おばかなアタシと年上カレシ
とてもお久しぶりです。
ひょんなことから昔書いたこの小説が出てきたので、懐かしく思い最後の投稿しました。
当時のそのままを投稿したのでつたない部分がたくさんありますが、温かくみまもってくれたらうれしいです。これにて二人の話はいったん終了です。
「昨日はごめんな。ちょっと急用ができて……」
アツムはそう言うと少し頭を下げる。
そんな仕草にどきどきしちゃって、アタシは思わず顔を赤らめた。
「じゃあ、行こうか」
アツムはコーヒーを飲み終えるとそう言いながら、席を立った。
「行くってどこへ?」
アタシは慌ててアツムの後を追う。
「乗って」
コーヒーショップを出て、アツムの背中を追いかけると、彼は少し歩いたところで振り向きながらそう言った。
メタリックな深い青色の車……。
「アツムの車? 」
そうアタシが聞くとアツムは無言で頷く。
彼は助手席ではなく、なぜか後部座席のドアを開けて「どうぞ」とアタシに言った。
車はゆっくりと走りだす。
アタシはアツムに何も言えなくて、何を言っていいのか解らなくて窓の外を眺めているだけだ。
本当はこんなに気持ち良く晴れたなんだから、うきうきしたっていいはずなんだけど、アタシの心はまるで真っ黒い雲に覆われているかのようだった。
海沿いの景色を10分ほど眺めていると、車は駐車場へ吸い込まれるように止まった。
「ちょっと疲れた? 」
アツムがアタシを心配して声を掛けてくれる。
「大丈夫。ちょっと外の景色が綺麗だったから見とれてて……」
――嘘だった。
でも、その嘘に気がつかないのか、アツムは「そう?」とだけ言うと静かに微笑んだ。
着いた先は『水族館』
あ、そっか。
アタシのために最後のデートしてくれるんだ。
押しかけ彼女に最後のサプライズなのかな……。
昨日チアキが言ってたアツムの元婚約者東雲さんの事を思い出して、アタシは少し鼻の奥がつんとなった。
そんなアタシを知ってか知らずか。
アツムはアタシの手を取って水族館へ向かう。
***
「うわー……すごくきれい……!」
アツムに手を引かれて水族館の中へ入ると、まるで海の中に入っているみたいな透明なトンネルの道があった。
色とりどりの魚たちが私の頭上を泳ぎ、キラキラと光る鱗は本当に幻想的で、ロマンチック。
ふと隣にいるアツムを見ると、アツムはアタシの方をみてすっごく優しく微笑んでいた。
「気に入った? 」
「う、うん……素敵なところだね……」
アタシはアツムの手をきゅっと握る。
――いつもと違うアツムの態度が物語っているのは、きっとやっぱりそういう事なんだろう――
アタシに出来ることと言ったら、この最後のデートを楽しむことだけなんだよね。
そう思ったら、ちょっと涙が出そうになっちゃって、慌ててアツムの腕に自分の腕を絡ませる。
アツムは少し驚いたみたいだったけど、アタシの左肩をそっと優しく抱いてくれた。
――もう少し、もう少しだけこのままで居たかった。
でも、時間って止まってくれないんだよね。
「そろそろ帰ろうか」
そう言ってアツムはまたアタシを車に乗せる。
今日のデート中、アツムは何か言いかけることが何度かあった。
多分別れ話を切り出そうとしていたんだろうってアタシにも察しがつく。
だからアタシは、自分から言う事にする。
こんな状態、嫌だよ。耐えられないよ……。
***
「……」
「…………」
すごい気まずい雰囲気が流れている。
それは、多分、間違いなく……アタシが言った言葉によるものだと思う。
「それ、ギャグかなんかで言ってんの? 」
長い沈黙の後、アツムはちょっと怒った口調でアタシに問いかける。
「え?」
「東雲さんと付き合うわけないだろ……」
アツムは大きなため息をついた。
「だ、だって昨日なんか婚約者のことでいろいろあったんでしょ?
それに後部座席だし、まだ正式に付き合うってアツム言ってないし――! 」
アタシはそこまで言うと恥ずかしいぐらいに涙がぼろぼろと零れた。
涙でアツムの顔がにじんでしまって、どんな顔をしているのかも見えない。
「――咲……」
「いいよ。解ってるから。
だから今までキスだっておでこどまりなんでしょっ!」
そう叫んだとたんアツムにギュッと抱きしめられた。
「お前、ほんと馬鹿だな……」
耳元でアツムの声が甘く囁く。
もう……反則だよ……。
アタシは心臓が口から飛び出しそうだ。
「咲……」
そう言うとアツムはアタシの顔を見つめる。
そして、そして――
アタシは唇を奪われた――。
「――俺が好きなのは咲だけだ――」
唇を離すとそう言ってアツムはアタシをぎゅっと抱きしめる。
アタシもアツムの背中に手を回して、ぎゅって抱きしめた。
***
「落ち着いた――?」
そう言うとアツムはアタシから体を離す。
とたんにアタシの顔に西日が赤く差した。
水族館の駐車場――アツムの車の後部座席で、アタシ達は初めてのキスをした。
「咲? 」
アタシがぼんやりしているとアツムはちょっと困ったようにアタシの名前を呼ぶ。
「あ、ごっごめん……」
アタシは急に恥ずかしくなって、視線を下に落とす。
「え、と。
あの……アタシの、勘違い……だったのかな? 」
好きだって言われたけど、やっぱりアタシの頭の中はちょっと整理しきれていない。
だっていろいろありすぎで……。
「俺、いつ咲と別れるって言った? 」
アツムはちょっと意地悪そうな声を出すとアタシの頭をそっと撫でる。
「お前、誤解しすぎ」
「だ、だって……」
「確かに昨日咲の友達に少し東雲さんとごたごたしたっていったけど、それはそういう意味じゃなくて――」
そこまで言うとアツムは口をつぐんだ。
西日のせいで表情はよく見えない。
「その、つまり……。
俺の家族に会ってほしいんだけど――」
「家族? 」
「東雲さんがごねて、正式にではなくても家族に紹介という形をとらなければ納得できないと言ってきたんだ」
アツムはそう言うと大きくため息をついた。
「それって……」
「その話がいつの間にか水面下で大きくなっていって、昨日俺のところに話が来たんだけど……。
大規模なパーティーにまで発展してたんだ――。
咲はまだ高校生だし、そんなこと急に言われても困ると思う。
――嫌なら断っていい。
ありえないだろ? ちょっとした顔見せが大規模なパーティーなんてさ」
アツムは自嘲気味に小さく笑った。
「――いいよ。
アタシ、アツムの家族に会いたいもん」
「本当にいいのか?
何か企んでいるかもしれないぞ?」
「もし、そうだとしても……アツムがいれば大丈夫! 」
アタシはそう言うとアツムの顔を両手で包みこんで、驚く彼にそっとキスをした。
***
「そ、そこまで話は進んでいたなんて思わなかったわ……」
「でも、一応顔合わせ程度なんでしょ? 」
チアキと綾実が口々にアタシに言う。
「まぁ、そうなんだけどぉ~」
アタシは緩みっぱなしのほほを益々緩ませながら返事をする。
「でもさ、アツムさんが止めきれなかったらしいから、よっぽど盛大な奴なんじゃない? 」
「うっ」
「咲ってそういう席に行ったことあるの?
誕生日会とかクリスマス会とかとは全然違うよ? 」
「ううっ!
……二人のいじわるぅ~っ! 」
アタシがそう言うと二人は口をそろえて
『咲のために言ってるんだからねっ! 』と言った。
「何にも出来なくて恥をかくよ? 」
「しかもそんな彼女を持ってるアツムさんも恥かいちゃうよ? 」
……アタシだけならまだいいけど、アツムまで恥をかいちゃうのは良くないなぁ……。
「アツムさんから教えてもらいなよ」
チアキはそう言うとアタシの頭をよしよしと撫でた。
「アツムから? 」
「そうそう。なにせアツムさんは咲の個人的な先生だしね! 」
そう言うとチアキと綾実は鈴みたいにからからと笑った。
「あ、そう言えばなんでデートの時車の助手席に乗らなかったの? 」
綾実がふと真顔でそう言った。
「あ、あれはその……アタシの事が心配だから……だって」
アタシはちょっと照れながら、そう答える。
アツムはアタシの事がよっぽど好き……みたいで、助手席には乗ってほしくなかったみたい。
アタシにはそうなのかな? と思う事だけど、助手席は事故った場合かなり危険な席らしいのだ。
「あーーーーーー。
もうっ! ごちそうさまって感じ! 」
アタシが半分くらいしか説明していないのに、チアキはその言葉を遮った。
「要はアレでしょ?
とにかくラブラブで、ちょー幸せってやつっ!! 」
「えっ?! 」
「電撃結婚とか、出来ちゃったとかはびっくりするから一言前置きしておいてよね」
「えっ! えっ?? 」
「この、幸せ者ぉ~~っ! 」
何故か二人からほっぺたを引っ張られているアタシ。
幸せってこんな痛いものなのねっ!
とか思いつつ、二人の(ちょっと手荒な)祝福はあと数分ほど続くのであった。
アタシ。
なんか、すっごい幸せ!
いかがでしたか?
待っていただいた方々には大変ご迷惑をおかけしました!
私事ですが今後の展開として、kindle Unlimitedで本を出そうと考えてます。
この「おばかなアタシと年上カレシ」が第一作目。一作目のおまけで部長の弟視点の恋愛話。
スピンオフとして先生と幼馴染の話を出す予定です。
これから再構成して、主人公の名前も少しリニューアルします。
kindleを出す際はこちらの小説は見れなくなってしまうので、その際はよろしくお願いします。




