砂漠の都の夜 ― ココナッツと密やかな叫び
船の揺れが、いつの間にか砂の感触に変わっていた。
海を越えたジージーたちが辿り着いたのは――
翡翠の都アフナ。
砂漠に輝く巨大オアシス都市。
背の高い椰子の木と、石畳に広がる絨毯の市場。
香辛料と焼き肉の香りが混じり合う大通り。
(本当に……別の大陸に来たんだ)
胸の奥がじわりと高鳴る。
新しい冒険が、いま始まる。
◆1 市場の喧噪と異文化体験
「いらっしゃい!水晶!香辛料!宝飾品!」
「こっち安いよ!旅の方、見てって!!」
市場は叫び声の嵐だった。
「セル、これは何だ?」
「……サボテンの肉っぽいな。食えるのか?」
リゲロは、皿に盛られた串を一つつまむ。
「ほら、食ってみる」
「俺に毒味させんな!!」
ぱく
「……うまい!!」
「おお」
ジージーもちょっと勇気を出して口に運ぶ。
(……噛むと少し弾力あって……でも香りはすごくいい)
「うまっ」
「異文化最高だな」
ミナは興味深く串を覗き込む。
「私は……食べられないけど、匂いは楽しいね」
◆名物、ココナッツ購入!
「大きな実ね……これ何?飲むもの?」
「椰子の実ですだ!
割れば甘い水!飲んでみなさい!」
店主の男が器用にナイフで穴を開ける。
ストローを刺す
「ぐびっ」
「……! おいしい!身体に染みる!」
「そりゃそうよ!旅人の命の水だ!」
ジージーは鞄に2つ追加購入して――
すぐ、共有鞄へと入れた。
(向こうでも飲めるかな……みんな驚くだろうな)
ミナがふわりと笑った。
「届いたら、マリーヌが絶対はしゃぐね」
⸻
◆2 “資源の価値観”が逆転する
鍛冶屋の店先。
「金属類は安いな……
こっちの大陸じゃ採れる量が桁違いなのかも」
セルグレンが小声で呟く。
「鉄鉱石……
こっちに送れば、あっちでは高く売れるな」
「商売できんじゃねーの?」
リゲロがニヤリ。
(ただ……まずはちゃんと、この土地を知ってから)
ジージーは、あえて少量の鉄鉱石と銅の塊を購入し、
共有鞄へそっと収めた。
⸻
◆3 夜のディナー ― 新しい香り
砂漠夜風のテラス席。
灯火がゆっくり揺れている。
「ラム肉のスパイス焼き」「ミントスープ」「デーツのパン」
「うっま……!」
「香りが強いけど、不思議と食が進むな」
「旅してるって感じだ……!」
ミナはじっと、楽しげに食卓を眺めていた。
(表情で味わいが伝わるのは、羨ましくもあり嬉しくもある)
「この都の人は、みんな胸張ってる気がする」
「誇りを持ってるんだろうな。
砂漠で生きるって、きっと大変だ」
そんな会話をしていた時――
ミナの声が震えた。
『……来る』
⸻
◆4 暗躍の影 ― 砂漠姫の危機
ミナが急に立ち上がるように浮かぶ。
『路地裏から……悲鳴……!』
「行こう!」
三人は即座に立ち上がり、暗い路地へ駆ける。
◆ふらつく小さな影
そこに倒れていたのは――
ネズミ獣人の少年。
痩せて、息は浅く、腕には噛み跡のような傷。
「おい、大丈夫か!」
セルグレンが抱き起こし、
ジージーが携帯回復剤を口へ流し込む。
「……っ、ひ……め……」
「姫? 姫がどうした!?」
「つ、連れてかれ……た……
魔……じょ……が……黒い魔女が……
アフナの姫様を……」
ぐたり
「おい!しっかり!」
リゲロが周囲へ目を配る。
「ここ……血痕が続いてる」
ミナが震える声で囁く。
『この先に……“闇”が潜んでる』
ジージーは短杖を握った。
(砂漠姫……攫われた?
なら、助けなきゃ)
セルグレンが頷く。
「情報が足りねぇ。だが――追うしかない」
リゲロがニッと笑った。
「“面倒な旅”の始まりってわけだな」
風が、熱く吹いた。
砂漠の夜が、冒険の匂いに満ちていく。
⸻
◆次回予告
『砂塵の追撃 ― 黒い魔女と女神の涙』
・砂漠姫救出戦、開幕!
・初遭遇:魔王軍の魔女(名あり)
・新たな力の目覚めの予兆――?




