔があり、

尖った屋根の先端に

星の形をした金属片が揺れている。


「……すごいね」


ジージーは息を呑んだ。


まるで

星空が地上に降りてきたみたいだった。


 


町の人々は、

まだ夜の名残を纏うような服を着ていた。


蒼い布を羽織った老人が、

空を見上げながら祈りを捧げている。


露店の前では

子どもたちが

夜光草の束を抱えて手伝っている。


それらは薄く光り、

まるで星を摘んできたかのよう。


「ここは……本当に、星を大事にしてる町なんだね」


ジージーの言葉に、

リゲロが頷く。


「この町の連中は

星を読んで季節を知り、

星の巡りで未来を量るんだとさ」


セルグレンは

周りを警戒しながらも

興味深そうに視線を向ける。


「ならば魔女の森への道も

星が教えてくれるかもしれんな」


ミナはふわりと笑って

空へ指差した。


「見て。

昼なのに、星が眠らない……

森が呼んでるからだよ」


ジージーは

背筋にひんやりとしたものを感じながらも、

仲間と共に歩を進めた。


 


◆星読みの館


町の中心――

星の塔に隣接する建物へ案内される。


半透明の布の帳が風に揺れ、

その奥に広い室内が広がる。


天井が丸く、

夜空を写したような模様が描かれていた。


その中央で、

一人の女性が佇んでいる。


薄紫色の外套に

星のかけらを散りばめたような髪飾り。


大人びた雰囲気ながら、

まだ若い顔立ち。


「ようこそ、星する町へ。

わたしは 星読み(ほしよみ)のテルシア。

あなたたちを待っていました」


「待って……?」


ジージーが目を丸くする。


テルシアは

その視線に優しく微笑んだ。


「星が告げたのです。

海を越え、風の塔を越え、

四つの足音が北へ向かう、と」


ミナが小さくつぶやく。


「星は全部知ってるんだね……」


テルシアの指先が

宙をなぞると、

天井の模様がひとりでにきらめき始める。


その光は繋がり、

一つの筋を描き――


北東の森を指し示した。


「そこに“迷わせる森”があります。

星を隠し、

夜を喰らう存在がいる森。

魔女の巣です」


ジージーはごくりと唾を飲む。


でも、逃げられない。

行かなければならない場所。


「……教えてください。

どうすれば、その森に入れるんですか?」


テルシアは

静かに首を横へ振った。


「森に“入る”ことはできます。

問題は、“出られるかどうか”」


セルグレンが眉をひそめる。


「迷宮のようなものか?」


「いいえ。もっと厄介です。

行きたい方向へ進んでも、

必ず出られるとは限らない。

時に、外へ出るほど

森の奥に迷い込むことも」


リゲロは声を潜めた。


「敵の本拠地にふさわしいな」


テルシアは

少し唇を引き結ぶ。


「森には“道しるべ”が必要です。

星の光を映す鏡――

**星鏡せいきょう**を持っていけば、

迷いを断つことができるかもしれない」


ミナが首を傾げる。


「鏡……?」


テルシアはうなずく。


「外の夜空を映す鏡です。

森に隠された夜を照らす、

唯一の道しるべとなるでしょう」


ジージーは

胸に結んだ羽根飾りを握る。


風の塔で手に入れた

風導きのフェザーロード


これから必要なのは――

星の光


「それ……どこにありますか?」


テルシアは

少しだけ目を閉じ、

ため息のような声で言った。


「北の森。

そこに住む“守り手”たちが持っています。

ユニコーンと、精霊たち」


ジージーの瞳が輝いた。


「ユニコーン……精霊……!」


「ただし。

彼らは人間の言葉を信じません。

言葉より、

心の形を見るのです」


セルグレンは

ジージーを一瞬見下ろし、

小さく頷いた。


「ならば問題ない。

ジージーの心は誤魔化せないからな」


リゲロも短く言う。


「俺は、その形に従うだけだ」


ミナがくすっと笑う。


「わたしは、もう心が透けてるけどね」


テルシアは

そんなやりとりに安心したように微笑み、


「休む場所をご用意します。

夜はここで心を整えて、

明日、森へ向かいなさい」


と、客室の鍵を渡した。


 


◆星する町の片隅で…


ジージーがふと振り返ると、

高台からこちらを見下ろす

一つの影があった。


藍色のフード。

風に揺れる外套。

塔の上から、

杖と羽根飾りをじっと見つめている。


その目は――

“知っている”目


リゲロも気付いたように

影に視線を向けたが


その姿は

すぐに星の光の中へ

溶けていった。


 


風が鳴る。

星が揺れる。


新しい夜が近付いていた。


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